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再販アプリ を動かす、パワーセラーたち:月に数千万円売り上げるユーザーも

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こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
※モダンリテール[日本版]は、DIGIDAY[日本版]内のバーティカルサイトとなります

テレサ・コックス氏は1990年代半ばからeBayの出品者だった。「私のナンバープレートは『eBay Girl(eBayガール)』だ」とコックス氏は述べる。しかし現在のコックス氏はeBayでだけ販売を行っているわけではない。氏は7つの再販プラットフォームを使用して、年間20万ドル(約2280万円)以上の売上を生み出している。

コックス氏は過去数年間に、メルカリ(Mercari)、ポッシュマーク(Poshmark)、デポップ(Depop)などの新しい再販アプリで販売を開始した。「中古品に対して、今までよりもオーディエンスが多くなった」と氏は述べている。実際に同氏は、増えはじめている「再販パワーセラー」と呼ばれる人々のひとりだ。彼らは、自宅で個別のアイテムを小規模に販売していたところから、複数のマーケットプレイスを使用して6ケタの売上をあげるビジネスにまで成長させている。

この数年間で、成長しつつある中古品市場を少しでも獲得しようと、数多くの新興の再販アプリが誕生した。サンフランシスコを拠点とするポッシュマークもそのひとつで、同社は2011年にピアツーピアの再販サイトとして設立され、1月に株式を公開した。同社は2021年の第2四半期にユーザー数が700万に達した。これは前年比で16%の急増だ。一方でスレッドアップ(ThredUp)は2009年に設立され、今年3月に株式を公開した。同社は8月に、過去最高の四半期収益を記録し、前年比で27%の売上増加を達成した。ほかの成長中の新興企業としては日本を拠点とするメルカリがあり、同社は2013年に設立され2018年に株式を公開した。9月の時点で、メルカリのモバイルアプリは全世界で2000万人のユーザーを保有している。

再販が一般的になることで、パワーリセラー、すなわち複数のサイトにわたって定期的に販売を行うリセラーは、フルタイムで店舗を運用することで生計を立てられるようになってきた。これにより家内工業的な産業が形成され、競争も激化している。再販サイトは、出品者が数ある競合他社に乗り換えず、自分たちのプラットフォームで商品を出品し続けるための機能を充実させることに力を入れはじめた。一方で、こうしたパワーリセラーの日常的業務をサポートするビジネスも登場している。

フルタイム再販セラーの増加

コックス氏は最初、自分の商品を自宅から持ち出すか、地元の中古品店から入手していた。それ以来、氏はほかの販売者や卸売業者など調達先を増やしていった。「私のビジネスの最大の部分は、小売の裁定取引と呼ばれるものから来ている」とコックス氏は述べる。

コックス氏は、再販サイトごとに異なる戦略を使用しているという。eBayは今でも氏の最大の店舗で、依然として「出品者コミュニティのお手本」だという。これはeBayが初期から出品者イベントを主催し、出品者がアドバイスを交換するためのコミュニティメッセージボードを設けたためだと、氏は語っている。eBayは今年初めに、新しい出品者向けツールとして、ビンテージものやコレクターアイテム向けのリスト構築ツールを公開した。

コックス氏はeBayで常に5500件の商品をeBayに出品しているが、そのうちのいくつかはAmazonやポッシュマーク、メルカリ、エッツィー(Etsy)などのニッチなプラットフォームのリストにも掲載されている。「スニーカーやビンテージTシャツの一部をデポップやグレイルド(Grailed)のリストに記載しているのは、これらプラットフォームのオーディエンスが、こうしたアイテムを好むからだ」と氏は述べる。これは主に、トレンドのアイテムや関連商品の在庫状況によってほぼ決まる。氏は、高級品を手に入れたときには、トレデジー(Tradesy)も「試してみる」という。

さらに、コックス氏はリストの移動も利用している。たとえば、同氏はある商品をAmazonに3カ月間掲載し、その期間内に売れなければほかのアプリに移す。このようなクロスポスティングは、商品を常時動かすための鍵になると氏は語っている。「私はクロスポスティングにより、平均して月に2200ドル(約25万1000円)売上を伸ばしている」。

ビクトリア・イーガン氏は、コックス氏と同じように1998年からeBayで中古品の販売をはじめた。しかしこの4年間で氏はメルカリ、ポッシュマーク、エッツィーなどのプラットフォームに、ほかの店舗をいくつか追加した。すべてのプラットフォームを合計して、イーガン氏は年間に15万ドル(約1710万円)以上を売り上げている。現在のところ運用は主にイーガン氏が行っているが、商品のリストや写真撮影を手伝ってくれるパートタイムの従業員もいる。

イーガン氏は経験を積んだ大量出品者向けのカンファレンスを開催しており、フルタイムの運用を行うには大きな学習曲線が存在すると語っている。詳細に注意を払う必要があるだけでなく、巧妙な顧客サービスも重要だ(イーガン氏はFacebookグループやYouTubeチャンネルも運営しており、そこでアドバイスを共有したり、ほかの出品者とつながったりしていると、氏は述べている)。「多くの新しい出品者は、各サイトの手数料やコミッション取り分を理解していない」と氏は述べる。「アイテムごとではなく、ビジネス全体で利益率を増やすことを学ぶ必要がある」。

プラットフォームを使い分けるセラーも

ティジャナ・ミレンコビッチ氏はポッシュマークでのみ販売を行い、ビンテージのファッションとアパレルのアイテムに特化している。氏は手持ちのワードローブを減らすため、2014年にアプリを使いはじめた。2016年に初めてポッシュフェスト(PoshFest)に参加してから、自分の店舗をフルタイムの仕事へと拡大した。

ミレンコビッチ氏は、自身を従来型の大量出品者とは考えていないと語っている。「私はアイテムを大量に売るのではなく、一点もののユニークな商品を売ることに重点を置いている」。氏は常時250〜350点の商品を販売しているが、そのほとんどは中古品店で購入したものだ。「理想的には、週に60〜80点の商品を販売したいと思っている」。氏は日常的に店舗運営を行う一方、写真撮影など一部の作業は外注している。

各リセラーは、使用するプラットフォームの数に応じて、それぞれ戦略や優先順位が異なる。コックス氏は、すべての再販プラットフォームが大量販売に適しているわけではなく、「出品者はそれぞれ、どのプラットフォームが自分の目的に合致しているかを見つける必要がある」と述べている。

たとえば、買い手を引きつける写真の種類はプラットフォームにより異なる。「デポップのユーザー層は誰かが着ている服を好むが、ポッシュマークはマネキンを使ったディスプレイを好むということがわかった」とイーガン氏は説明している。また、プラットフォームの料金体系や顧客層の消費パターンによって、価格設定も異なる可能性があるという。

ミレンコビッチ氏はポッシュマークのみで出品を行っているため、ポッシュマークの新機能がリリースされたらただちに試せるよう常に注意を払っているという。「私はリストを『いいね!』したユーザーに対して割引の通知を送る機能や、週ごとのまとめ買い割引を提供する機能など、実績のある確実な機能を重視している」と氏は述べている。氏は今年、ポッシュマークの新しいビデオ共有ツールを使用して自分のリストを作成した。「私はこれを、自分のビジネスにソーシャル販売を組み入れる方法だと考えている」。

ミレンコビッチ氏は、フォロワー向けがアイテムを探しやすくするため、ポッシュマークストーリー(Poshmark Stories)にも継続的に投稿するようにしている。これはTikTokと類似した動画機能で、2020年4月に開始された。「新しいマイショッパーズ(My Shoppers)機能には期待している。これにより、さらに多くの買い手と、クローゼットの知見が得られることになる」。

買い手たちは、自分たちの選択した再販アプリ以外で何が流行っているのかについても、鋭く目を光らせている。「ファッションだけでなく、各種の再販プラットフォームで何が起きているのか、常にトレンドを把握することが重要だ」とイーガン氏は述べている。

企業が出品者を呼び込む方法

これらのマーケットプレイスは、このようなパワーセラーに注目しはじめている。パワーセラーたちの存在感が増すにつれ、一部の再販プラットフォームはその要求に合わせて機能を調整するようになった。それとともに、デジタルエージェンシーやベンダーを含む大量出品者だけを対象とする家内工業的産業も出現しつつある。

ポッシュマークの共同創設者でセラーエクスペリエンス担当シニアバイスプレジデントを務めるトレーシー・サン氏は米モダンリテールに次のように語っている。「当社(ポッシュマーク)は全世界の出品者にとって第1の選択肢になりたいと考えている」。この目標に向けて、同社は出品者向けの新しい機能を次々と追加している。

ポッシュマークは今年初頭、ハートアンドハッスル・コミュニティファンド(Heart & Hustle Community Fund)を開始した。これは、四半期ごとに100人以上の出品者を認定し、ビジネス拡大のための補助金を与えるものだ。また、10月初頭には年次の出品者カンファレンスであるポッシュフェスト(PoshFest)で、マイショッパーズなどの新しいツールを公開した。このツールは出品者が関連する商品を提案し、おすすめのスタイルをパーソナライズして提案するのに役立つ。また同社は一括リストアクション(Bulk Listing Actions)も公表した。これは出品者が複数のリストを従来の2倍の速度で共有できるようにしたもので、価格の編集に必要な時間を平均で91%も削減できると、サン氏は語っている。

パワーリセラー向けサービスも登場

しかし、すべての販売者が、増え続けるソーシャルツールを活用しているわけではない。「多くのツールはエンジニアが作ったもので、販売者が必要としているものを必ずしも理解しているとは限らない」とコックス氏は述べる。「ソーシャルツールは一見魅力的に見えるが、個人的には1日中投稿と再共有をしている時間はない」。

同様にイーガン氏も次のように述べている。「1日の作業時間は限られているため、自分にとってベストなプラットフォームに集中する必要がある」。氏の販売アイテムは主にビンテージファッションで構成されているため、氏にとって最も販売額が多いプラットフォームは依然としてeBayで、その次がポッシュマークとメルカリだという。

再販の成長とともに、Amazonのサードパーティ出品者コミュニティと似た、パワーリセラー向けの新興産業も誕生しつつある。

リスト・パーフェクトリー(List Perfectly)は、出品者が複数の再販サイト間でアイテムのリストを自動作成するためのプラットフォームだ。共同創設者のアマンダ・モールス氏とクララ・アルボルノス氏は自身がeBayの出品者だったため、リストを最新の状態に維持することが大変だと気付いてから、会社の設立を思い立った。「私はさまざまなウェブサイトのあいだで変更を行うのに1日中費やしており、これはずっと続けられるものではなかった」とアルボルノス氏は述べている。

リスト・パーフェクトリーのツールの中には、リストにある説明文を自動入力する言語や、別のプラットフォームで販売された商品をリストから削除する機能も含まれている。

リスト・パーフェクトリーは最初にメルカリ、ポッシュマーク、eBay、エッツィーと連携された。今日では、ショッピファイのストアや、Facebookやインスタグラムなどのソーシャルフィードを含む12のプラットフォームにわたり、出品が可能となっている。現在、登録者数は3万人で、アクティブユーザーは1万2000人。このなかには別々の店舗を運営している出品者も含まれている。

再販競争の過熱

再販が一般的になりつつあるとはいえ、一般的なプラットフォームの多くは依然として収益性を実現するための過程にある。ポッシュマークは2020年中盤に初めて収益を上げたが、最新の四半期では290万ドル(約3億3100万円)の損失を計上している。2021年の第2四半期にスレッドアップの合計実損失は昨年同時期の670万ドル(約7億6400万円)に対して、1440万ドル(約16億4000万円)となっており、これは売上の24%に相当する。

これらのアプリは、安定した利益を得るために、出品者がより多くの在庫をプラットフォームに掲載し、より多くの売上を上げる方法を模索している。高級品の再販プラットフォームであるトレデジーのように、ユーザーがアイテムをより迅速かつ効率的に販売するため役立つようなツールを構築しているアプリもある。設立者でCEOのトレーシー・ディナンジオ氏が今年すでに米モダンリテールに語ったところでは、デザイナー認証や価格設定ガイダンスなどの機能に投資することにより、出品者がより多くのアイテムを出品できるようになる。「当社にはカジュアルな出品者からパワーリスターまで、そしてその中間のあらゆるユーザーが存在する」と氏は述べている。このプラットフォームの成功の最大の鍵は、価格設定について売り手を教育することだと氏は説明する。「もっとも早く売れる商品は、ほかのプラットフォームで売られている商品よりも、通常16%安い価格だ」。

小売企業とのパートナーシップに注力

一部の再販プラットフォームは、小売企業と提携するという別の結論に落ち着くこともある。小売企業は平均的なパワーリセラーよりはるかに多くの在庫品目にアクセス可能であるため、より多くの衣服を自社アプリに掲載し、より多くの人々がオーディエンスとなることが期待できる。

たとえばスレッドアップはピアツーピア販売への注力を弱め、小売のパートナーシップに力を入れている。スレッドアップはここ数年、同社がリセール・アズ・ア・サービス(RaaS)テクノロジーと呼ぶものを、リーボック(Reebok)、アディダス(Adidas)、メイドウェル(Madewell)などのブランドに供給してきた。同プラットフォームは、個人の出品者に注力するよりも、このB2Bのホワイトラベルサービスが長期的に大きな売上をもたらすことができると考えている。ウェルズ・ファーゴ(Wells Fargo)の新しい報告書によると、過去1年間にスレッドアップは小売クライアントを30%増やした。スレッドアップのビジネスのうち、この部分からの売上は、今年の時点で200万ドル(約2億2800万円)だが、2025年には3億ドル(約342億ドル)に達すると予測されている。

ほかの再販プラットフォームもこの手法を検討しはじめている。ポッシュマークは今月、新しいブランドブティックプログラムを発表した。これは、各ブランドがプラットフォーム上で独自の店舗を運営できるようにするものだ。このプログラムの対象として最初に選ばれたのは、フリーピープル(Free People)とラッキーブランド(Lucky Brand)だ。

この動きは、プラットフォーム全体でより幅広い品揃えを実現し、「ワンストップショップ」になることを目指したものだと、ポッシュマークの広報担当者は語る。ポッシュマークは最終的に「すべての売り手のための」マーケットプレイスに進化するように設計されていると、広報担当者は述べている。ポッシュマークの在庫を増やすことで、より多くのユーザーを引きつけ、結果としてそのユーザーがすべての販売者に売上をもたらすことを同社は期待している。

再販市場の拡大がもたらすもの

出品者にとって、再販プラットフォームと大規模なブランドとの提携は自分たちのピアツーピア販売を脅かすものではない。パワーリセラーはむしろ、一般的に、再販がより普及すれば、再販業界が従来型の小売業者から市場シェアを奪い続けていくと考えている。

「世の中には関与できるビジネスは大量に存在し、トレンドに合わせて変化していく販売者が最もうまくいくだろう」とイーガン氏は述べている。

同様にコックス氏も、再販が増える方が望ましいとしている。「私は競合を恐れてはいない。すべての参加者が利益を得られるだけの市場は存在する」と氏は述べている。

[原文:‘A bigger audience than ever’: Power sellers are making six figures off of resale apps]

Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)