即日配達サービスの進出を無視することは、困難になりつつある。JOKRなどの新興企業に加え、Gopuffのような実績のある企業も、試行錯誤で利用者を勝ち取ろうとしている。一方で、即日配達サービスの爆発的な成長により、D2C新興企業の創設者たちは、どれだけ迅速な配送を提供すべきかという問題に頭を悩ませている。
こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
※モダンリテール[日本版]は、DIGIDAY[日本版]内のバーティカルサイトとなります
即日配達サービスの進出を無視することは、特にニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルスのような大都市では困難になりつつある。
ジョーカー(JOKR)やゲッティア(Getir)、フリッジノーモア(Fridge No More)といった新興企業に加えて、ゴーパッフ(Gopuff)やポストメイト(Postmates)のような実績のある企業も、ひっきりなしに新しいリース契約を結び、新しいビルボード広告を開始し、気前よく半額キャンペーンや「1つ買うともう1つ無料」といったプロモーションで利用者を勝ち取ろうとしている。一方で、即日配達サービスの爆発的な成長により、D2C新興企業の創設者たちは、どれだけ迅速な配送を提供すべきかという問題に頭を悩ませている。
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対応が分かれる飲食業界
自然派デオドラントとパーソナルケアのブランド、キュリー(Curie)の創設者であるセアラ・モレート氏は、「1日おきに新しいものが出てくるようだ」と語った。
筆者の同僚であるガブリエラ・バーコ氏が報告したように、これらの新興企業は大手小売業者ならためらうような設立間もないD2Cブランドの企業に対して、共同ブランドのマーケティングや、サンプリングの機会を提供し、自社プラットフォームで商品を販売するよう働きかけている。飲食系の新興企業のエグゼクティブは、即日配達が、この分野でビジネスを行うためのコストであると考えるようになってきている。これに対して、美容品やパーソナルケアなどほかのカテゴリーの新興企業は、高価な即日配達サービスを取り入れる前に、小売の流通網を拡大しようと試みている。
即日配達に投資する理由を問われたエグゼクティブたちは多くの場合、小売のお決まりの文句、すなわち顧客のいる場所で顧客と接触するためだと答える。しかし現実的な話として、Amazonが2005年にプライム(Prime)メンバーシップとともに2日間での配達を導入して以来、より迅速な配達を行うのは小売の分野における各種企業の軍拡競争となってきた。
15分で食料を配達するジョーカー、ゴリラズ(Gorillas)、ゲッティアなどの新興企業は、この分野でもっとも新しい企業だ。人々がこれらのサービスを使用しはじめるにつれ、より多くの人々が、特に食料品についてさらに迅速な配達を求めるようになり、新興企業はこの潮流の変化に適応できなければ売上を失うリスクを抱えるようになった。
初年度戦略にも組み込まれる即日配達
健康志向の人をターゲットにしたソーダブランドであるオリポップ(Olipop)でコンシューマーエクスペリエンス担当ディレクターを務めるイーライ・ワイス氏は次のように述べている。「常に考えていることだが、当社サイトで顧客が発注を行ってから、注文した品が顧客に届くまでのあいだに、すぐに入手できる喜びというマジックを失う可能性が常にある。顧客が注文した品を即日または翌日受け取れるようにすることで、当社はこの魔法のような感覚を維持できるようになる」。
オリポップは現在、ホワイトラベルサービスのオヒー(Ohi)を使用し、自社ウェブサイトでの注文に対して即日または翌日配達を行っている。オリポップはゴーパッフ、ゴリラズ、ジョーカーなどいくつかの食料品即日配達サービスからも購入できる。
いくつかの新しい新興企業でも、初年度戦略に即日配達サービスが深く関わるようになってきている。アダプトジェニック飲料ブランドであるドロップレット(Droplet)の共同創設者であるセレステ・ペレス氏は、2020年3月の設立のすぐあとで、即日配達サービスのファストエーエフ(FastAF)が同社の商品の運送をはじめたと語っている。
ペレス氏は次のように述べている。「当社は、ブランドが開設されてほんの1年後にファストエーエフを利用することになった。独自のグロース・拡大計画を持つプラットフォームに参加するのは、当社にとってわくわくするような体験だった」。ドロップレットの飲料は現在ファストエーエフとゴーパッフ、自社ウェブサイト、および約450の店舗で販売されている。
即日である必要性を考える
しかし依然として、多くのブランドは即日配達が実験であり、常時使用するものではないと見なしている。キュリーのモレート氏は、同社が手指消毒剤の販売を開始した少しあとで、2020年に即日配達サービスを実験したと語っている(ただし、プロバイダ名は明かしていない)。
「私の思考プロセスとしては、今はパンデミック中で、消毒剤の入手が困難なため、顧客は当然その日のうちに消毒剤の配達を求めるだろうというものだった」とモレート氏は語る。同氏はこの実験が「それなりに」成功したと述べているが、手指消毒剤には同氏が期待したほど即日配達の需要はなかった。さらに、即日配達のために余分な金額を支払うことへの正当化が困難になっていった。同氏は、消費者と同社とのあいだで即日配達のコストを分割したと語っている。
この即日配達の開始は、キュリーの商品が全国でノードストローム(Nordstrom)から販売されるようになった少しあとでもあったため、モレート氏は最終的に即日配達を廃止して、手指消毒剤を早く入手したい顧客に対しては、近くのノードストロームに行くよう勧めた。
即日配送サービスはブランドごとに、そしてディストリビューターごとに働きかたが異なり、さらに各種の価格決定メカニズムが使用される。ペレス氏は、ファストエーエフはほかの小売業者と同様に、同氏の商品を卸売で購入すると述べている。あるブランドがホワイトラベルプロバイダと協力して自社サイトで即日配達を行う場合、顧客に対して即日配達の追加料金を請求するかどうかを決定する必要がある。
分かれる配達フィーの考え方
ブランドが即日配達プラットフォームと直接契約しない場合もある。伝統的に小売業者、または最近の即日配達サービスは、ディストリビューターが抱える各種ブランドの商品を扱うため、ディストリビューターにスロッティングフィー(棚代)と呼ばれるものを支払うことがある。
これに対してブランドは、自社の商品をどのように扱うかについてディストリビューターと契約している。たとえば特定の価格未満で商品を販売しないと合意していることがある。ゴーパッフは最初、オリポップの商品を同社のディストリビューターから購入していたとワイス氏は語っている。
「ここ1年半にわたって、当社はゴーパッフとより密接な関係を築き上げ、ゴーパッフは当社をたとえばビルボードに載せるようになった」と同氏は述べている。
どれだけの数のブランドが引き続き即日配達サービスを採用し続けるのかは、ゴーパッフ、ジョーカー、ゴリラズなど新たに出現した業者が財務的に成功するかどうかにかかっている。これらの業者が即日配達に追加料金を請求することなく、独自のマーケティングの機会を提供し続けられるなら、より多くの新興企業がそれらの即日配達サービスを使い続ける可能性は増えるだろう。
モレート氏は自社について、顧客から「クリティカルマス」となるフィードバックがない限り、同氏が即日配達を再度開始することはないだろうと語っている。
同氏は次のように述べている。「もし我々が顧客から、即日配達を求める膨大な数の要求を受けはじめたなら、それは間違いなく提供を検討すべきものだ。しかし、Covidの最中に行ったテストから、即日配達は当社の顧客にとって本当に重要なものではないということを学んだと、私は考えている」。
[原文:DTC Briefing: Startups grapple with whether to join the same-day delivery boom]
著者:Anna Hensel(翻訳:ジェスコーポレーション 編集:猿渡さとみ)