2月第4週に行われた第4四半期のリリースで、アリババ(Alibaba)は自社の収益をはじめて、中国内コマースと国際コマースのふたつのセグメントに分けた。前者は利益が前年比で20%減少し、収益も一桁成長にすぎないが、後者の収益はこの四半期に18%増加して164.5億元、約26億ドル(約3000億円)に達した。
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中国の規制による圧力が続くなか、アリババ(Alibaba)は国際的なサービスとプラットフォームを重視するようになってきている。
2月第4週に行われた第4四半期のリリースで、同社は自社の収益をはじめて、中国内コマースと国際コマースのふたつのセグメントに分けた。前者は利益が前年比で20%減少し、収益も一桁成長にすぎないが、後者の収益はこの四半期に18%増加して164.5億元、約26億ドル(約3000億円)に達した。
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アリババは昨年4月に、中国の国家市場監督管理局(State Administration for Market Regulation)から「市場での独占的地位の濫用」に対して27.5億ドル(約3190億円)の罰金を科せられた。今年1月に、同社はまたしても罰金を科せられている。これに対して同社は、中国よりも規制の緩いアジアのほかの国や欧州の諸国に活路を求め、同社の国際的なプラットフォームと卸売りを支援している。しかし、このような中国外の市場には多くの成長の機会もある一方で、競合も激しいとアナリストたちは警告している。
成長中の国際的コマース
アリババの前年比の収益増加はこれまででもっとも少なく、わずか10%だったが、国際コマースは救いとなる点だった。このセグメントはラザダ(Lazada)、アリエクスプレス(AliExpress)、トレンディオル(Trendyol)、ダラズ(Daraz)などのプラットフォームを含むもので、収益は18%増加した。これらのマーケットプレイスはこの四半期に1600万人の新しい利用者を獲得し、合計の利用者数は3億100万人に達した。
特に、同社が東南アジアで使用しているeコマースマーケットプレイスのラザダは前年比で注文が52%も増加した。一方で同社のトルコ向けマーケットプレイスのトレンディオルでの注文は49%増加した。CEOを務めるダニエル・チャン氏は、「当社の海外への投資は、当社が将来多くの国際市場でシェアを増やすため役立つだろう」と述べている。
アリババは、2016年にラザダを買収してから、時間と資金をラザダに注ぎ込んできた。特筆すべきものとして、アリババは2018年に20億ドル(約2320億円)をラザダに追加で出資した。また2019年にラザダは、アリババの中国に特化したタオバオ(Taobao)と同様なエンターテイメントとライブストリームの機能のスイートも運用開始した。
ガートナー(Gartner)の調査専門家であるセアラ・シュウ氏は次のように述べている。「アリババにとって、ラザダで東南アジアに展開するには今が適切な時期だ。中国内ではジェイディー(JD)などの競合他社により競争が激化している一方で、政府のゼロCovidポリシーにより消費者の消費はさらに鈍っている。世界のほかの場所でオミクロン株の感染件数は減少しており、国外展開には比較的適切な時期だろう」。
一方でトレンディオルは、昨年8月に評価額が165億ドル(約1兆9100億円)に達し、トルコで最初のデカコーン企業になった。同社はアリババの後援があり、マーケットプレイスよりもトルコでのスーパーアプリとしての性格が強い。アリババによるほかのベンチャーのプレイブックに従い、トレンディオルはマーケットプレイスでの売上を即時配達、食料品、配達ネットワーク、デジタルウォレットプラットフォーム、中古品のピアツーピアトレードのプラットフォームと合算している。
アリババの最高財務責任者を務めるマギー・ウー氏は次のように述べている。「当社は投資を続けながら、これらの戦略的イニシアチブ分野におけるビジネスの進捗を監視していく。ラザダやトレンディオルには可能性がある」。
国際的な物流の確立
一方で国際卸売はこの四半期に、前年比の取引額で50%増加した。アリババは同社の卸売ビジネスで国際的な取引、一般に中国の小売業者と他国の購入者とのあいだのものを推進し、同時に物流も促進している。
ツァイニャオ(Cainiao)は、アリババが国内と国際の両方の物流の中心としているサブブランドで、同社はツァイニャオの新しいサービスと、既存サービスの運用能力拡大のため、この四半期にも投資を続けてきた。
チャン氏は次のように述べている。「当社は、アリババがサプライチェーン、物流、ユーザーエンゲージメント、チャネル開発において何年にもわたって構築してきた中核的な能力を活用することに注力している。当社の目標は、新しいデジタル化されたソーシャルコマースのインフラストラクチャを成長させ、消費者に高品質のサービスと商品を、競合力の高い価格で提供することだ」。
たとえばロシア、スペイン、フランス、ポーランドの顧客は、注文した品をアリババブランドのロッカーから受け取れるようになった。これはAmazonのロッカーサービスと同様のものだ。またツァイニャオは西ヨーロッパ地域に4つの新しい自己運用の仕分けセンターを開設し、この地域のセンター数は合計で7つになった。さらに同社はeハブ、ラインホール、仕分けセンター、ラストマイルネットワークなど、既存の物流インフラストラクチャにも投資してきた。
シュウ氏は次のように述べている。「支払いからラストマイルの配達までのすべてをコントロールすることで、アリババの顧客向けの配達を迅速化できる。ツァイニャオは全世界にリーチを持ち、アリババのための強固な基盤を確立している」。
緊張の激化が迫る
国際的な拡大は短期的には利益になるかもしれないが、アリババの問題が解決するわけではないと、アナリストたちは警告する。グローバルデータリテール(GlobalData Retail)のマネージングディレクターを務めるネイル・サンダース氏は、アリババには「まだ開発が進んでいない小売およびデジタル市場」に拡大する余地が残っていると語る。
「より成熟した市場に展開することも可能だが、そこでの問題のひとつは、同社がすでに競争に出遅れており、Amazonのような非常に確固とした地位を占め、熱心な顧客を確保し、消費者の生活にしっかりと結び付いている他社と競争する必要があるということだ。問題は、市場にすでに存在するものとは違うものをアリババはもたらすことができるのかということだ」とサンダース氏は述べている。
アリババの投資のほとんどは欧州やアジアを中心としてきたが、同社は西洋に移行しつつある。つい先週、ツァイニャオはアトラス航空からボーイング747航空機を、今年第2四半期からの長期チャーター契約によりリースした。これは、米国内での配達や輸送専用にアリババが保有する6機目の航空機だ。
しかし、シュウ氏は米国での展開戦略の「課題」について警告している。
同氏は次のように述べている。「地政学的な緊張が、米国による中国への認識に悪影響を及ぼしており、中国による米国への認識も同様だ。昨年に米国連邦政府がTikTokに対して行った厳しい調査や、アリエクスプレスが最近政府の『悪名高い市場のリスト(notorious markets list)』に加えられたことから、アリババは米国や、国際社会全般に展開するうえで課題に直面するだろう」。
サンダース氏は、規制による圧力が中国でのビジネスに影響している可能性があるとしても、国際的な展開はその問題をさらに大きくする可能性があると付け加えている。
「規制による圧力は、国際化により解消されるとは限らない。どちらかといえば、アリババが中国外での業務を拡大すれば、中国は同社をさらに厳しく監視するようになるかもしれない」と同氏は述べている。
[原文:Alibaba bets on international growth as regulatory pressures grow]
Maile McCann(翻訳:ジェスコーポレーション 編集:長田真)