セレブ主婦たちの日常を追うリアリティテレビ番組「ザ・リアル・ハウスワイブズ・オブ・ニューヨーク・シティ(The Real Housewives of New York City)」のリブート版の最新エピソードで、新入りのエリン・リチー氏がプリングル(Pringle)チップの上に乗ったキャビアをふるまい、番組キャストの一部から懐疑の目で見られた。しかしこの数年間、キャビアの専門家やソーシャルメディアクリエイターは、この高低差のあるレシピを絶賛している。これはキャビアを気軽に楽しむ方法を見つけるという大きなトレンドの一環として、このハイ&ロー料理を絶賛している。
キャビアや魚卵への需要は、特にパンデミックのとき、ロックダウン中のごちそうとして多くの人がラグジュアリーフードを求めたことで、爆発的に増加した。昨年レストランが完全に再開したとき、ニューヨークタイムズ(The New York Times)はメニューに登場している最新のダイニングトレンドを「キャビアバンプ」と表現した。市場調査企業のファクトエムアール(Fact.MR)によると、2022年のキャビアの売上額は1億ドル(約150億円)を超え、2033年まで7.6%のCAGR(年平均成長率)で増え続けると予測されている。キャビアにスポットライトが当たるのは、多くのアメリカ人が購入する食料品を予算内に収めようと苦労している時期でもある。それでもキャビアの販売業者は、ソーシャルメディアが火付け役となった現在のトレンドは、少なくとも新しい世代にこの優雅な食品を広める助けになるだろうと、米モダンリテールに語った。続きを読む
この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
セレブ主婦たちの日常を追うリアリティテレビ番組「ザ・リアル・ハウスワイブズ・オブ・ニューヨーク・シティ(The Real Housewives of New York City)」のリブート版の最新エピソードで、新入りのエリン・リチー氏がプリングル(Pringle)チップの上に乗ったキャビアをふるまい、番組キャストの一部から懐疑の目で見られた。しかしこの数年間、キャビアの専門家やソーシャルメディアクリエイターは、この高低差のあるレシピを絶賛している。これはキャビアを気軽に楽しむ方法を見つけるという大きなトレンドの一環として、このハイ&ロー料理を絶賛している。
キャビアや魚卵への需要は、特にパンデミックのとき、ロックダウン中のごちそうとして多くの人が高級食品を求めたことで、爆発的に増加した。昨年レストランが完全に再開したとき、ニューヨークタイムズ(The New York Times)はメニューに登場している最新のダイニングトレンドを「キャビアバンプ」と表現した。市場調査企業のファクトエムアール(Fact.MR)によると、2022年のキャビアの売上額は1億ドル(約150億円)を超え、2033年まで7.6%のCAGR(年平均成長率)で増え続けると予測されている。キャビアにスポットライトが当たるのは、多くのアメリカ人が購入する食料品を予算内に収めようと苦労している時期でもある。それでもキャビアの販売業者は、ソーシャルメディアが火付け役となった現在のトレンドは、少なくとも新しい世代にこの優雅な食品を広める助けになるだろうと、米モダンリテールに語った。
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コロナ禍で高級食品へのニーズ高まる
ニューヨークを拠点とするキャビア・ラッセ(Caviar Russe)は、1997年に卸売業者として事業をスタートし、現在は、2つのレストランと、人気上昇中のオンライン配送ビジネスを運営している。マーケティング責任者のエドワード・パンチェニコフ氏は、多くの高級レストランと同様、ミシュランの星を獲得している同社のニューヨーク市のレストランも、Covidのロックダウン中はダイニングルームを閉鎖を余儀なくされたと語った。しかし、迅速な対応により、家庭でも自分へのご褒美として高級食材を食べたいというニーズの高まりと同時に、オンライン売上が急増しはじめたという。店舗とオンラインの両方のビジネスについて、「ピークは2021年だった」と同氏は述べている。
その年に事業全体が50%成長し、それ以降も売上は増え続けており、黄金翡翠色と海塩の味で知られるオシェトラのような高級品種に売上が偏っていることをパンチェニコフ氏は明らかにした。
「Covidのあとの需要から、我々はレストランに第2のコンセプトも加え、バーやラウンジでのビジネスを倍増させた」とパンチェニコフ氏は語る。年齢で見ると、従来のキャビアラッセの顧客は、従来の40代後半以上の層から、20代後半から50代までの層にシフトしている。そして現在、ザ・リアル・ハウスワイブズによってさらに大きなオーディエンスにリーチしている。キャビアラッセは最近、同番組に出演するベテニー・フランケル氏にキャビアの缶詰を贈呈したことで、同氏のソーシャルメディアのページで宣伝された。
キャビアを称賛しているハウスワイフ(主婦)はフランケル氏だけではない。リチー氏は、プリングルのアミューズブーシュを番組キャストにふるまっただけでなく、ソーシャルメディアユーザーがさまざまなクリエイティブな方法でキャビアを自宅で食べていることを楽しんでいる。
リチー氏が、プリングルとキャビアの組み合わせを最初に試みたのは、1年半ほど前だ。このトレンドがソーシャルメディアで人気になりはじめ、キャビア配達サービスのキャビアマーメイド(Caviar Mermaid)が主催するイベントでのことだったと米モダンリテールに語った。「そのときにこの組み合わせが大好きになった。生地がサクサクで軽いので、従来のチップよりもキャビアを十分に味わうことができる」という。
リチー氏は、ほかのリアルハウスワイブスの出演者と並び、キャビアを大衆に広めたるために貢献したとされる何人かのリアリティセレブのひとりに過ぎない。「今では、ソーシャルメディアのどこを見ても、誰かがこの組み合わせを試している。ソーシャルメディアがこのようなトレンドにどれだけの影響を与え、最終的にはそれによってブランドが迅速に行動を起こし、そのトレンドを活用するきっかけを見ることができたのは最高だ」とリチー氏は述べている。
キャビアの概念を変える新たな提供方法
キャビア業界の新興企業もまた、クレームフレーシュや固ゆで卵のような伝統的な付け合わせだけでなく、キャビアの提供方法に新たな工夫を凝らしている。
現在では、あらゆる食品のトレンドの最先端にソーシャルメディアがあり、キャビアの豊富なバリエーションがクリエイターやインフルエンサーによって新たに生み出されたと、キャビアラッセのパンチェニコフ氏は述べる。そのため、消費者向けブランドは、自社の商品を紹介するために、インスタグラムやTikTok向けにより適したキャンペーンを行うようになった。
このようなコンテンツへの需要に対応するため、レストランはキャビアのプレゼンテーションに工夫を凝らすようになっていると、パンチェニコフ氏は語る。たとえば、前述したようなマティーニなどのカクテルに添える「バンプ」(通常はパーティーでコカインを吸うことを意味する用語だが、今では楽しむことが好きなキャビア通の人たちが使っている)から、キャビアラッセが「キャビアアワー」で行っているようにコーンに入れてふるまう方法までさまざまであると同氏は説明する。
この関心の高まりは、2015年に創設されたオンラインブランドのローキャビア(Roe Caviar)の成長とも一致していると、創業者のセアラ・マイヤー氏は言う。同社の刻印可能なギフトセットは、カリフォルニアで養殖された白のチョウザメが30グラムで120ドル(約1万8000円)からだ。「キャビアを買い求めやすくすることを目標にしている」と同氏は言い、ソーシャルメディアによって、キャビアは古風でなくてもいいということが人々に広まったと付け加えた。実際、TikTokerたちはドリトス(Doritos)からアイスクリームまで、あらゆるものにキャビアを乗せている。同ブランドは常に、キャビアを紹介するための魅惑的なオーバーレイ写真を活用してきたとマイヤー氏は述べる。「最近では、魚の缶詰用のボードにキャビアを乗せるといった新しいトレンドも取り入れるようになった」と同氏は語った。
パンデミックは、ローキャビアのビジネス、特にギフト購入者向けのビジネスの成長に貢献したとマイヤー氏は語る。成長の正確な数値は明かしていないが、「顧客は現在、20代や30代の人々から、長年にわたってキャビアを食べているより高年層の人々まで多岐にわたる」と同氏は述べている。
キャビアに触れてもらうチャンスに
しかし、ソーシャルメディアにおける「見せびらかし」と化した食トレンドの結果として、すべての業者がキャビアの需要を経験しているわけではない。
高級キャビアブランドのポインティスナウト(Pointy Snout)のオーナー、アレクサンドラ・デュ・ケイン氏は、2020年以降に収益の増加を経験したものの、高価格帯であるため、比較的高年層の常連によって支えられていたと思われると語る。同社のオシェトラキャビアの価格は250ドル(約3万7500円)からで、最高価格は1000グラムで8000ドル(約120万円)だ。「おもに高所得の個人か、少数の高級レストランに販売している。そのため、その層がいることはわかっているが、引きつけているとはいえない」と、デュ・ケイン氏は述べる。
しかし、ミレニアル世代やZ世代がネット上で楽しむ様子が記録されることによって、多くの人々がさまざまな種類のキャビアに触れることになる。「馬鹿にする意図はないが、バンプ形式で楽しまれているキャビアは必ずしも最高グレードのものではない」と、デュ・ケイン氏は語る。この数年の需要によって高級チョウザメの価格が急激に高騰していることを考えれば、バンプのようなものを提供するのはレストランにとってコストが高すぎるからだ。「しかし、このような体験は、さまざまな品種を探求するための入り口であり、スーパーマーケットで瓶入りを買うことと比べれば大きな一歩だ」と、同氏は付け加えた。
デュ・ケイン氏は、ビジネスが依然として以前からの常連を相手にしているだけだとしても、より多くの人々がキャビアを試していることを喜んでいる。「ごく最近まで、多くの人々にとってキャビアは大きなブラックホールだった。キャビアは少し手を出しにくい食品なのはたしかで、その点は理解できる。多くの人々がキャビアに触れるようになることは素晴らしいことで、私は大賛成だ」。
[原文:Caviar’s growing popularity is introducing a new generation to the once-stuffy food]
Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Caviar Russe