デジタル・マーケティングを変えるテクノロジーをわかりやすく説明する「一問一答」シリーズ。今回のテーマは「タイムベース計測」です。
「タイムベース計測」は広告料金の下落を反転させる方法として、クリックではなく「読者がサイトに滞在した時間」に基づいて広告を販売するというアイデアです。多くのパブリッシャーが、この方法による販売を検討していると伝えられています。
しかし、タイムベース計測とは、いったい何なのでしょうか? 「アテンション時間」は、本当にオンラインパブリッシングを救うことができるのでしょうか? わかりやすく説明していきましょう。
デジタルマーケティングを変えるテクノロジーをわかりやすく説明する「一問一答」シリーズ。今回のテーマは「タイムベース計測(Time-based metrics)」です。
「タイムベース計測」は広告料金の下落を反転させる方法として、クリックではなく「読者がサイトに滞在した時間」に基づいて広告を販売するというアイデアです。多くのパブリッシャーが、この方法による販売を検討していると伝えられています。
しかし、「タイムベース計測」とは、いったい何なのでしょうか? 「アテンション時間」は、本当にオンラインパブリッシングを救うことができるのでしょうか? わかりやすく説明していきましょう。
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そもそも「タイムベース計測」とは、何なのですか?
タイムベースの計測とは、大まかにいえば、ユーザーがデジタルコンテンツと過ごした時間を測定することです。この説明から先は、少し複雑になっていきます。
調査企業デジタルコンテンツネクスト(Digital Content Next)の2014年の調査では、パブリッシャーが広告主にもっともよく提供する統計値は、訪問あたりの平均滞在時間でした。
いまのところ、シンプルなもののように聞こえますね。
でも、ちょっとお待ちを。パブリッシャーが提供するものとしては、ほかに、ユーザーあたりの滞在時間、ページの平均滞在時間、広告表示の平均時間なども増えています。つまり、「タイムベース計測」のうちどれが最重要であるかについて、全体の合意はほとんどないのです。
パブリッシャーが広告主に提供する計測値(%):(上から順)ユーザーあたりの時間(65%)、
総滞在時間(59%)、広告の表示時間(53%)、ページビュー時間(47%)、コンテンツの表示時間(12%)、その他(6%)
また、どのパブリッシャーも、ベンダー(主に測定ツールを提供するアドテク企業)については複合的であり、95%のパブリッシャーがサイト滞在時間の測定に2つ以上のベンダーを利用しています。
広告主側から見たら、どうなのでしょう?
いまのところ、「タイムベース計測」を推進しているのは主にパブリッシャー側です(特に声が大きいのは、「エコノミスト」や「フィナンシャル・タイムズ」といった、恩恵が大きいところです)。その理由は簡単です。ページビューあたりで広告を販売する方式は、供給に限界がないので、持続不可能なレベルにまで料金が下落してきていますが、注意(アテンション)は理論的には有限です。
そしてパブリッシャーは、少なくとも理論的には、アテンションへの料金を上乗せすることが可能なのです。ただし、パブリッシャー側は意欲的ですが、広告を購入する側の意欲はそれほどでもありません。
広告主側は、なぜ意欲的ではないのですか?
それは、いまのところ広告主は、広告が見られていることを確認するのに手一杯だからです。また、滞在時間を測定する対象や方法について合意がありません。「滞在時間から広告主が受ける恩恵は測定可能なのか?」と、代理店は疑問を提示しています。
インプレッションをできるだけ安く購入し、そこからキャンペーンを組み立てるというところもまだあるでしょう。広告を可能な限り広めたいのか、購入や購読などの行動を起こしてほしいのか、マーケターの希望によって最良の指標は変わります。
コンテンツのパフォーマンスを測定する、シンプル・リーチ(SimpleReach)社のエドワード・キムCEOは、「成功のもっとも優れた指標が時間なのか、記事への滞在がブランドにとって本当にプラスなのかは、まだわかっていない」と、話しています。時間の測定が重要であることは確信している、キム氏。しかし、新しい「通貨」としての採用を促進することが、混乱を引き起こし、ネイティブ広告へと向かうお金の流れを弱める恐れがあるとも考えています。
「タイムベース計測」への意欲にもかかわらず、2014年のデジタルコンテンツネクストの調査では、パブリッシャーの36%が「『タイムベース計測』はクリックに代わるものにはならない」と答えているのは、そのためでしょう。
「タイムベース計測」は、販売の一部になるかもしれないが、将来「通貨」になることはない:
(上から順)強くそう思わない(4%)、そう思わない(28%)、どちらとも言えない(32%)、そう思う(32%)、強くそう思う(4%)
今後、どんな流れになるのでしょう?
識者たちは、広告主が「タイムベース計測」に注力するのは「ビューアビリティ(Viewability:可視性)」に満足してからになると見ています。
ビューアビリティを測定するモウト(Moat)社の共同創業者ジョナ・グッドハートCEOは、「広告主は今後、『ビューアビリティがない広告在庫は購入しない』と言うようになるだろう」と語っています。その次には、広告が機能しているのかが問題になるでしょう。「ビューアビリティが効果とイコールではないという問題だ」と、グッドハートCEOは言います。
結局、「タイムベース計測」は広まらないのですか?
メディアヴェスト(MediaVest)社のデジタルイノベーション担当マネージングディレクター兼シニアバイスプレジデントであるジョン・アンセルモ氏によると、最終的に広告購入は、何かひとつの指標に基づくのではなく、クライアントごとに決められるようになりそうです。
アンセルモ氏はこう述べています。「エンゲージメント時間は、私たちが使うべき手段にはなるでしょう。しかし、何もかもに対してひとつの指標が使われる世界から、異なる指標をいくつも使う世界へと、私たちは向かっているのです」。
Lucia Moses(原文 / 訳:ガリレオ)
photo by Thinkstock / Getty Images