ブルックスランニング(Brooks Running)は、カーボンフットプリント(二酸化炭素排出量)を抑制するための取り組みとして、中古ランニングシューズのプログラムを立ち上げる。
同社は7月6日、自社サイトに「リスタート(ReStart)」というセクションを新設した。顧客はこのセクションで、中古で状態の良いメンズ及びレディースのランニングシューズを購入できる。これには人気ロングセラーモデルのゴースト15(Ghost 15)も含まれる。同社はこのプログラムの開始にあたり、リコマース・テクノロジーを提供するトローブ(Trove)と提携した。
同社の企業責任ディレクターを務めるデイブ・ケンプ氏は、リスタートの目的は、「商品ができるだけ長く使われるようにすること」だと述べる。「我々にとって、もっともサステナブルな活動のひとつだ」と、同氏は米モダンリテールに語った。7月18日の時点で、同社のサイトには600点以上の商品があり、その多くは新品の販売価格から40〜50%割引されている。
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ランニングシューズの専門ブランドであるブルックスランニング(Brooks Running)は、カーボンフットプリント(二酸化炭素排出量)を抑制するための取り組みとして、中古ランニングシューズのプログラムを立ち上げる。
同社は7月6日、自社サイトに「リスタート(ReStart)」というセクションを新設した。顧客はこのセクションで、中古で状態の良いメンズ及びレディースのランニングシューズを購入できる。これには人気ロングセラーモデルのゴースト15(Ghost 15)も含まれる。同社はこのプログラムの開始にあたり、リコマース・テクノロジーを提供するトローブ(Trove)と提携した。
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同社の企業責任ディレクターを務めるデイブ・ケンプ氏は、リスタートの目的は、「商品ができるだけ長く使われるようにすること」だと述べる。「我々にとって、もっともサステナブルな活動のひとつだ」と、同氏は米モダンリテールに語った。7月18日の時点で、同社のサイトには600点以上の商品があり、その多くは新品の販売価格から40〜50%割引されている。
10年後には完全な循環型めざす
ブルックスランニングは、この再販プログラムを、より広いサステナビリティへのコミットメントの一環として捉えている。3年ほど前、自社のカーボンフットプリントを細かく分析し、その情報をもとに、2030年までに排出量を削減する方法を立案したとケンプ氏は説明する。より大きなスパンでは、2040年までに排出量の実質ゼロをめざし、リサイクル素材をより多く商品に使用することに取り組んでいる。10年後には完全な循環型のシューズを販売することを目標に、循環性のあるデザインへの投資を増やしている。また7月5日には、トラストレイス(TrusTrace)との新たなパートナーシップを発表した。トラストレイスはさまざまな企業と協力し、サプライチェーンの各段階が特定の環境規制を遵守しているかどうかを調査している企業だ。
ブルックスランニングがリスタートについてトローブと協力しはじめたのは12カ月ほど前だとケンプ氏は述べているが、商品のライフサイクルを延ばす方法については数年前から検討してきたと認めた。リスタートは開始してから2週間しか経っていないため、同社はまだデータを収集しているところだが、「消費者からは、このシステムへの関心の高さがすでに見受けられる。その声を踏まえ、このプログラムを将来的にどのように発展させるかを検討することが重要だと思う」と同氏は説明した。
ケンプ氏が答えたいと思っている大きな疑問のひとつが、「消費者はどのような品質の商品をもっとも買いたがっているのか」だ。これは、シューズを販売する会社にとって特に重要だと同氏は説明する。ランニングシューズは汚れたり、臭くなったり、すり減ったりしやすい。そして、破れたりぼろぼろになったりしたら再販に適さなくなる。「商品の品質によっては、売り物になるかどうかのしきい値のようなものがある」。
ブルックスランニングが顧客から受け取った中古品シューズの多くは「良い品質」だとケンプ氏は語る。しかし、同氏は、寿命が尽きた靴、あるいは、400〜500マイル(約644〜805km)使用されたようなシューズを収集するための引き取りプログラムを始めたいと考えている。このプログラムはまだ初期段階にあるが、2024年末にはパイロット試験を開始したいという。レディスフラットシューズが人気のロシーズ(Rothy’s)や、ティンバーランド(Timberland)など、ほかのフットウェア企業も、この数年間に引き取りプログラムを立ち上げた。
リーチ拡大のための新たなチャネル
ブルックスランニングは、急激に成長した期間を経て、再販に参入した。同社はホカ(Hoka)やアシックス(Asics)と同様、パンデミックの時期にランニングへの関心が再燃したことの恩恵を受けた。2020年末には、それまでの1年で推定160万人のランナーを獲得したと発表した。同社の収益は2021年と2022年の両方で過去最高を記録し、昨年はD2C(ダイレクト販売)の売上高が16%増加した。再販は、リーチを拡大するために同社が利用できる新たなチャネルだ。
再販は新しいものではないが、ファッション小売企業がトローブや、アーカイブ(Archive)、スレッドアップ(ThredUp)などのサードパーティーとパートナーシップを結んで再販チャネルを立ち上げる方法はますます広がっている。これらの再販プログラムは、貴重なデータを収集することができ、小売企業が中古品マーケットプレイスであるポッシュマーク(Poshmark)や他サイトなどから売上を取り戻すために役立つ。トムス(Toms)やオールバーズ(Allbirds)など、数十社のアパレルやフットウェアの企業が、この2年間に再販プログラムを立ち上げた。しかし、多くのブランドにとって再販はそれほど儲からない。ブルームバーグ(Bloomberg)によると、再販に重点的な投資を行ったブランドでも、中古の衣料品は収益全体の5%に満たないという。
多くの小売企業はいまだ、このチャネルをどのように利用したいか、まだ手探りの状態だと、フォレスター(Forrester)のバイスプレジデントでプリンシパルアナリストを務めるスカリタ・コダリ氏は米モダンリテールに語った。「これは、時代を少し先取りしたアイデアのようなものだ。ちょうど、知らない人の車に安心して乗れるようになる前のウーバー(Uber)のようなものだ。まったく現実性がないわけではないが、もっと良いアプローチが必要だ」と、同氏は述べている。
パワーセラーたちの影響力
ブランド主導の再販モデルは、大量生産でないセグメントについてサプライチェーンの多くの手順を必要とすることから、「非効率的」だと、コダリ氏は述べる。「おすすめの方法は、グッドウィル(Goodwill)が行ったようなやり方だ。この会社は何でも引き取る。品物が売り物になるかどうかを精査するプロセスがある。このプロセスを経た商品が棚に並べられ、欲しい人に買われる。基本的にはこのようなやり方だ」。
コダリ氏によると、理想的なシナリオは、小売企業がより大規模なマーケットプレイスと協力して商品を再出品することだという。仮の話だが、たとえばeBayは、小売企業と、再販プロセスを処理して手数料を取るパワーセラーをマッチングさせることができる。また、Googleがショッピングタブで中古品を優先的に表示してくれるならば、状況は大きく変わるだろうと同氏は述べる。
Amazonもまた、検索結果で再販商品を目立たせることにより、大きな変化をもたらす可能性があるとコダリ氏は述べる。「同社にはすでにマーケットプレイスがあり、はるかに広いリーチを保有している」と、同氏は述べる。「どの商品を購入すればカーボンフットプリントが小さくなるのかを教えたり、代わりになる商品やその価格を提示することができる。私はそれを実現できる未来を想像している」。
サプライチェーンにおけるリスク管理の役割
ブルックスランニングは依然として再販のインフラを構築中であり、再販が自社のビジネスでどのような位置を占めるかについて、「今後数週間から数カ月に多くのことを学ぶだろう」とケンプ氏は期待する。当面、同社はトラストレイスとの新しいパートナーシップを利用して、原材料の収集や処理を監督する業者も含めて、サプライチェーンパートナーから多くの情報を収集し、ブルックス・ランニングが排出量目標や、欧州における外部規制をどのように満たせるのかを見極めようとしている。
「これは、当社にとって不可欠なものであり、環境への影響を管理して削減するためだけではない。外部関係者から見ても、ブランド、特にアパレルやフットウェア業界のブランドに対しては、サプライチェーンのあらゆる部分にわたって、これらのリスクをしっかり管理することへの期待が強まってきているためでもある」とケンプ氏は述べた。
[原文:After two years of record sales, Brooks Running is expanding into resale]
Julia Waldow(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Brooks Running