パンデミックの最中に、広範な家庭向けカテゴリーは各ブランドの生命線だった。現在、各小売業者はこのカテゴリーにおける新しい成長を探し求めており、ストレージコンテナがその鍵となると賭けている。ウォルマートとターゲットはそれぞれ新商品の立ち上げを行い、消費者が新しい年に自宅の整理を行うことに期待している。
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各種の大手小売業者は、家庭向け商品の売上を伸ばす新しい方法として、家庭内を整理するための商品への投資を増やしている。
調査会社の1010データ(1010Data)によれば、家庭内の整理と収納は、2020年12月から2021年12月までのあいだに、家庭向け商品のカテゴリー全体と比べて3倍のペースで成長した。ウォルマート(Walmart)はNetflixで番組を持つ整理サービスであるザ・ホーム・エディット(The Home Edit)とのパートナーシップにより新しい商品を発売する。一方で、ターゲット(Target)は新しいプライベートレーベルとしてブライトルーム(Brightroom)を立ち上げ、コンテナストア(Container Store)はカスタムクローゼットソリューションのクローゼットワークス(Closet Works)を2150万ドル(約24億7000万円)で買収した。
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パンデミックの最中に、広範な家庭向けカテゴリーは各ブランドの生命線だった。家庭に主眼を置く企業であるウェイフェア(Wayfair)とベッド・バス・アンド・ビヨンド(Bed Bath & Beyond)は、ほかの多くの小売業者が苦闘していた2020年後半にも同等の売上増加を報告した。現在、各小売業者はこのカテゴリーにおける新しい成長を探し求めており、ストレージコンテナがその鍵となると賭けている。ウォルマートとターゲットはそれぞれ新商品の立ち上げを行い、消費者が新しい年に自宅の整理を行うことに期待している。
プライベートレーベルへの賭け
ウォルマートは2022年になってすぐに、ザ・ホーム・エディットとのコラボレーションにより4つの家庭内整理用「スターターパック」のコレクションを発表した。このコレクションは透明なプラスチックの容器で、部屋のタイプごとに分類され、「おやつ」や「洗濯用洗剤」などの商品カテゴリーでラベル付けされている。
同社はこの新しいコレクションのプレスリリースで次のように述べている。「家庭用の収納と整理への需要が大きく増大した。特に透明なアクリルの収納容器に対する関心が大きかった」。
この新しいコレクションは、アメリカの料理専門チャンネルであるフードネットワーク(Food Network)の番組「ザ・パイオニア・ウーマン(The Pioneer Woman)」や、Netflixの「クィア・アイ(Queer Eye)」とのあいだでウォルマートが最近行った、メディアインフルエンサーとのコラボレーションを踏襲している。ウォルマートは2021年10月に、Netflixとの提携によって、同社のもっとも人気のあるショーのいくつかに着想を得た商品を販売することを発表した。
アルベアズ・アンド・マーサル・コンシューマーリテイルグループ(Alvarez & Marsal Consumer Retail Group)のマネージングディレクターを務めるアジェイ・ライナ氏は、ウォルマートが行っているようなインフルエンサー主導の戦略は「競争相手の多いカテゴリーで自社を差別化するための優れた方法だ」と語っている。ライナ氏はさらに、「この環境では、独占性やほかとは異なるものが求められる」とも付け加えている。
新年にかこつけたリリース
一方でターゲットは、新しい家庭内整理のプライベートレーベルであるブライトルームを、ウォルマートのザ・ホーム・エディットとのコラボコレクションのわずか1日後にリリースした。
ターゲットは新しいレーベルについてのプレスリリースで、消費者が自分の家をきれいにすることを新年の抱負とすることを明示的に呼びかけている。マーチャンダイジング担当シニアバイスプレジデントを務めるサマラ・タックバンド氏は、「新しい年が新しいはじまりの機会を運んでくることは知られており、それには今後1年間のために自宅を整理する熱意も含まれる」と述べている。
ターゲットは、一般的なプライベートレーベルのプレイブックに従い、より見た目にこだわった収納グッズを求める消費者を対象とした450以上のSKUを発表した。商品の範囲は、明るい色の引き出しから、装飾的なカゴまで多岐にわたる。
SSAアンドカンパニー(SSA & Company)のマネージングパートナーであるマシュー・カッツ氏は次のように述べている。「ターゲットは常に、自社ビジネス向けに強力なプライベートレーベルの要素を保有していた。それを家庭内の収納にも拡大するのは当然の流れだ」。
「私は、ターゲットが新しい分野に参入するたびに、同社は価格と価値のピースだけではなくデザインの要素も強調すると考えている」とライナ氏は述べている。
美的センス重視の「整理」の台頭
1010データのCEOを務めるインナ・クズネツォワ氏は、パンデミックのあいだを通して、「家庭」に付随するすべてのサブカテゴリーについて関心が高まっていると、電子メールで説明した。デジタルコマース360(Digital Commerce 360)によれば、2020年に米国におけるオンラインでの家庭用品の販売は51.8%も増加した。しかしクズネツォワ氏は、「2021年末のオミクロン株により感染数が急速に増加したことで、多くの人々は自宅での隔離生活に戻り」、それらの人々の多くは部屋を整理する必要に迫られたと付け加えている。
このため、広範な小売業者のあいだで家庭内収納の市場は過熱することになった。ターゲットやウォルマートと同様に、それらの新しい投資の多くはより美的観点から優れた収納用品の販売にますます重点が置かれるようになった。
たとえばAmazonは2022年1月頭に、消費者が部屋のタイプごとに収納ソリューションを買い求められるよう、整理整頓専用のショッピングセクションを公開した。同社の新しいカテゴリーページの主要なSKUにはオーガニック生地のバスケット、キラキラした金属製フック、竹製の引き出しなどがある。
パンデミックがもたらした流行
昨年、「リストック」、すなわち自宅を整理する方法を簡潔で美しく動画で紹介する収納tipsに特化したインフルエンサーが、TikTokで再生回数を爆発的に伸ばした。これらの動画では多くの場合、商品をなかに収納するための完璧なサイズの収納ユニットを紹介していた。
ステファニー・キノーンズ氏はTikTokでは@itsfefii7として知られており、TikTokの収納動画には1600万を超える「いいね」が付いている。キノーンズ氏は以前に米モダンリテールに対して、同氏の視聴者がこの収納コンテンツの「整頓され、隙間がなく、ぴったりと収納されている様子を好んでいる」と語った。
美的センスに優れた収納アイテムへの需要が高まり、コロナウイルスの感染者数が増大するなかで消費者が自宅に戻るにつれ、人々が自宅で過ごす時間が増えるため、家庭内整理整頓グッズの販売は減速しないと、カッツ氏は確信している。
カッツ氏は次のように述べている。「私は、家庭用品の販売の成長が続くと考えている。労働者の心理は変化した。事態が平常に戻ったとしても、オフィスでの作業と自宅での作業を並列させるという考えは続いていくだろう」。
[原文:Big-box retailers bet on home organization as the next big category]
Maile McCann(翻訳:ジェスコーポレーション 編集:猿渡さとみ)
Image via Walmart X Home Edit