YouTube の機能更新、一部のクリエイターが懸念を表明:「キーワードブロックだけではうまくいかない」

YouTubeは、ブランドの信頼性に傷をつけかねない動画を広告主が簡単にブロックできる機能を強化している。だがその結果、コンテキストに基づかない不適切なターゲティングが意図せず行われる可能性があるという。

YouTubeは米国時間4月20日、広告主がキーワードターゲティングやコンテクスチュアルターゲティングで「不適切」な動画をあらかじめブロックできるようにするため、インテグラル・アド・サイエンス(Integral Ad Science:以下、IAS)、ダブルベリファイ(DoubleVerify)、ビュー・プランナー(VuePlanner)など複数のアドテクベンダーと提携したことを明らかにした。

これまで、広告主がYouTubeで自社に適していないと思われるコンテンツを回避するには、広告検証企業のレポートを調べて、過去に広告が表示されたコンテンツでリスクの高いキーワードが使われていたかどうかを確認するしかなかった。その後、広告主はその動画が許容できるものかどうか、あるいはリスクがあってもその動画の広告枠を購入すべきかどうかを判断していた。今後は、IASやゼファー(Zefr)といった企業が提供する強化されたツールを使って、広告が掲載される前にこうした判断を行い、広告が適切なコンテンツに表示されるチャンスを最大限に高めることが可能になるという。

この手のツールでは、より明確なフィードバックループが生まれるため、マーケターはリーチを犠牲にすることなく、コンテンツを分類したり広告の表示場所を細かくコントロールしたりできるようになる。だが、ツールによっては、意図せず正反対の結果をもたらす可能性もありそうだ。

「適切」と「不適切」の境界線

IASのブランドサステナビリティツールとコンテクスチュアルターゲティングツールを例にとってみよう。どちらのツールも、リスクの高いチャンネルが事前に排除された「Google Preferred(グーグル・プリファード)」のチャンネルラインナップと、IASが独自に編集したリスクの低いチャンネルのリストを利用している。また、IASのチャンネル登録リストでは、同社のコンテクスチュアルインテリジェンス技術によって、子ども向けコンテンツの分類を含む、言葉やコンテンツの分類が行われる。しかし、問題なのは、この種のターゲティングが動画レベルではなくチャンネルレベルで行われることだ。動画のほうが、広告主が適切と判断するコンテンツのタイプが細かく分かれる。

チャンネルレベルのターゲティングでは、キーワードブラックリストと同じように対象が広がりすぎてしまい、特定の動画が、広告主が不適切と判断したチャンネルにあるためにブロックされてしまう可能性があるのだ。

「広告主がこうしたツールを使用すると、実際には適切なコンテンツを不適切だとしてブロックしてしまうリスクがある。その結果、キャンペーンのパフォーマンスに影響が及び、YouTubeのクリエイターが犠牲になる可能性がある」と、オンライン動画広告プラットフォームのプレサイスTV(Precise.TV)で会長を務めるクリスチャン・ダンクル氏はいう。

ほかのアドテクベンダーは、YouTubeの広告ターゲティング機能の強化に合わせて、IASが提供するツールに高度なコントロール機能を追加するという。ゼファーやチャネル・ファクトリー(Channel Factory)、それにビュー・プランナーは、広告主がチャンネルではなく動画の内容に基づいて広告を出すべきか判断できるようにすると述べている。リスクに基づいて動画を排除するのではなく、関連性に基づいて動画を追加する独自の動画ターゲティング機能を提供できるというのが彼らの主張だ。

一部のクリエイターは懸念を表明

一方、数十万から数百万のビューを獲得した動画から得られる継続的な広告収入に頼っているクリエイターにとって、「収益化を無効にさせられる」ことは大きな懸念だ。一部のクリエイターでは、ビューが急増しているにもかかわらず、CPMが大きく低下する状況がすでに見られていると、YouTuberが集結するオンライン動画の祭典「ビッドコン(VidCon)」の共同創設者であるハンク・グリーン氏はいう。同氏は4月第3週、自身のYouTubeチャンネルのCPMが28%減少したとフォロワーに語ったが、これは2013年1月以来最大の減少幅だという。

この状況は、新型コロナウイルスのパンデミックのためにパブリッシャーが直面しているのと同じような苦境だ。ニュースパブリッシャーは、サイトのトラフィックが急増しているにもかかわらず、収益化に苦労している。パンデミックが続くなかで、広告主がキャッシュフローを楽にするために広告予算を削減したり、新型コロナウイルス関連のコンテンツが自社のイメージに与える影響を懸念して広告を取りやめたりしているからだ。

「動画やチャンネルを特定のキーワードでブロックするだけではうまくいかないだろう。プラットフォームがキーワードだけを頼りにするわけにはいかないからだ。もっとコンテクスチュアルな要素が必要になる」とグリーム・フューチャーズ(Gleam Futures)の幹部、クリス・デイビス氏はいう。「そうしなければ、ビデオオンデマンドのプラットフォームは、膨大な数のオーディエンスをもたらしてくれるきわめて優れたクリエイターを失う危険がある」。

Seb Joseph(原文 / 訳:ガリレオ)