Amazonは8月末、新サービスとなる「カスタマー・サービス・バイ・Amazon(Customer Service by Amazon:CSBA)」のロールアウトを発表した。これは、サードパーティのセラーがAmazonのカスタマーサービスチームを有償で利用し、顧客とやり取りしてもらうというプログラムだ。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、小売業の変革の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
ホリデーシーズンが近づき、サードパーティの販売業者が準備を整えている。そんななか、Amazonは新しい有料サービスとして、カスタマーサポートを追加しようとしている。
Amazonは8月末、新サービスとなる「カスタマー・サービス・バイ・Amazon(Customer Service by Amazon:CSBA)」のロールアウトを発表した。これは、サードパーティのセラーがAmazonのカスタマーサービスチームを有償で利用し、顧客とやり取りしてもらうというプログラムだ。カスタマーサービスは従来、Amazonの倉庫およびフルフィルメントシステムに組み込まれていたが、Amazonは方針を転換してこれらを独立したプログラムとし、販売業者が自社で独自に倉庫運用と配送を行う場合でも、Amazonに手数料を支払うことで、顧客とのやり取りを代行してもらえるようになる。Amazonは、厳しいホリデーシーズンが予想されるなかでの緩和策として、このプログラムをアピールしている。CSBAのリリースでは「(たとえばホリデー期間中の)需要の変化に応じてカスタマーサービスを管理するために役立つ」とされている。
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Amazonがカスタマーサービスを分離することによって、はるかに多くの販売業者が同社のカスタマーサポートソリューションを利用できるようになる。ほとんどの販売業者(91%)はFBAを使用することがあるが、43%は商品の少なくとも一部を自社でフルフィルメントすることを選んでおり、このようなセルフフルフィルメントの数は今年末にはさらに増加すると見られている。この新しいカスタマーサービス商品は、Amazonのフルフィルメントインフラストラクチャがホリデー前後の大きな負荷を見据えて準備を整えているタイミングで開始される。セルフフルフィルメントを選んだ販売業者も、CSBAを使用することで、ビジネスが増大した分をAmazonにサポートしてもらえる。
規模拡大に欠かせないサービス
代理店オルカ・パシフィック(Orca Pacific)の設立者でCEOでもあるジョン・ギオルソ氏は、このカスタマーサービス製品は、Amazonが販売業者のフルフィルメントをどの程度までコントロールできるかをAmazonの勢力範囲内、さらにはeコマース業界全般に知らせる警鐘の一部だとしている。
Amazonはかつて、一定の規模に達したすべての販売業者はいずれFBAに登録するだろうと考えていた。しかし、「eコマースの規模が巨大になりすぎる可能性が出てきたため、より分散型の手法が必要とされるだろう」と、ギオルソ氏は述べている。
ギオルソ氏は、一部の製品については「FBAとAmazonの物流センターは常にとても有効に働く」が、「この定型に当てはまらない商品も数多く存在する」とも述べている。たとえば、サイズの非常に大きな商品や、美術品のように大量の複製を短時間で行うことが容易でない商品だ。
Amazonは8月初頭から、多くの販売業者について、倉庫に保管できる商品数を大幅に削減した。これにより販売業者は、独自に配送と入庫を扱う必要に迫られることになった。
輸送業者との問題を解決
CSBAは、配送と返品のプロセスで発生する問題点に重点を置いており、実際の商品に関連する問題は重視されていない。カスタマーサポートが複数の言語で行われるため、国際的な販売の割合が大きい業者にとっては魅力的かもしれない。
これにより、実際のニーズが解決する可能性もある。UPSやフェデックス(FedEx)などの大手貨物輸送業者はすでに、今後の配送の遅れについて警告している。UPSの国際プレジデントであるスコット・プライス氏は今週、「半分は冗談だが、クリスマスプレゼントは今すぐ注文した方がいい。でないと、クリスマスには写真しか届かず、実物が届くのは2月か3月になるかもしれない」とレポーターに語っている。
ギオルソ氏は、販売業者はすでに、外部の輸送業者とのあいだでキャパシティの問題を経験していると語っている。「この種の問題は、より多くの販売業者でより頻繁に発生するだろう」と氏は述べている。これらはすべて、時間に余裕のない販売業者にAmazonがカスタマーサービスソリューションを売りつける事例を増やす理由となる。
しかし一部の販売業者は、同社がカスタマーサービスソリューションの販売に参入することに対して疑念を呈している。この発表についてのフォーラムで、販売業者はAmazonのカスタマーサービス自体も問題とした。ある販売業者は、米モダンリテールへのメールで「Amazonは、このようなFBAの事例において購入者に有利な返金や対応をあまりに早くしすぎると定評がある。その傾向を販売業者のセルフフルフィルメントにまで拡大して、さらに手数料を支払わせようと言うのか?」と語った。
本件に対するふたつの解釈
Amazonのカスタマーサービスソリューションの開始については、ふたつの解釈がある。まず、Amazonは販売業者が今シーズンに配送とフルフィルメントの問題で困難に陥ることを予防していると考えられる。ギオルソ氏は次のように述べている。「Amazonがより多くのサービスを販売業者に提供するほど、多くの販売業者が恩恵を受け、最終的にその顧客も恩恵を受けることができる」。
しかし、それほど好意的ではない解釈として、Amazonは販売業者がセルフフルフィルメントを選択し、Amazonのサービスから離れていくことを望んでいないとも考えられる。ある販売業者は次のように述べている。「Amazonに顧客サービスを処理してもらうことは、理論的には販売業者がセルフフルフィルメントに移行する際の『衝撃をやわらげる』方法となる。しかし、Amazonのほかのプログラムと同様に、それに対する支払いが必要だ」。
[原文: Amazon Briefing: Amazon’s newest product is customer service]
Michael Waters(翻訳:ジェスコーポレーション 編集:長田真)
Illustration by Ivy Liu