缶入り飲料水メーカーの リキッド・デス (Liquid Death)は2019年の設立以来、顧客が企業ブランド名付きのグッズにどれだけのお金を出してくれるかを把握するための方法を模索してきた。2021年夏には、リキッド・デスブランドのオーダーメイド自動販売機を宣伝したがその価格は一台6000ドル近くもした。
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缶入り飲料水メーカーのリキッド・デス(Liquid Death)は、2019年の設立以来、顧客が企業ブランド名付きのグッズにどれだけのお金を出してくれるかを把握するための新しい方法を模索してきた。
同社は2021年夏、「リキッド・デス」ブランドのオーダーメイド自動販売機を宣伝したが、その価格は、1台6000ドル(約68万4000円)近くもした。CEOを務めるマイク・セサリオ氏によるとこの施策は、どれだけの顧客がこの自動販売機の購入を希望するかを確かめるために行われたのだという。結果は4人だった。
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2021年のグッズ売上は300万ドルに
グッズ販売は常にリキッド・デスのマーケティング戦略の一部だった。同社は設立からわずか数カ月後に、Tシャツの広告を開始した。しかし、最初はマーケティング費だったものが、現在では「大きな利ざやを持つ収益源」と化したと、セサリオ氏は語る。リキッド・デスは2021年に4500万ドル(約51億8000万円)近くを売り上げたが、そのうち300万ドル(約3億4200万円)はこのグッズの売上だった。11月にはアーバンアウトフィッターズ(Urban Outfitters)がリキッド・デスのグッズの取り扱いを開始した。
リキッド・デスが販売するグッズには、14ドル(約1600円)の犬用のおもちゃから、500ドル(約5万7000円)の小型冷蔵庫まである。また同社は、奇妙でエッジの効いたドロップも得意としている。同社は2021年、業界のレジェンドであるトニー・ホークの血を塗料に混ぜたスケートボードを100台販売した。このスケートボードは500ドル(約5万7000円)だったが、20分以内に売り切れとなった。
アクセサリーとアパレル以外にリキッド・デスが販売しているのは、スティルウォーター(炭酸を含まない水)と炭酸水の2つだけだ。セサリオ氏自身が、同社が他社と異なるのはマーケティングだけだと認めている。リキッド・デスは、ヘビーメタル調のロゴが付いた背の高い少年のようにデザインされており、コンサートやパーティでアルコールを飲まないとき口にできるものの選択肢として、より興味をそそるものを提供することが目標だ。
「当社は、健康的な飲料を50倍楽しくしようと試みている」とセサリオ氏は述べる。
熱狂的「信者」の存在
リキッド・デスは2019年にD2C専業ブランドとして立ち上げられ、今日ではセブンイレブン(7-11)、ホールフーズ(Whole Foods)、セーフウェイ(Safeway)などの全国チェーンを通じて、2万9000以上の店舗で取り扱われている。
しかしセサリオ氏は、小売に進出するために「我々は、この商品を欲しがり、ブランドに不快感を抱かない、巨大な市場があるということを証明する必要があった」と述べている。それを証明する方法のひとつがグッズだったのだ。
リキッド・デスのグッズの発売に厳密なスケジュールはないが、セサリオ氏によると、通常は毎月3〜5点の商品をリリースするという。リキッド・デスのサイトから水を購入する人々の50%以上が、グッズもあわせて注文するという。「当社は派手なプロモーションはあまり行わない。当社には絶大なカルト的人気と多数の電子メールのリストがある」と同氏は述べている。
リキッド・デスには「カントリークラブ」という会員制度があり、顧客は「魂を売る」代わりに、限定発売への早期アクセスなどの特典を手に入れることができる。セサリオ氏は、これまでに20万人以上の利用者が自分の魂とメールアドレスを、このカントリークラブに引き渡したと語っている。
主力事業が逼迫する懸念も
今日では、コーヒーと美容品などのさまざまなジャンルのD2Cブランドが、低コストで自社をアピールできる方法を模索し続けながら、独自のグッズを販売している。こうしたブランド名付き商品のなかには、まれに会社の主力商品に匹敵するカルト的人気を集めるものもある。数年前にビューティブランドのグロシエ(Glossier)が、ブランド名が入ったピンク色のフーディを限定発売したときには、1万人の待ちウェイティングリストができた。
フリーランスマーケティングプラットフォームのマーケターハイヤー(MarketerHire)のCEOを務めるクリス・トイ氏は、グッズの販売は「的確に行えば利益を得られる」ことから、多くのブランドにとって魅力的なマーケティング戦略だとしている。ただしほとんどの会社にとって、グッズは「自社の中核的な商品ではない」とも述べている。
たとえば、ピーナッツバターのブランドがTシャツの販売をはじめようとした場合、返品処理やサイズに関する学習への投資など、CPG企業にとって容易ではない作業が必要となる可能性がある。
それでもトイ氏は、大規模なグッズ販売ビジネスを構築することは、企業が自社ブランドに対し、ひとつの商品への関心を超えて、本当に忠実なファンが存在することを証明するひとつの方法であるという。「自社が十分な規模に成長し、真のブランドを手に入れることができれば、どのようなものでも売ることができるようになる」。
セサリオ氏は、今後1年間に同社がグッズ販売のペースを緩める予定はないという。そして、リキッド・デスのブランド付きホッケージャージは2月に発売される。
「実際にマーケティングから直接収益を得ることができるということは、それはある意味、できることに限りがないようなものだ」と同氏は述べている。
[原文:‘Cult following’: How Liquid Death sold $3M worth of merch last year]
Anna Hensel(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Liquid Death