ベストバイ(Best Buy)の売上増加は鈍りつつある。そこで、電子機器小売業者である同社は、ホリデーシーズンに売上を伸ばすため、新しいメンバーシッププログラムに期待を懸けた。同社は10月、全国でトータルテック(Totaltech)というメンバーシッププログラムをロールアウトした。
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ベストバイ(Best Buy)の成長は鈍りつつある。そこで、電子機器小売業者である同社は、ホリデーシーズンに売上を伸ばすため、新しいメンバーシッププログラムに期待を懸けた。
ベストバイは11月23日に過去最高の収益である119億ドル(約1兆3600億円)を報告したが、同社の成長率は前年比で1%と、昨年の同じ期間に記録した21%より低下している。同社のデジタル販売は今四半期に10.1%減少し、はじめて2020年の数値より減少したことからも、成長の余地が少なくなっていることが明らかだ。
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これらの継続的な圧力に先んじ、間近に迫ったホリデーシーズンに対応するため、ベストバイはロイヤルティを重視している。同社は10月、全国でトータルテック(Totaltech)というメンバーシッププログラムをロールアウトした。メンバーは技術サービスや割引を受けることができ、商品への早期アクセスも認められる。ベストバイは特に後者の特典が、在庫不足の懸念がささやかれるホリデーシーズンにおいて、広くセールスポイントになることを期待している。このプログラムは短期的には同社に財務的な負担となるものの、米モダンリテールが対談したアナリストたちや、ベストバイのエグゼクティブは、このプログラムが長期的に利益をもたらす可能性に期待している。
11月23日の収支報告の内容
ベストバイのCFOを務めるマット・ビルナス氏は11月23日の収支報告において、今四半期における同社の業績が「低レベルのプロモーションの重複、昨年と比較して商品の破損と返却が増えたこと、そして在庫のいっそうの縮小」によって阻害されたと述べた。ベストバイのCEOであるコーリー・バリー氏は、組織的な犯罪により「当社の財政がひっ迫し」「当社の提携企業にも圧力を及ぼした」と付け加えている。
家電業界のほかの企業と同様に、ベストバイも全般的なサプライチェーンの制約と、iPhone 13やプレイステーション5(PlayStation 5)など人気商品の在庫状況への影響を与える消費者向け電子チップ不足とのバランスを取る必要があった。
前四半期を制するため、ベストバイはヘルステクノロジーを強化し、店頭受取やカーブサイドピックアップなどのオーダーの増加に対応するために店舗フロアを調整して、在庫を早めに増やした。今四半期にはロイヤルティにも投資を行っている。
トータルテックに対する期待
ベストバイは10月はじめに、トータルテックメンバーシッププログラムを全国で開始した。年間199ドル(約2万2700円)で消費者は、ベストバイ以外で購入した製品であってもギークスクワッド(Geek Squad)による24時間年中無休の技術サポートを受けられるほか、ベストバイのテック商品購入すべてについて24カ月の商品保護、メンバー専用の割引、商品への早期アクセスを受けられる。
バリー氏の説明によると、ベストバイは顧客との「長期的な関係」を構築し、「メンバーにとって、他社からテック商品を購入することが考えられなくなる」ことを目標にしている。
トータルテックは今四半期に小売業者の運用収入率を30ベーシスポイント(0.3%)だけ減らし、これまで単独だった保証やインストールなどのサービスをバンドルすることでサービスの同一店舗売上高を減らしたと、バリー氏は説明する。
「このプログラムは先月開始されたばかりでごく初期のものだ。だが、これまでのところ、当社が推進しようと考えていた、テスト時にも見られたような行動ーーたとえば、より対話が頻繁に行われることや、メンバー以外の消費者よりも段階的に消費額が増えていくことなどーーが実際に起きていると確認している」とバリー氏は付け加えている。
ビルナス氏は、このプログラムがまもなく「商品の販売増加を促進する」ことに自信を持っている。ベストバイはすでにホリデーシーズン、もっとも人気のある電子機器が入手しにくくなる時期に向けて、この新しいメンバーシッププログラムをセールスポイントとして使用することを予定している。
同社はトータルテックのメンバーに対して、プレイステーション5とXbox Series X|Sの両方に早期アクセス権を与えている。さらに、ホリデーシーズン中の月曜日ごとに、各種商品へのメンバー専用の割引を行う。
成功の初期兆候を示している
ソフトウェア会社リバイブ(Revive)のエグゼクティブチェアマンで、ケロッグ経営大学院(Kellog Business School)の教員でもあるディーン・デバイアス氏は、このロイヤルティへの投資は成功の初期兆候を示しているが、「まだ先は長い」と考えている。デバイアス氏は、ベストバイがよりパーソナライズされたサービスをトータルテックに組み入れる機会はほかにも存在するだろうと述べ、メンバーが増えるにつれて同社はこのような拡張を行うと考えている。
デバイアス氏は次のように述べている。「ベストバイは、何年にもわたって行ってきた改善すべての結果として、成長し続けるだろう。オムニチャネルでの接触、技術専門家である10万人の従業員を抱えていること、よりパーソナライズされたロイヤルティプログラムを完成させたことから、同社は2022年や2023年にも良好な業績を続けるだろうと予測している」。
[原文:Best Buy is investing in customer loyalty ahead of the holidays]
Maile McCann(翻訳:ジェスコーポレーション 編集:長田真)
Photo form Best Buy