Amazonが10月20日に公開したプロダクト・オポチュニティ・エクスプローラ(商品機会エクスプローラ)は、商品のサブカテゴリ内での動向に関する匿名化データを提供する新機能だ。このツールでは、検索用語の量、特定のカテゴリの販売履歴、価格設定の動向などの指標を追跡するという。
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Amazonは、サードパーティの出品者が、新しい商品をAmazonのどのサブカテゴリでリリースするかを見極めるのに使用できるツールを公開する。
Amazonが10月20日に公開したプロダクト・オポチュニティ・エクスプローラ(Product Opportunity Explorer:商品機会エクスプローラ)は、商品のサブカテゴリ内での動向に関する匿名化データを提供する新機能だ。米モダンリテールに共有されたプレスリリースで、Amazonはこの新しいツールが検索用語の量、特定のカテゴリの販売履歴、価格設定の動向などの指標を追跡すると述べている。同社は、このプロダクト・オポチュニティ・エクスプローラを2022年に、すべての出品者向けにロールアウトすることを予定しており、出品者が無料でセラーセントラル(Seller Central)で使用できるようになる。
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全体としてプロダクト・オポチュニティ・エクスプローラは、出品者が扱っている商品がAmazonでどれだけ成功できるかを判定する、または次の商品で対象とすべき、強い関心を受けているサブカテゴリを見つけるために使用される。一方Amazonにとって、このツールは全体的な商品セレクションを増やすための方法となる。同社は、データを匿名化することで、Amazonが高品質の商品を必要としているサブカテゴリに出品者の進出を促進できると考えている。また、このツールには外部の企業が出品者に提供していた機能のいくつかも含まれている。このような機能を自社で提供することにより、Amazonはこれまでベンダーが提供してきた要素をより的確に管理しようと試みている可能性がある。
Amazonの販売パートナーサービス担当バイスプレジデントであるイアン・シンプソン氏は、米モダンリテールとのインタビューで、「当社が望んでいるのは、新商品のリリースから当てずっぽうの作業を排除することだ」と述べている。
成功するには、まずヒット作を
シンプソン氏は、Amazonの出品者のなかで「当社のストアでもっとも成功を収めているのは、顧客の心に響く商品をひとつ以上販売している出展者だ」と述べている。同氏はプロダクト・オポチュニティ・エクスプローラについて、「顧客の心に響く次の商品は何なのか、出品者が特定するために役立つことが最大の役割となる」と語る。
プロダクト・オポチュニティ・エクスプローラは、Amazonのマーケットプレイスで、シンプソン氏が「ニッチ」と呼ぶもの、基本的には商品のサブカテゴリを評価する。たとえば、ニワトコの実のグミというのは、ひとつのニッチだ。Amazonはプロダクト・オポチュニティ・エクスプローラにより、そのニッチについて、過去90日間にわたる販売履歴のデータを提供できる。プロダクト・オポチュニティ・エクスプローラはユーザーに、Amazonのすべての出品者を合計して過去90日間にニワトコの実のグミの商品がどれだけ売れたかを通知できる。
プロダクト・オポチュニティ・エクスプローラでは、そのニッチの流通総額が期間内にどれだけ急速に成長したか、そのニッチに属する商品の平均スター評価、顧客がそのニッチに抱く興味は長期的なものか、短期的なものか、そのニッチに関する検索がどの程度の割合で販売にコンバージョンされるかなどの指標も表示できる。シンプソン氏は次のように語っている。「ニッチの商品が検索結果に表れたとしても、コンバージョン率が高くない場合がある。これは出品者が追及すべき機会を示していることがある」。同氏は将来的にプロダクト・オポチュニティ・エクスプローラで各ニッチにレーティングを割り当て、新しい商品を発売する機会を評価できるようにすると述べている。
Amazon出品者でジュボプラス(Juvo Plus)のCEOであるスティーブ・ニューファー氏も、Amazonのためにプロダクト・オポチュニティ・エクスプローラをテストした結果、出品者はキーとなる用語を検索し、どれだけの数の人々がその用語に関連するフレーズを調べているかを知ることができると語っている。ニューファー氏は海賊をテーマにしたパーティーボックスを発売するかどうかを検討している会社を例として挙げ、「海賊 パーティー 飾り」など関連する用語がどれだけ一般的か、そしてそれらの商品の売上高を調べられると述べている。
次にどのように商品を作り出すかを思いつかない出品者でも、サブカテゴリを調べて閃きを得ることができる。ニューファー氏のチームはツールのベータテスト中に、食品スモーキングガンについて大量の検索トラフィックが存在するにもかかわらず、その必要を満たす商品はマーケットプレイスにわずかしか存在しないことを発見した。「検索の量は膨大なものだった。私は、食品スモーキングガンとはどんなものだろうと考えた」と氏は語っている。
エグジット狙いの企業に役立つ
プロダクト・オポチュニティ・エクスプローラはAmazonにとっては新しいサービスだが、出品者全体のエコシステムにとっては新しいものではない。ジャングルスカウト(Jungle Scout)やヘリウム10(Helium10)などの会社はすでに、商品カテゴリごとに価格設定の動向、検索の動向、販売の増加についての情報を出品者に提供している。これらの会社は、主にAmazonマーケットプレイスのデータをスクレイピングして、これらの情報を得ている。
「私の念頭にあったのは基本的に、ジャングルスカウトやヘリウム10の重要な機能のいくつかを置き換えることだった」とニューファー氏は述べている。相違点は、外部のプロバイダがたとえばAmazonでの検索トラフィック量を推測するしかないのに対して、Amazonは実際のデータを提示できることだと氏は語っている。
eコマース代理店のエンビジョンホライゾンズ(Envision Horizons)のCEOであるローラ・メイヤー氏は、Amazonが同様のサービスを作り上げたことは驚くにあたらないとしている。「Amazonは対話のコントロールを望んでおり、自社の商品と販売について、どのデータがリリースされるかもコントロールしようとしている」と、メイヤー氏は述べた(この点について、シンプソン氏はこれらのサービスがジャングルスカウトやヘリウム10の行っているサービスの「補完である」と述べている)。
プロダクト・オポチュニティ・エクスプローラは出品者に応じてふたつの異なる利点があると、メイヤー氏は説明する。一方では、Amazonアグリゲーターの世界で特定のけん引力を得ることが可能になる。このようなツールにより、自社ブランドをセラシオ(Thrasio)に引き渡すことを希望する出品者はどの商品を次にリリースや拡大するかを決定するために役立つ。ちなみにセラシオは、Amazonセラーを専門に買収している大手企業のひとつだ。「このプロダクト・オポチュニティ・エクスプローラは、次の商品をリリースするためにエグジットを求めて作業している多くビジネスの役に立つだろう」と、メイヤー氏は述べている。
ニッチ製品についてはまだ足りない
自社商品のポートフォリオ拡充を求めていない出品者にとっても、プロダクト・オポチュニティ・エクスプローラに組み込まれている価格設定ツールがどのように使用されるかは興味深いと、メイヤー氏は語る。価格設定は出品者にとって依然として難しい問題だ。特に今年はサプライチェーンの制約から出品者の利益率が減少しており、多くの出品者は値上げの方法をテストしている。「マス価格製品で特にその傾向がみられる。これらの出品者は物流のコストをカバーするためAmazonでの価格を上げたいと考えているが、実際の市場での相場を気にしている」。
Amazonにとってプロダクト・オポチュニティ・エクスプローラのリリースは最終的に、自社商品の品揃えを拡充することが主な目的であるように見られる。ニューファー氏は、Amazonがエブリシング・ストア(何でも買える店)であることを考えると、Amazonのカタログがまだ「特定の点で不足している」と述べている。
ニューファー氏は、Amazonのマーケットプレイスが必ずしも強固ではない分野の例として、エアコンの通気口カバーやクロム合金のピアノヒンジなどいくつかの自身が購入を試みたことがあるニッチ商品を挙げている。「このような特殊な細かい分野の商品を探すと、選択肢がやや少なく、価格設定が高価なことが分かるだろう」。
[原文:Amazon is launching a new tool to boost sellers’ product assortments]
Michael Waters(翻訳:ジェスコーポレーション 編集:長田真)