昨年3月の時点で、Wマガジン(W Magazine)は「サバイバル・モード」だったと、当時オーナーであったフューチャー・メディア・グループ(Future Media Group)の最高経営責任者、マーク・ロテンバーグ氏は述べた。当時、58人の従業員のうち17人が一時解雇され、同社は積極的に買い手を探していた。
Wマガジン(W Magazine)は昨年3月の時点で、「サバイバル・モード」だったと、当時同誌のオーナーであったフューチャー・メディア・グループ(Future Media Group)の最高経営責任者、マーク・ロテンバーグ氏は述べた。その際、58人の従業員のうち17人が一時解雇され、同社は積極的に買い手を探していた。
ファッションモデルのカーリー・クロス氏と複数の投資家からなるグループ(BDGのCEOであるブライアン・ゴールドバーグ氏を含む)で構成された新たなオーナーは、同誌を買収して、Wメディア(W Media)を2020年8月に設立した。それ以来、BDG(以前の名称はバッスル・デジタル・グループ[Bustle Digital Group])は、運営パートナーとして同誌の販売戦略と技術改善を主導してきた。一方で、BDGのラグジュアリー分野への入り口、さまざまな新しい広告主との出会いをWマガジンが提供している。
BDGの営業チームを活用できることは、これまでのところはWマガジンにとって成果を生んでいるように思われる。BDGのプレジデントで最高収益責任者のジェイソン・ワゲンハイム氏によると、今年の第1四半期には、デジタルプロダクトの収益が2020年の同四半期に比べて199%増加したという。同社によると、これは同四半期の収益目標を25%上回っている。ワゲンハイム氏によると、プリントとデジタルを合わせた事業は、今年上半期に10%増加する見込みだという。彼は正確な数字は言わなかった。
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WメディアのパブリッシャーでありBDGのシニア・バイスプレジデントであるアンバー・エスタブルック氏によると、この成長の大部分はWマガジンにとって新しいプロダクトとなる、BDGのブランデッドコンテンツスタジオの存在に起因するという。セリーヌ(Celine)やボッテガ・ヴェネタ(Bottega Veneta)のようなWのラグジュアリー広告主たちは、BDGの「カード・ストーリー・フォーマット(card story format)」を使って、初のブランデッドコンテンツキャンペーンを購入した。「カード・ストーリー・フォーマット」は目を引く形で画像や動画を組み合わせ、さまざまなストーリーテリングを実現するCMSの機能だ。BDGによると、ブランドデッドコンテンツは、年初から4月までのWの売上高のうち、6桁台半ばから上の金額を示しているという。
なぜ、この提携が成功したのか?
広告代理店ジャニュアリー・デジタル(January Digital)のマーケティング部門バイスプレジデント、およびパートナーであるメーガン・ジョーンズ氏は、DKNYやレベッカ・テイラー(Rebecca Taylor)などのビューティやファッションのクライアントを抱える。WマガジンとBDGの提携が成功したのは、ファッションブランドや高級ブランドが昨年末にマーケティングキャンペーンを再開し、広告に流れる予算が回復したものの、コロナウイルスの規制下で自らクリエイティブを物理的に制作するのに苦労していたためだという。バッスル(Bustle)、ナイロン(Nylon)、ゾー・リポート(Zoe Report)など、BDGの残りのポートフォリオによるスケールに加えて、ブランデッドコンテンツが提供できるようになったことは、Wマガジンがさらなる広告案件を獲得しようとするタイミングで大きな利点となった。
「パンデミックにより、ラグジュアリーブランドはブランド全体をコントロールするという考えを捨て、信頼できる人々や出版社の手にブランドを委ねざるを得なくなったため、出版社がラグジュアリーブランドから収益を獲得する機会を増やした」と、ジョーンズ氏は語る。
また、BDGが印刷発行物に取り組むのはこれが初めてだ。Wマガジンはほぼ50年にもなる歴史を持ち、かつてはコンデナスト(Condé Nast)が所有していた。今年の時点で年に6回雑誌を発行しているが、今の同ブランドの大きな焦点はデジタル再生にある。ワゲンハイム氏によると、BDGは2017年に廃刊になった雑誌『ナイロン』のプリント版の再出版をもって、今後どこかの時点で印刷分野の展開をさらに進める計画だが、その日程はまだ決まっていない。
コムスコア(Comscore)によると、Wマガジンのデジタル視聴者数は12月の65万人強から3月には160万人と140%増加した。エスタブルック氏によると、この成長を成し遂げるうえで、WマガジンをBDGのCMSに移行させることが重要であった。この移行プロセスには6カ月が費やされ、移ったことでWマガジンは上述のカード・ストーリー形式を利用することができるようになった。このCMSに移行したあとは、10年ぶりにWのウェブサイトをリニューアルすることと、印刷コンテンツをデジタル配信と融合させることが優先事項だった。
「インスタグラムをキオスクのように」
「我々は(インスタグラムを)新しい新聞・雑誌の売店のように活用している」と、エスタブルック氏は語る。「世界で最初にWマガジンを見てもらうのがインスタグラムになった。記事や表紙はすべて、印刷版が発売される約2週間前にインスタグラムで公開される」。
ソーシャルメディア上で表紙やアートワークを事前に公開するというこの戦略は、今年2月の「ベスト・パフォーマンス(Best Performances)」号の発刊で特にうまくいった。バルチャー(Vulture)によると、このパッケージに写っていたセレブたちの写真は、ロサンゼルスの普通な街中で撮影され、「衝撃的なほど平凡」であることが逆にバイラルとなったという。
Wマガジンのエグゼクティブデジタルディレクターであるケイティー・コナー氏によると、撮影はパンデミックのピーク時に行われたため、安全な範囲でできる撮影は限られていたと述べた。しかし、「ここまで爆発的な(バイラルになる)とは予想していなかった」と付け加えた。実際、これはプラットフォームを「超越して」、TikTokのような新興ソーシャルチャンネルでも注目を集めた最初のエディトリアルパッケージのひとつとなった。
WマガジンのTikTokアカウントには現在40万人以上のフォロワー、480万の「いいね!」を抱えている。2020年2月、WマガジンはTikTokで最初のテスト利用を行ったが、今年2月にASMRやスクリーンテストシリーズなどのオリジナルコンテンツの制作を開始するまで、1年間の休止期間があった。それ以来、雑誌本体のような同ブランドの中核プロダクトに関わったことのない若い読者層のあいだで109%の成長が見られた。同社は正確な数字を明らかにしなかった。
Wマガジンにとっての継続的な成長戦略
Wマガジンにとっての継続的な成長戦略は、BDGのほかの取り組みと一致している。今年の8月からは、同社の新しいショッピング可能なコンテンツ形式を新しいWサイトにも統合し、自社データ収集と収益を増やすためにニュースレターを拡大する。エスタブルック氏によると、Wニュースレターの購読者数はすでに15万人に達しており、公開率は30%弱だという。
「自社では持っていないブランド、かつ同時に広告主と視聴者のニーズを満たすブランド、を買収したり、合併したり、もしくはローンチするという、典型的なBDG的なやり方だ」と、ワゲンハイム氏は言った。
[原文:With BDG leading its sales, W Magazine doubled first quarter digital revenue over 2020]
KAYLEIGH BARBER(翻訳:塚本 紺/編集:長田真)
Photo from W Magazine Facebook