BuzzFeedとTikTokは、BuzzFeedがソーシャルメディアプラットフォーム上で複数のライブビデオシリーズを初公開し、TikTokがショーの広告主を確保するという、1年間の契約を締結した。
BuzzFeedとTikTokは、BuzzFeedがソーシャルメディアプラットフォーム上で複数のライブビデオシリーズを初公開し、TikTokがショーの広告主を確保するという、1年間の契約を締結した。この契約は、TikTokがメディア企業と協力して、同プラットフォーム上で毎週行われるライブショーのスポンサー契約を販売する、はじめてのケースとなる。
『I Made This(これ私が作りました)』は、この契約から生まれた最初のシリーズだ。BuzzFeedの料理専門サイト、Tasty(テイスティ)から生まれたこの全8回のシリーズは、フレンズギビング(Friendsgiving:感謝祭に合わせて友人で集まって食事をするイベント)、テールゲート・パーティー(a tailgate party:スポーツ観戦の前に、駐車した車の周りでビールやBBQを友人たちと楽しむパーティ)、デート・ナイト(date night)、そしてディーワーリー(Diwali:ヒンドゥー教の光のお祝い)、ハヌカ(Hanukkah:ユダヤ教のお祭り)など、さまざまなイベントや祝祭日のための料理を、BuzzFeedと提携しているクリエイターの出演者たちによって、ライブ動画で紹介するというもの。最初のエピソードは、11月3日に放映された。エピソードは12月22日まで、毎週水曜日に放映され、TastyのTikTokアカウントでライブ配信される。BuzzFeedは、これまでに放送されたエピソードを何人が視聴したかについては、明らかにしなかった。
まず、番組では広告主のための商品紹介(プロダクトプレイスメント:product placements)が行われる。最初の広告主は、家電ブランドのサイタス(Cyetus)で、サンクスギビングのエピソードに登場する。現在のところ、番組に登場するのはTikTokが提携しているブランドであり、これによりBuzzFeedは、新規クライアントとの繋がりを作ることができているという。BuzzFeedの広告戦略・パートナーシップ部門シニア・バイスプレジデントのケン・ブロム氏は、サイタスとは「おそらく(シリーズがなければ)提携することはなかっただろう」と述べる。
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なお、コンテンツ制作に関しては、Tastyの編集チームとブランデッドコンテンツチーム、そしてBuzzFeedのクリエイターとタレントチームが、TikTokと協力して行っている。「私たち自身が、実質プロダクションとなっている。TikTokはパートナーシップを所有し、私たちはコンテンツを所有する」とブロム氏は付け加えた。両社とも、この契約から得られる利益の金額についての質問には答えなかったが、BuzzFeedの広報担当者は、両社が売上をシェアしていることを認めた。
BuzzFeedが提供する強みは、ブランド認知、人気コンテンツのフォーマットとテーマ、そしてクリエイターたちだ。一方TikTokは、10億人以上の月間アクティブユーザーと、ライブ番組の広告主を提供する(BuzzFeedとTastyは、すでに同プラットフォームでそれぞれ110万人、190万人のフォロワーがいる)。
TikTokでコンテンツ事業開発のグローバル責任者を務めるハリシュ・サルマ氏は、「クリエイティブとコマーシャルサイドに寄り添わせることが、今回の目標だ」と語る。
TikTokにとっては、新たなステージに上がるチャンス
この契約は、BuzzFeedのようなパブリッシャーが、TikTokと協力してプラットフォーム上で直接収益を上げる方法を開発するための、試験的プログラムの第1弾だ。TikTokが、サイタスのような新しい広告主とBuzzFeedをつなげるのと同じように、TikTok上でのブランデッドコンテンツに投資するにあたり、ガイド役を求めているかもしれない広告主に、BuzzFeedが機会を提供することができる。
エージェンシーのダガー(Dagger)のメディア担当、バイスプレジデントのアシュリー・カリン=キンシー氏は、「TikTokを使ったことのない広告主たちも、今回の新しいプログラムを通してなら、簡単に参入できることを理解している。BuzzFeedには、実績と信頼があるからだ。この種のプロダクトプレイスメントを利用することにも、抵抗がなくなるだろう」と語った。インタビューを行ったとき、同氏はすでにこのシリーズに適したクライアントを考えており、近々BuzzFeedに連絡するつもりだと語った。
メディアプランニング/バイイングエージェンシーのメディアキッチン(Media Kitchen)のグループ責任者、ダナ・ブシック氏は、「我々のクライアントでBuzzFeedと定期的に仕事をしている企業は、同媒体に大きな価値を見出している。BuzzFeedが打ち出したTikTokとの提携は、ブランドや広告主が、同プラットフォームの持つ親しみやすを享受するだけでなく、BuzzFeedともより仕事がしやすくなるという点で、非常に良い戦略だ」と語った。
またブシック氏は、TikTokとBuzzFeedのブランデッドコンテンツ企画は「新しいものであり、目につきやすい。TikTokの標準的なアクティベーションは、すでにユーザーたちも見慣れてしまいつつあるが、今回の取り組みはそうした状況を打破するための手段としても、効果的だ」と述べた。
ライブ配信をめぐる課題
TikTokはパンデミックがはじまった頃、同プラットフォームでのライブ配信向けに最初のシリーズをローンチ。この夏には、クリエイターがQ&Aをホストできる機能など、新たな機能を追加した。TikTokは2021年のオーディエンス数を明らかにしなかったが、同社の広報担当者は、ふたつの放送で400万回以上視聴されたジャスティン・ビーバーのバレンタインデー公演に言及した。サルマ氏は、このフォーマットを今後も進化させていこうと考えており、BuzzFeedとの提携が担う大きな役割も、どのような方法でそれを実現するかを見極めることにあるという。「今回のライブコンテンツ制作は、これまでとはまったく違う取り組みだ」。
一方、BuzzFeedのブロム氏は、「ライブ配信に取り組む利点のひとつは、反復学習ができることだ」と述べる。各エピソードについてのフィードバックを、将来のエピソードやTikTokとの企画に応用できるというのが同氏の見方だ。なおブロム氏によると、このシリーズから得た学びは、「2022年第1四半期と第2四半期に何をしたいのかを理解する」ために利用されるという。これはBuzzFeedが、同社が保有するほかの専門サイトや、食品以外のさまざまなカテゴリーでも、シリーズ展開を開始する可能性を示唆している。
TikTokとBuzzFeedは、この提携を通し、オーディエンスを獲得するためのライブストリーム配信と宣伝方法、そして予測可能な視聴率を生み出すために、毎週継続して視聴してもらうための方法を見出そうとしている。「予測可能な視聴率を生み出すまでは、自信を持ってライブを行い、そこに視聴者が集まるかどうか、確信を得ることはできない」とブロム氏。「プラットフォームそのものは、必ずしも予測可能な視聴率を生み出すようには作られていない」。
ユーザーに毎回視聴してもらうような習慣を最初に作ってもらうために、Tastyは過去のライブストリームから流用した動画を自らのTikTokアカウントに投稿し、今後のエピソードを宣伝している。またほかにも、TastyとBuzzFeedのTikTokアカウントには、次回のライブ配信時期を知らせるプロモーション動画が投稿され、視聴者は投稿内のリンクやボタンから参加を表明することができる。
広告主から寄せられる疑問
広告主から寄せられる疑問についてはどうだろうか。サルマ氏によると、今回のBuzzFeedとの提携は、TikTokにとって、「記事広告のクリエイティブ、スポンサーシップにおけるアセット、ホストとの統合、ブランドとのつながりの構築をどう実現すれば良いか、そして、それをセンスのあるやり方で対応するにはどうすればいいか」といった疑問にも、答えることができると述べる。
こうした疑問については、前出のブシック氏も答えを求めていた。「誰が見てくれるのか、オーディエンスは誰なのか、どのようなリーチとスケールがあるのか、そしてその影響を測定する方法はあるのか」などもそうだ。ほかにも、ブランドの安全性と、広告主がコンテンツの開発にどれほど関与するかも、同氏が抱えていた疑問だった。「コンテンツが公開される前に、広告主は最終的にそれを承認する権限を得られるのか、メッセージを発信する権利は、どこまで広告主に許されているのか」といった具合だ。
TikTokによると、広告主は番組の制作や編集をコントロールすることはできないが、BuzzFeedやTikTokと協力して、自社ブランドをどのように番組に組み込み、言及するかの決定に関わることはできる。TikTokは、広告主との話し合いの詳細や、測定情報については明らかにしなかった。ブランドセーフティに関する懸念については、同社にはアプリのコミュニティガイドラインがあり、それはライブ動画にも適用されるという。TikTokによると、同社のライブ配信プラットフォームには、ブランドを安全に保つのに役立つ機能がいくつか組み込まれているという。たとえば、起動画面の設定タブで、ホストはコメントをオフにしたり、キーワードフィルタに最大200語を追加して、チャット内のコメントを制限したりできる。またライブストリーム中、ホストは視聴者を数秒または数分間、またはライブストリームのあいだ常にミュート、およびブロックすることもできる。
しかし、そもそも広告主がライブストリーミングに関心を持っているのか、疑問を持つ人は少なくないだろう。実際、新型コロナウイルスのパンデミックがはじまる前、メディアキッチンの顧客のなかには「予測不可能性を理由に、ライブストリームを嫌うクライアントもいた」とブシック氏。しかし、その状況にも変化が見られている。「パンデミックを経験し、我々が自宅に閉じこもるなか、ライブストリーミングがコミュニケーションの標準的な方法になってきたため、広告主やブランドはそれに慣れてきているのだ」。
[原文:TikTok taps BuzzFeed to produce the first sponsored weekly live shows on the platform]
SARA GUAGLIONE(翻訳:塚本 紺、編集:村上莞)