2020年、多くの アパレル 小売業者は利益を減らしたが、2021年には市場シェアを回復するため新しいカテゴリーへの投資を始めている。アパレル小売業者の一部は家庭用品や美容グッズなどパンデミックの最中でも好調だったカテゴリーへの投資を増やしはじめた。紳士服やフットウェアが売上増に貢献したケースもある。
2020年、多くのアパレル小売業者は利益を減らしたが、2021年には市場シェアを回復するため、新しいカテゴリーへの投資を始めている。
アパレルの第2四半期の売上は、前四半期と同様に、ほとんどの小売業者において前年を上回っている。ターゲット(Target)のCEO兼社長のブライアン・C・コーネル氏によれば、同社ではアパレル部門がもっとも好調で、売上は10%台中盤の伸びを示している。メイシーズ(Macy’s)、コールズ(Kohl’s)、ディラーズ(Dillards)、TJX、ノードストローム(Nordstrom)の各社はいずれも、前年比で2〜3ケタの収益増で、これはアナリストの予測を上回っている。さらに、メイシーズ、コールズ、ディラーズの各社は2019年の第2四半期の数値をも上回っている。ただし、ノードストロームなどほかの小売業者は依然として2019年の売上レベルを超えていない。消費者が従来型の店舗に戻りつつあるため、特に店舗販売が売上の増加をけん引している。
顧客を店舗に呼び戻すため、アパレル小売業者の一部は、家庭用品や美容グッズなどパンデミックの最中でも好調だった新しいカテゴリーへの投資を増やしはじめた。紳士服やフットウェアが売上増に貢献したケースもある。
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広告およびインサイト代理店のTBWAワールドワイド(TBWA Worldwide)の製品・マーケティング担当グローバルディレクターのディープシ・プラカシュ氏は次のように語っている。「私たちは、小売業が大きく回復することを、ある程度は予測していた。この四半期にはオンラインだけでなく、従来型の店舗でも売上の増加があったと考えている」。
メンズ服がアツい
紳士服はこれまで、婦人服と比べて小規模な分野だった。合衆国国勢調査局(Census Bureau)によれば、男性向け衣類販売業者の2020年における推定売上高は、女性向けアパレル販売業者の4分の1未満にすぎない。
しかし、一部の小売業者は、成長が期待される分野として紳士服に着目している。これらの業者は女性向けアパレルも扱っており、スポーツウェアのような流行のカテゴリへの投資も増やしている。コールズ社のCEOであるミッシェル・ガス氏によれば、同社での紳士服の売上高は、「店舗の紳士服売り場面積が大幅に減少したにもかかわらず」、前年比で60%も増大した。TJX(マーシャルズ[Marshall’s]、T.J.マックス[TJ Maxx]、ホームグッズ[Homegoods]の運営企業)の社長兼CEOであるアーニー・ハーマン氏によれば、紳士服は同社の「極めて順調な」売上増を推進した。
ガス氏は前四半期に、コールズ社は紳士服の売り場面積を減らし、トレーニングウェアや「大型」サイズ(例:プラスサイズ)の分野に重点を移したと述べている。この四半期にはその移行が実を結び、前年比で女性向けアパレルよりも高い成長を見せた。
メイシーズ社の社長兼CEOであるジェフ・ジェネット氏は、紳士服を「休眠中のカテゴリー」と表現し、それがこの四半期に「復活をはじめた」としている。
メイシーズ社は、40歳未満の男性と少年やティーンに重点を置いている。ジェネット氏は、ジェネレーションZ(1990年代半ばから2000年代半ばに生まれた世代)やミレニアル世代(1980年代から1990年代半ばに生まれた世代)の男性にアピールするため、既存のプライベートブランドへの投資を増やし、「ナウ・ディス(Now This)」のような新しいプライベートブランドを立ち上げると述べている。
美容グッズと家庭用品への投資
家庭用品と美容グッズの売上は着実に増加している。それはパンデミック期間の大半においても変わらなかった。ターゲットでは、家庭用品と美容グッズはどちらもこの四半期に1ケタの成長を見せている。
これらのカテゴリーの将来性に気づいた小売業者は、この数カ月で従来のアパレル重視から転向して、投資を増やしはじめた。たとえばギャップ(Gap)は6月、ウォルマート(Walmart)で家庭用品セレクションの限定販売を開始した。同時にコールズとターゲットは、自社店舗の一部でそれぞれセフォラ(Sephora)とアルタ(Ulta)のショップインショップの運営を開始した。
第2四半期の収支報告においても、アパレル小売業者のエグゼクティブたちはこれらのカテゴリの可能性を引き続き重要視している。
ガス氏は、セフォラが「非常に成功」し、顧客からの反応が「圧倒的に肯定的」であったと述べているが、具体的な販売額や客数は明らかにしていない。
家庭用品は、アパレル小売業者が投資する人気の分野になりつつあるが、最初はほとんどがオンラインで販売されている。たとえばこの四半期に、TJX社は、T.J.マックス社の店舗で人気の家庭用品セレクションを扱う、完全に独立したe-コマースサイトとしてHomegoods.comを立ち上げることを発表した。メイシーズ社は、新しい家庭用品とテキスタイルのプライベートブランドであるオーク(Oak)を、同社が「サイトレット」と呼ぶ小規模なサイトで販売すると発表した。サイトレットとはメイシーズ社のメインサイトの一部で、今年の初めに同社のコンテンポラリーファッション向けに初めて採用され、独自の記事と販売促進用のコンテンツが掲載されている。
フットウェアの販売が上向きに
前四半期のフットウェアの売上は明暗が分かれた。デッカーズ(Deckers)とフット・ロッカー(Foot Locker)は、それぞれクロックス(Crocs)のコンフォートシューズとスニーカーにより売上を伸ばしたものの、たとえばナイキ(Nike)の売上は前年比で0.6%低下した。
しかし、この四半期には、フットウェアは小売業者にとって有望な分野となった。オフィスに戻るために靴を購入するという需要はまだ少ないが、スポーツシューズやカジュアルシューズは売れ続けている。
フット・ロッカーはこの四半期も順調に成長し、売上は9.5%増加して22.8億ドル(約2500億円)に達した。ナイキの米国での販売高は過去最高に達し、アディダス(Adidas)の売上は前年比で51%も増大した。タペストリー(Tapestry)社傘下の高級靴ブランド、スチュアート・ワイツマン(Stuart Weitzman)は、第2四半期の売上を前年比で13%伸ばした。
しかし、タペストリーのCEOであるジョアンヌ・クレヴォイスラ氏によれば、スチュアート・ワイツマンの成功はフラットブーツ、ジェリーサンダル、トングサンダルがもたらしたもので、SKUを大幅に減らして、よりアクティブでカジュアルなスタイルに特化した結果である。
TBWA社のプラカシュ氏は、よりフォーマルなスタイルへの移行は職場への復帰が始まってからになるとして、次のように述べている。
「来年初頭には、もっと多様なフットウェアが復活し、ビジネスシューズの需要が回復すると考えている。過去のスティレットヒールとも現在のビルケンシュトック(Birkenstocks)とも違う、その中間で、フォーマル感と快適さを融合したものとなるだろう」。
[原文:Apparel retailers are investing in new categories to return to sales growth]
Maile McCann(翻訳:ジェスコーポレーション 編集:戸田美子)