デジタル・マーケティングを変えるテクノロジーをわかりやすく説明する「一問一答」シリーズ。今回のテーマは「ビューアビリティ(Viewability)」です。「ビューアビリティ」には、オンライン広告の取引方法を変える可能性が秘められていますが、それが実際には何なのかということをめぐって、まだ混乱があります。一問一答形式で紐解いていきましょう。
デジタルマーケティングに関する用語を、わかりやすく説明する「一問一答」シリーズ。今回のテーマは「ビューアビリティ(Viewability:可視性)」です。
ネット広告の効果を計測する「インプレッション」という基準の意味を変える可能性がある、ビューアビリティ。とはいえ実際は、いまだビューアビリティの定義をめぐって、議論が続いている様子です。では、一問一答形式で紐解いていきましょう。
とりあえず「ビューアブル」なインプレッションって、どんな意味ですか?
「ビューアビリティ(可視性)」は、オンライン広告の指標であり、ユーザーが実際に視認できるインプレッションだけを追跡しようとするものです。
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たとえば、Webページの最下部に広告がロードされていても、ユーザーがわざわざそこまでスクロールダウンして閲覧しなければ、そのインプレッションは「ビューアブル(Viewable:視認可能)」だったとは見なされません。
ビューアビリティとは、ユーザーに見てもらえる可能性のあった広告に対してのみ、広告主が料金を支払うために考えられた基準なのです。
なるほど。にしても、視認可能なことが大きな問題なのですか?
はい、大きな問題なのです。立場によってビューアビリティの基準がバラバラなので、誰の言葉を信じるかによりますが、最大で54%の広告は閲覧できない状態にあります。
それは驚きですね。つまりオンライン予算の半分は無駄になっていると?
それも、質問する相手によります。英国の業界団体「インターネット広告協議会」(IAB)によると、閲覧されない広告インプレッションに対して対価を支払っていることに、マーケターたちは不満をつのらせているそうです。IABは、業界全体がその基準を、「提供されたインプレッション」から「閲覧されたインプレッション」に移行するよう求めています。そうすれば、広告費の無駄を減らせるというのです。
Googleやアンダートーンなど、一部の大手広告ネットワークはすでに、広告が閲覧可能になった場合にのみ、顧客が料金を支払えるように、基準を改定し始めています。ですが、とある広告会社幹部によると、ディスプレイ広告枠の代金には、閲覧不能な広告インプレッションの分が、最初から考慮されているそうです。ビューアブルインプレッションに移行しても、メディア関連コストが膨らむだけで、広告主が負担する正味費用は変わらないのだとか。
Google自身も米DIGIDAYに対し、同社のネットワークで提供するビューアブルインプレッションは、「閲覧不能なものを含む従来のインプレッションよりも高い価格で販売できると思う」と、語っています。
もしかして、これは、買い手が売り手に圧力をかける新たな方法ですか?
身も蓋もなく言えば、そうなるかもしれません。
ビューアブルな広告とは何かについて、定まった基準はあるのですか?
ビューアビリティ基準への移行に伴う主な問題は、「ビューアブルインプレッション」とは何か、どんな技術であればビューアビリティを測定できるのか、という点に関してまだ意見の一致が見られないことです。
IABは、「ビューアブル」インプレッションを「広告枠の面積の50%以上が、少なくとも1秒間は閲覧できる状態になっているインプレッション」と定義しています。その一方、ビューアビリティに関するソリューションを提供するベンダーは、それぞれが異なる方法と技術を用いて、インプレッションがこの基準を満たしているかどうかを測定しています。
そのため、米業界団体「メディア・レイティング・カウンシル」(MRC)は、こうした違いについて理解が進み、きちんとした説明がされるまでは、ビューアブルインプレッションに基づいて取引を行うのは時期尚早だと勧告しています。
ビューアビリティは、マーケターにとってどんな意味を持つのでしょう?
市場に及ぼす影響を予測するのは難しいのですが、理論的には、実在の人間が目にするインプレッションに対してのみ料金を支払うことになるので、マーケターのディスプレイ広告キャンペーンのパフォーマンスは上がるでしょう。けれども、先ほどもご説明したように、結果的としてそうしたインプレッションにかかる費用は上昇すると思われます。
パブリッシャーにとっては、ちょっと迷惑な話ですね。
ビューアビリティへの移行が広告収入に悪影響を及ぼすのではないかと心配するパブリッシャーもいます。おそらく、販売するインプレッションが減ることになるからです。インプレッションの供給が半分に減れば、収入を維持するためには広告枠に対して2倍の料金を請求できなければなりませんが、それを実施できる保証などありません。
デザインの観点から言えば、ビューアビリティのために、パブリッシャーはおそらく、広告枠の多くをページのもっと上部に移動せざるを得なくなるでしょう。だが、そうすればユーザー体験に悪影響を与えかねません。
何もかもが、かなり不透明なように聞こえます。
その通りです。ビューアビリティが市場にどんな影響を及ぼすかは誰にもわかりません。オンラインメディアの販売方法が大きく変化し、cookieによる追跡やアトリビューションにも影響します。より広範なオンライン広告市場にビューアビリティがどのような影響を及ぼすかについては、ビューアビリティが一般的なものになるまで、誰にもわからないのです。
もし新聞や雑誌がこの基準を強制されたら、どうなるでしょう?
修羅場でしょうね。
Jack Marshall(原文 / 訳:ガリレオ)
photo by Thinkstock / Getty Images