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ナイキ 、中国で新たな課題に直面:ローカルブランドが存在感を増す

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この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、小売業の変革の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]の記事です。

ナイキ(Nike)は中国で国内の競合他社から大変な課題を突きつけられている。これは一時的なサプライチェーンにおける困難よりも長く続くと思われる。

中国で苦戦を強いられる海外勢

直近の四半期において、大手スポーツウェア企業であるナイキの中国における売上は、恒常通貨ベースで前年比わずか1%増の19.8億ドル(約2217億円)だった。特にアパレル部門は前年比9%ダウンで4億7600万ドル(約533億円)となった。ナイキは中国での伸び悩みを今夏のコロナウイルスによる地域閉鎖や客足の減少によるものとしている。

しかし、この数字の減少は、海外ブランドにとって現地の取引環境がいかに難しいかも浮き彫りにしている。近年、ナイキを含むいくつかの海外巨大ファッション企業は、中国国内の論争に巻き込まれてきた。同時に、アンタスポーツ(Anta Sports)やリーニン(Li-Ning)など地元のスポーツウェアブランドは、インフルエンサーやアンバサダーを奪い取る一方で、低価格製品の改善に投資することで、この論争に起因する消費者の抗議から恩恵を受けている。

専門家によると、中国の文化面と競争面両方の力学により、国際企業に対して、よりローカライズされ適応した対応を取ることへの圧力が高まっているという。サプライチェーン問題が差し迫っているのにもかかわらず、ナイキは中国を無視できるような余裕はほとんどない。調査会社グローバルデータ(Global Data)によると、中国は2023年までに米国を追い越して世界最大のアパレル市場になろうとしている。

国内ブランドを好む若年層たち

ナイキは海外企業として早い段階で中国に参入した。80年代初頭から中国でのスニーカー製造を開始し、90年代半ばには中国の新しいプロバスケットボールリーグのスポンサーになっていた。ナイキのハイブリッドな小売事業は、7000もの直営店とアリババ(Alibaba)が所有するTモール(天猫)のような大手eテイラーを通したオンライン流通におよんでいる。また、広州におけるアプリとデータを使ったコンセプトストアであるナイキライズ(Nike Rise)の店舗のように、中国をリテールイノベーションの実験台として使ってきた。

しかし、ここ数年で多くの変化があった。専門家によると、国内企業の方が自分たちの信条にあっているとの考えから、国内ブランドに惹きつけられる若い中国人の買い物客が増えているという。分析企業ガートナー(Gartner)のAPACリサーチスペシャリストであるサラ・スー氏によると、「中国人消費者はとてもユニークだ」という。「彼らは熱狂的な愛国者で、自国を守ろうとする意識が強い」。

「中国人消費者は『自国に敬意を表す』価値観をとても真剣にとらえていて、この価値観に基づいて購入決定を行う」と、大手調査会社フォレスター(Forrester)のプリンシパルアナリストであるシャオファン・ワン氏は説明する。「これが、中国人消費者がかつて好んでいた外国ブランドから離れ、かわりに国内の競合を選んでいる主な理由のひとつだ」。

このトレンドは、中国国内では「国潮(Guochao:こくちょう)」として知られている。中国政府は、2017年に、年に1度の小売イベントとなる中国ブランドデーを開始することにより、このトレンドを支えている。国潮は、伝統的な中国カルチャーやスタイルに対して若年層の関心が高まっていることを示している。

論争の打撃からいまだ立ち直れず

海外ブランドはこの不安定な取引環境のなかを進むことが困難だと感じている。ここ数年、文化の違いに起因する無礼や、対立する倫理問題におけるスタンスによって消費者からしっぺ返しを受けた外国企業の数が、ラグジュアリーブランドやファストファッションブランドを含めて増えている。たとえば、2019年にコーチ(Coach)とヴェルサーチ(Versace)の両社は、自身のアパレルで香港と台湾を国家として扱ったことにより、ひとつの中国政策に反したという理由で地元民に厳しく非難された。両社ともすぐに正式な謝罪を発表した。

ナイキは、今年のはじめ、強制労働に対する懸念から新疆ウイグル自治区西部で製造された素材を使用しないという宣言を出したことにより消費者ボイコットを受け、その打撃からいまだに立ち直っていない。結果として起こったバックラッシュは、ソーシャルメディアでも展開され、地元ブランドをさらに後押しした。

「ナイキはウイグルをめぐる論争の影響をいまだに強く受けている」とスー氏は語る。「昨年の今頃に比べ、売上はかなり落ちている。一方で、国内ブランドは市場シェアを伸ばしている」。

地元ブランドがチャンスをつかむ

市場調査会社であるユーロモニターインターナショナル(Euromonitor International)によると、中国の上位スポーツウェアブランドとして、ナイキとアディダス(Adidas)に続いてアンタスポーツが3位、リーニンが4位につけているという。両社とも商品の改良に何億ドルも費やし、積極的なマーケティング戦略を用い、中国人マイクロインフルエンサーを採用してオンラインエンゲージメントを盛り上げてきた。

1991年に創立されたアンタスポーツは中華圏におけるフィラ(Fila)の商標を所有し、2019年にはウィルソン(Wilson)テニスラケットのメーカーであるフィンランドのアメアスポーツ(Amer Sports)を買収した。この中国企業は今後5年間にわたり6億1600万ドル(約691億円)を研究開発に投資し、ハイエンドな製品を作る予定だ。1989年に同名のオリンピック体操選手により創立されたリーニンは、アンタと同じく、プロ選手や一般消費者用にフットウェア、アパレル、用具、アクセサリーを製造している。

両社とも長年にわたり中国オリンピックチームのスポンサーを続けている。アンタは直近の東京夏季オリンピックのスポンサーだった。「あれは絶大な宣伝になった上、中国人消費者の大きな誇りとなった」とスー氏は話す。アンタは来たる2022年北京冬季オリンピックのオフィシャルパートナーでもあり、国旗を自社製品に使用できる独占ライセンスを与えられている。

この企業はナイキに対するボイコットから直接恩恵を受けた。ウイグルをめぐる論争が起こってすぐの4月に、アンタは歌手から転身した中国人俳優のワン・イーボーと契約を結んだ。彼は正真正銘のスーパースターであり、以前はナイキの代表モデルを務めていた。

今年は、この2社の国内スポーツウェア企業が利益を上げた1年だった。アンタはこの半年で収益が55%増加し35億ドル(約3900億円)となった。同時期にリーニンの収益は65%急増し15億7000万ドル(約1750億円)となった。

スー氏によると、この2社は中国スポーツウェア部門の中間層を占めるという。「2社のアパレルやスニーカーは国際ブランドほど価格が高くない」と、スー氏は語る。「しかし、地元の競合に比べて高品質なものとして見られている」。

スー氏によると、2社は国際的な同業者に比べて、より多様なデジタル戦略を有しているという。これにはマイクロインフルエンサーの起用が含まれる。

復活の時を探る

しかし、最近の混乱をよそに、ナイキは中国で失墜していない。ナイキは今でも地元の消費者から一流ブランドとして見られており、彼らはいずれ「(ウイグルの)論争を忘れて次に進む」と、スー氏は話す。スー氏は次のように続ける。「ソーシャルメディアでは目立たないようにして話題が過ぎ去るのを待つのが良いだろう」。

過去にコーチやヴェルサーチがしてきたように、ナイキは地元のエキスポのような政府出資の取り組みと協調したり、歴史的な祝典のような文化イベントに参加したりすることで立ち直ることができるとスー氏は指摘する。「注目を集め、今でも中国人消費者を気にかけているということを示さなければならない」とスー氏は付け足す。

ナイキの経営陣は最新の収支報告で、ナイキは今後も中国にいるとしている。ナイキは、中国の人々は今でも同社の「革新的な」製品ラインと「強くつながりがあり」、これは中国国内の大きな実店舗拠点により「強化」されていると強調している。

しかし、ナイキの国内競合も自社の地位を固めている。スー氏はこう語る。「ここには、アンタとリーニンがいる」。

[原文:As local competition grows, Nike faces a new reality in China]

Saqib Shah(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Nike