2021年は、「ブロックチェーン」「NFT」「メタバース」など、メディア業界の辞書に新たなバズワードが次々と登録されました。そして、それらすべてを包括する「Web3」という言葉も生まれました。次の時代のインターネットを表す最新の呼び名です。いつものQ&Aシリーズで解説します。
2021年は、「ブロックチェーン」「NFT」「メタバース」など、メディア業界の辞書に新たなバズワードが次々と登録されました。そして、それらすべてを包括する「Web3」という言葉も生まれました。次の時代のインターネットを表す最新の呼び名です。
これらのコンセプトが自分たちのビジネスにどれほどの影響を及ぼすのかについて、パブリッシャー幹部が認識しているかは不明です。
2021年にはこの分野で大がかりな実験が行われたものの、これらの新しい技術や導入事例はまだ初期段階にあるため、Web3時代への移行が既存のビジネスにどれほど破壊的な変化をもたらすかは不透明です。かつてWeb1.0からWeb2.0に時代が移った際は、はっきりとした変わり目はありませんでした。
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おそらくWeb3への移行は少しずつ、段階的に進んでいくでしょう。より多くのユーザーが暗号資産(仮想通貨)に投資し始め、バーチャルウォレットが構築され、企業がメタバースに参入し、消費者のリードに従うかたちで適応していくことになるでしょう。
いつものQ&Aシリーズで解説します。
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──Web3とは何ですか?
Web3.0またはWeb3とは、構築者とユーザーが共同所有する分散型のインターネットを指すのに用いられている呼称です。基本的には、Apple、Google、Facebookなどの集中型プラットフォームが、日々ユーザーから抽出したデータを収益化するやり方へのアンチテーゼとなっています。
「Web3」という言葉は、イーサリアム(Ethereum)ブロックチェーンの共同創設者ギャビン・ウッド氏が2014年、ブロックチェーンベースの分散型インターネットの概念に言及した際に生み出したものだと、ワイアード(WIRED)はウッド氏へのインタビューで触れています。
Web3では、ユーザーが自身のデータとオンラインプレゼンスを所有し、その情報は相互運用性により、彼らがアクセスするさまざまなウェブサイトやプラットフォームに共有されます。さらにユーザーは、自身のデータを好きなようにマネタイズすることができます。
たとえば、あるパブリッシャーのサイトを訪れた人が、ブラウザにリンクした暗号資産ウォレットで自動的にログインし、自身についての所定の情報を提供するのと引き換えに、その情報を得たい広告主から、暗号資産のマイクロペイメントによる支払いを受けることが可能です。その場合、ユーザーはどのようなデータが共有されるかを知り、それに同意するうえで、より能動的な役割を果たします。
Web3では、「アクセス認証にユーザー名やパスワードではなく、あなたが誰であるかを暗号的に証明するものが用いられ」、その認証はユーザーがアクセスするあらゆるウェブサイトやプラットフォームに共通すると、NFTアートのマーケットプレイス、アート・ブロックス(Art Blocks)の創設者兼CEOで、1月のコンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)でNFTに関するパネルに登壇したエリック・カルデロン氏は述べています。
──Web3へのアクセス方法は?
Web3そのものが必ずしも新しいブラウザとして存在するわけではありません。Web3ベースのウェブサイトには、現在使用しているのと同じブラウザを使ってアクセスすることが可能です。すなわち、Web3のサイトはブロックチェーンソフトウェアを用いて作られているものの、一般的にはWeb2のサイトと同じようにアクセスすることができます。そして暗号資産の愛好者たちは、暗号資産を使って決済したり、NFTを購入したりする際に、すでにWeb3の一端に触れています。
Web3は、Facebookの親会社メタ(Meta)のような企業が構築しているメタバースプラットフォームからもアクセスできるようになります。すなわち、Web3バージョンのFacebookは、メタのメタバースプラットフォーム「ホライゾン(Horizon)」からアクセスされることになります。
── Web3は、Web1.0やWeb2.0とどう違うのですか?
Web3の起源は、実はWeb1.0にあります。1990年代から2000年代初頭にかけてのインターネットであるWeb1.0では、ユーザーは事実上、静的なWebページのコンテンツを検索して読むことしかできませんでした。
「Web1が成功したのは、情報へのアクセスを民主化することだ」と、Web3ネイティブのマーケティング会社兼プロダクトスタジオ、セロトニン(Serotonin)の共同創業者でCEOを務めるアマンダ・カサット氏は言います。たとえばウィキペディア(Wikipedia)のように、「誰もが等しく情報を利用できるようにするためのハードルを下げたのだ」
そして2000年代半ばにWeb2が登場しましたが、Web1をオープンウェブの時代とするなら、Web2はクローズドプラットフォームの時代となりました。Web2モデルを利用する企業は基本的に、情報へのオープンアクセスを取り込み、それを広告ベースのビジネスモデルに変えたとカサット氏は指摘します。
Web2は「個人のデータを収益化し、その結果、個人に向けて広告を出し、彼らの行動を操作し、考えつく限りの方法で彼らをマネタイズしようとする反面、ある意味で彼らをそうしたお金の流れから締め出す閉じた環境」のシステムとなりましたが、Web3は現在それを是正しようと試みているのだと、カサット氏は言います。
ある意味でWeb3はWeb1時代への回帰を告げるものですが、それをブラウザベースのウェブを超えて、モバイル端末、コネクテッドTV、ゲーム機、そしてもちろんVR(仮想現実)ヘッドセットを含む、より広範囲なインターネットへ拡大しようとしているのです。
Web3がWeb1の要素を復活させた代表的な例として、「支払い」が挙げられます。カサット氏によると、インターネットのオリジナルのソースコードには、ユーザーへの支払い機能が含まれていたのですが、この機能は実装されませんでした。すなわち、たとえばウィキペディアへの寄稿など、オンラインで情報を提供する人は、その関与に対して支払いを受けられるはずだったのですが、ご存じのように、実際にはそのようなことは起こりませんでした(この機能の名残は現在、HTMLの「402(Payment Required)」エラーコードに見ることができます)。
Web1に支払いレイヤーが欠けていたために、インターネットユーザーは広告収入のファネルから切り離され、この市場に投じられるすべてのお金が、パブリッシャー、広告主、小売業者、その他の広告ファネルに関わるすべてのメンバーの取り分になっていたと、カサット氏は指摘します。Web3は現在、この支払いレイヤーの追加に取り組んでおり、Web3のユーザーは、ウェブサイトへの貢献、コンテンツへの関与、ショッピング、広告の閲覧などに対して報酬を得ることになります。
「Web3のユーザーは、自分が使っている製品に対して報酬が支払われ、連携が得られることを期待する。もはや向こう側にいる存在ではない。彼らはその一部になりたがっているのだ」と話すカサット氏は以前、イーサリアムブロックチェーンの市場投入を支援したブロックチェーンソフトウェア企業、コンセンシス(ConsenSys)で最高マーケティング責任者(CMO)を務めた経験もあります。
──Web3とメタバースの違いは何ですか? また、ブロックチェーンはどのように関わってくるのでしょうか?
Web3は、実質的にはブロックチェーン技術によって構築されるインフラを指す言葉であり、そのインフラがメタバースの基盤として、またメタバースのプラットフォームが構築される土台として機能します。
メタバース(現行のメタバースと将来の発展形を含む)は、ロブロックス(Roblox)、メタのホライゾン、フォートナイト(Fortnite)など、複数のプラットフォームから構成されており、それぞれのメタバースプラットフォームは、ブロックチェーンベースの分散型インターネットを用いることで、それらのプラットフォームがユーザー同士をつなぎ、またほかのプラットフォームとつながるうえで必要な技術に保証を与えています。
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──これはメディアやマーケティング業界にとって、どのような意味をもつのでしょうか?
先にカサット氏が述べたように、Web3の世界では、ユーザーが企業に期待するものが増えます。ユーザーは、製品とのインタラクションに対する報酬を求めるだけでなく、製品そのものに対する発言権をもち、また企業の成長に関する意思決定、すなわちガバナンスに関与できることを期待するようになるでしょう。
現在のメディアやマーケティング業界が知る広告モデルも、その価値を試されることになります。
「広告は、Web3ビジネスの中心的な収益化手段にはならないだろうが、Web3でも、状況に応じて広告が提供されると考えていいと思う」とカサット氏は述べ、ただしその規模は小さくなると言います。「個々のユーザーがより多くをコントロールできるようになり、配信プラットフォームによって心理学的な行動修正がなされるという考えは否定されることになるはずだ」
──企業がWeb3でプレゼンスを築くにはどうすればいいのでしょうか?
企業がWeb3の世界に足を踏み入れる方法は、ENS(Ethereum Name Service:イーサリアム・ネーム・サービス)ドメインというブロックチェーン上の識別子を購入し、人々が簡単に識別し、見つけることのできるドメイン名を手に入れることになります。これはURLアドレスと同様に、自社の名前の後に.comではなく.ethをつける形で使うことができます。
[原文:WTF is Web3?]
KAYLEIGH BARBER(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:長田真)