D2C の小売業者は販売数の増大を目指し新しい地域に進出している。ここ数か月のあいだで水着のアンディやアパレルのナーダム、バックメイソンなど幅広い企業がフロリダ、テキサス、テネシーなどに新店舗を開いた。パンデミックにより引き起こされた人の流れや顧客の移動のフローを利用して収益化しようと未知の地域で挑戦している。
こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
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D2C(Direct to Consumer)の小売業者は、販売数の増大を目指して、新しい地域へ進出をはじめている。
ここ数カ月のあいだで、水着ブランドのアンディ(Andie)や、アパレル会社のナーダム(Naadam)、バックメイソン(Buck Mason)など幅広い企業が、フロリダ、テキサス、テネシーなどに新たな店舗を開設した。この小売業者たちはeコマースの販売活動に刺激され、パンデミックにより引き起こされた人の流れや顧客の移動のフローを利用して収益化しようと、未知の地域での挑戦をはじめている。
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ターゲット層がホリデーシーズンを過ごす場所に
女性向け水着ブランドのアンディの創設者でCEOを務めるメラニー・トラビス氏は次のように述べている。「販売チャンネルを多様化するなら、今が絶好のチャンスだ。当社のデータによると、当社の顧客はすぐにでも店舗内で買い物をしたいと考えている。オンラインは優れた環境で、当社でも大きな役割を果たしてきたが、多くの女性は実際に購入する前に商品を触って確かめ、試着してみたいと思っている」。
アンディは11月に、最初の実店舗の場所としてフロリダ州のウェストパームビーチ(West Palm Beach)にあるローズマリースクエア(Rosemary Square)を選んだ。この付近には、アパレルブランドのファリティ(Faherty)、スペインの靴&アクセサリーのメーカーのミントアンドローズ(Mint and Rose)、同じく水着ブランドのソリッドアンドストライプ(Solid & Striped)などのD2C企業が進出し、その数は増え続けている。
トラビス氏は、設立から4年間の新興企業である自社をこの陽光の州(サンシャインステイト)に置くため、数字を駆使していた。「当社の顧客の販売と平均的な注文のデータから、パームビーチとその周辺の地域で急速な成長パターンが見られた」と氏は述べている。もちろん、太陽の降り注ぐビーチの近くに水着ブランドの店を開くことは理にかなったことだ。
アンディは最初の店舗を、最大のマーケットに存在する顧客たちが、ホリデーシーズンに好んで訪れる場所のひとつに出店する。「シカゴやニューヨークに住んでいる人々の多くは、冬には南に行く」とトラビス氏は説明し、「1月や4月にパームビーチを訪れる予定があるという話を聞く」と付け加えている。この地域に実店舗を持つことで、アンディは休暇中の顧客にサービスを提供し続けることができ、さらにその顧客たちによる口コミが現地で広がる可能性がある。トレビス氏はこれを「2つの目標を達成できる」と表現している。
販売データから割り出した場所に
カシミヤ製品ブランドのナーダム(Naadam)も、データポイントが重なり合うスイートスポットを探し求めている。同社は10月、テキサス州では初であり、同社全体としては6つ目の実店舗の場所としてダラスを選んだ。
共同創設者でCEOを務めるマット・スキャンラン氏は、ナーダムのCRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)データが、テキサスに関する同氏の「直感的反応」を裏づけるものだと語る。「ダラスとオースティンはどちらもルネッサンスが起きている」と氏は言及している。
新しい拠点の調査を行うとき、スキャンラン氏とそのチームは顧客の販売データを調べ、それをパフォーマンスマーケティング情報と照合してから、ソーシャルメディアの活動を使用して、さらにインサイトを集める。ダラスのウエストビレッジでは3つの指標すべてにわたって高いレベルの活動が見られたため、取引が決定された。
この商店街には、職人手作りのアイスクリームショップやフィットネススタジオなどに加え、メンズウェア企業のミゼンアンドメイン(Mizzen + Main)や宝石類ブランドのニッケルアンドスエード(Nickel & Suede)など、オンラインで操業を開始したほかのブランドを含め、同じような目的を持つ企業が店を並べている。ナーダムは実店舗の進出を拡大するためほかの拠点も探しており、オースティンが候補となっている。この市にはすでに、同業他社として男性用のベーシックウェアを扱うマックウェルドン(Mack Weldon)が出店しており、寝間着ブランドのルーニャ(Lunya)も近日中に出店を予定している。
中規模都市は「負担が小さい」という利点も
パンデミック以前、D2Cブランドは実店舗の進出を模索していたが、それはニューヨークのような主要なハブに限られていた。これらのブランドは今年の夏になって計画を縮小し、財務的に負担の小さい場所に注目を移し始めた。現在では、地理的により分散することが戦略の重要な部分になりつつある。
実際にD2Cブランドは、ハイブリッドワークへの移行により引き起こされた移住のトレンドを活かせることに期待して、オースティンやダラスのような中規模の都市に出店しつつあると、D2C企業向けの小売店舗を運営するリープ(Leap)の共同創設者で共同CEOを務めるアーミッシュ・トリア氏は語る。若い層の消費者の流入にもかかわらず、これらの分野は依然としてニューヨークなどの主要な市場より占有率が低く、賃料も安いと、氏は述べている。ほかの新しい拠点としては、アリゾナ、フェニックス、スコッツデール、チャールストン、ナッシュビルが挙げられる。
ニューヨーク市にも変化は起きている。D2Cブランドはフィフスアベニュー(Fifth Avenue)やソーホー(Soho)など最高級の商店街より、その付近のアッパーウエストサイド(Upper West Side)、アッパーイーストサイド(Upper East Side)、ダンボ(Dumbo)、ブルックリンハイツ(Brooklyn Heights)を求めている。リープはニューヨークに合計16カ所の拠点を持ち、ノーホー(NoHo)やウィリアムズバーグ(Williamsburg)にも拠点を開設しつつあると、トリア氏は語っている。リープのクライアントにはグッドライフ(Goodlife)、ファリティ(Faherty)、バーディーズ(Birdies)、マックウェルドン、ナーダム、パブリックレック(Public Rec)、サムシングネイビー(Something Navy)、アップウエスト(UpWest)、パクト(Pact)、ビンチェロ(Vincero)、アシュリースチュワート(Ashley Stewart)が名を連ねている。
主要都市以外にもチャンスが
バックメイソンは、過去1年間にボストンとナッシュビルに店舗をオープンした。同社は2017年に自社の移動ショールームが立ち寄って以来、テネシー州のこの市を検討していたと、2013年にロサンゼルスでこのメンズウェアブランドを共同設立したエリック・アレン・フォード氏は語る。現在17店舗を抱える同社は、複数の店舗を持つニューヨークやロサンゼルス以外にも、ヒューストン、ニューポートビーチ、ワシントンD.C.、ダラスへの展開を進めている。
フォード氏はこれらの主要都市の重要性を認識しつつも、さらに遠い場所にもチャンスがあると考えている。氏は次のように述べている。「ロサンゼルスやニューヨークも重要だが、全国の都市それぞれに、特化した視点を持つブランドによる良質な商品を求める消費者がいる。ナッシュビル、オースティン、ボストン、そのほかの都市の人々も、ほかの都市に住む消費者と同じ選択肢を求めている」。
[原文:Data is telling DTC brands to open stores in emerging cities]
Saqib Shah(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Buck Mason