2013年にワシントン・ポスト(Washington Post)を買収した際、ジェフ・ベゾス氏はこの新聞にユーザーファーストのアプローチを導入しようと試みた。現在、ワシントン・ポストは調査実験開発(RED)チームを監督する広告制作責任者として、ジェフリー・ターナー氏を任命し、新しい広告メニューを開発している。
2013年にワシントン・ポスト(Washington Post)を買収した際、ジェフ・ベゾス氏はこの伝統ある新聞にユーザーファーストのアプローチを導入しようと試みた。その結果、ページの読み込み速度が向上し、広告に表示かかる時間も短縮された。
現在、ワシントン・ポストはRED(調査実験開発)チームを監督する広告制作責任者として、ジェフリー・ターナー氏を任命。REDは編集、広告、技術を結び付け、アドブロック率の上昇に対応するため、2015年に立ち上げられたチームだ。ターナー氏は、自身の目標のひとつが「ユーザーに何かしらの実用性を提供する製品」であるとし、その第一弾として新サービスのショーケース(Showcase)をローンチ。ターナー氏はAOLとハフポスト(HuffPost)に10年間勤務し、直近ではAOLとハフポストを有するベライゾン(Verizon)グループのオース(Oath)で製品関連シニアディレクターとして活躍した人物だ。
ショーケース(下記モックアップ参照)は、レシピやチケットの販売といった広告主のメッセージをあわせ持ったイベント推奨広告ユニットだ。これはスポーツやエンターテインメント、そして不動産の広告主を念頭に設計された広告で、開催予定のイベントのフィードや、ユーザーをイベント会場のサイトへと誘導する購入ボタンが表示される。
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「価値交換を追及」
「ユーザーは広告が好きではないとよく言われる」と、ターナー氏は話す。「だが、彼らは良い広告に対しては、非常に良い反応を示す。一方、良くない広告は、業界の足を引っ張ることになる。ブランドは、ユーザーがそんなネガティブな体験をすることを望んでいない。だからこそ、我々は真剣に価値交換を追及しているのだ。当初のREDは、軽くて読み込み速度の速い広告を作ってくれた。いま、我々はどうすればユーザーが広告にエンゲージし、インタラクトしてくれるか、ということを考えている」。

ワシントン・ポストの新しい「ショーケース」広告のモックアップ
ターナー氏の前任者、ジャロッド・ディッカー氏は、ブロックチェーン企業ポエット(Poet)を率いるため、2月に退任している。ふたりの相違点は、ディッカー氏が広告活動を管理し、CRO(最高リスク管理責任者)のジェッド・ハートマン氏の監督下にあったという点だ。ターナー氏は広告活動の管理担当ではなく、監督者もプログラマティック戦略および収益担当バイスプレジデントのジェイソン・トルストラップ氏になっている。ハートマン氏は、両者を分割することで、REDが未来の広告制作に専念するというメッセージを送りたかったのだという。
ハートマン氏は、「我々はREDに楽しんで製品を開発し、テストし、そしてマーケットプレイスやブランドスタジオに耳を澄ます、という遊び場的な、ガレージ的な感覚を味わってほしいと考えている。そうすれば、広告運用はまったく違うものになる」と語った。
「REDはしっかり浸透」
ワシントン・ポストは財務状況を発表していないが、ハートマン氏は同社の広告収入は4年連続で2ケタの増加率を見せていると話す。そして、REDもまた、動画およびブランデッドコンテンツ部門での広告制作に貢献し、今年の広告収入増加を支えるものと期待されている。
「REDが組織全体にしっかり浸透しているため、成長率は好調に伸びている」と、彼はいう。
REDは立ち上げ以来、カスタマイズ可能なネイティブ広告やポストパルス(PostPulse)など、20もの商品を展開している。いずれも広告主が選んだ投稿記事のカルーセルを読者に提示するものだ。また、REDは編集サイドでの作業も行っており、リ・エンゲージ(Re-Engage)と呼ばれるポップアップでは、記事を読み終えたと思われる読者向けに、別の記事を勧めている。REDチームのフォーマットは、他のパブリッシャー向けに販売するパブリッシングツール「アーク(Arc)」の一部にも利用されている。
ターナー氏は、ショーケースのような追加機能を持つ新しい広告商品を導入する方法を模索すると話しており、今後は新しい製品を発売するペースは遅くなるかもしれない。