自社でデジタルサブスクリプションサービスを開始するのに必要なツールが揃った。ヤフー・スポーツ(Yahoo Sports)はそう考えているようだ。ニューヨーク・メッツからはじめて、チームごとに構築をはじめる計画だ。
自社でデジタルサブスクリプションサービスを開始するのに必要なツールが揃った。ヤフー・スポーツ(Yahoo Sports)はそう考えているようだ。ニューヨーク・メッツからはじめて、チームごとに構築をはじめる計画だ。
2月20日、スポーツ関連パブリッシャーであるヤフー・スポーツが発表したのは、有料の広告非表示のサブスクリプションサイトとアプリ「クイーンズ・ベースボールクラブ(Queens Baseball Club)」だ。ニューヨーク・メッツと共同で開発されたこのアプリは、チャットや掲示板といったコミュニティ機能に加えて、フロントオフィスのエグゼクティブたちとのインタビューといった独占コンテンツにアクセスできるサービスとなっている。ダイレクト・トゥ・コンシューマー・プロダクト部門責任者であるカイル・マクドニール氏によると、今後は時間をかけて選手やコーチ、元選手といった人々に関するコンテンツにもアクセスを広げていく意志があるとのことだ。
ヤフーとメッツの契約
しかし、プロダクトの重要なディテールはまだ確定していない。そのひとつが値段だ。年間を通じて、さまざまなプロモーションを行いつつ、異なる価格帯を試したいと考えているようだが、マクドニール氏によるとエグゼクティブたちは1カ月5ドルほどの価格帯に落ち着くことを予想しているとのことだ。
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また、スタッフ採用もまだ完了していない。クイーンズ・ベースボールクラブの専属のフルタイムレポーターとして3人を雇う計画があると、マクドニール氏は言う。それに加えて、コンテンツを増やすための寄稿者、チャットなどでの会話を促進しながら管理するコミュニティマネージャーも複数必要となる。
メッツとヤフーのあいだでのビジネス契約の詳細もまだ不明確だ。ヤフーがどのように報酬を得ているのか、そして、ヤフーとメッツのどちらがカスタマーリレーションシップの所有者となるのかについて、ヤフーは詳細の言及を控えた。
参加したのはメッツが最初のチームだが、ヤフー・スポーツは同様のプロダクトをほかのMLBチーム、さらにはほかのメジャーな北米スポーツリーグでも行うことができると考えているようだ。ヤフー・スポーツのゼネラルマネージャーであるジェフ・ライス氏によると、ほかのスポーツでは、『いくつかの』連盟との交渉をすでにせわしなく行っているとのことだ。2019年を通じて、少なくとも10件ほどの同様のプロダクトをローンチさせる計画という。
プロダクトとコンテンツを所有するのはヤフーとなるものの、メッツが抱えるチャンネルにおいて『熱狂的に』クイーンズ・ベースボールクラブをプロモーションすると合意がとれていると、ライス氏は言う。これはメッツのホーム球場であるシティ・フィールドも含まれる。ほかにもメッツの試合を放送する地方スポーツネットワークであるSNY、そして予算を付けて行われるマーケティング・キャンペーンもだ。
ビジネス契約の強み
メッツにフォーカスを当てたサブスクリプションプロダクトは、クイーンズ・ベースボールクラブだけではない。この2月にニューヨーク市場をカバーしはじめてちょうど1年が経ったのが、アスレチック(The Athletic)だ。アスレチックは自分の応援するチームに関するより多くの情報を求めるファンたちによる支出を求めて開始されたプロダクトのひとつだ。彼らのサイトによると、サブスクリプションの更新率は90%だという。
しかし、ほかの小規模な競合プロダクトと同様、アスレチックはチーム自体とのビジネス契約は持っていない。ヤフーの今回のプロダクトはその点で競争優位を持っている。しかしこれは倫理的なグレーゾーンに位置するとも言える。
「(彼らが発したい)ポジティブなストーリーに基づいて戦略を決めてしまうと短絡的だろう。少しでも不誠実なコンテンツが出てきたら、熱烈なファンたちはすぐにそれを嗅ぎつけることができる」と語ったのは、デジタル・スポーツコンテンツのコンサルタント企業ポストゲーム(The Post Game)のCEOでありプレジデントであるエリック・ハード氏だ。
ヤフー・スポーツの今後
ヤフー・スポーツは長年、さまざまな消費者向けプロダクトをオーディエンスに届けてきた。人気のファンタジースポーツ関連に加えて、Rivals.comも運営している。Rivals.comは、大学のスポーツにフォーカスを据えたサブスクリプション型コミュニティのネットワークで、ヤフー・スポーツが2007年から運営している。姉妹バーティカルサイトであるヤフー・ファイナンス(Yahoo Finance)は、今年の第1四半期にプレミアムプロダクトをローンチすると、報道されている。
ヤフーがさまざまなファンベースをターゲットに同様のプロダクトを増やす中で、サービス内容を変えることを厭わない姿勢が成功の鍵を握るだろうと、ハード氏は言う。「いかに適応できるかに彼らの成功はかかっている。マーケットを読める必要がある」。
Max Willens(原文 / 訳:塚本 紺)