アドテク幹部たちのあいだで新しい懸念が最大の関心事になりつつある。モバイルとデスクトップのSafariでAppleが展開しているトラッキング防止のブロック機能が、Appleのアプリ内環境にまで拡大されるという恐怖だ。
アドテク幹部たちのあいだで新しい懸念が最大の関心事になりつつある。モバイルとデスクトップのSafariでAppleが展開しているトラッキング防止のブロック機能が、Appleのアプリ内環境にまで拡大されるという恐怖だ。
不安ももっともだ。AppleがSafariでサードパーティのCookieをすべてブロックしたことで、Safariにおけるプログラマティックのマネタイズはとどめを刺された。サードパーティの広告トラッキングに対してAppleは本気で取り組んでいる。これがiOSデバイスのアプリ内広告に飛び火することが、多くのアドテクベンダーにははっきりと見えている。
「Appleのうまい一手」
Appleの広告ID(IDFA)は広告主のための識別子であり、iOSデバイスのアプリにおける広告ターゲティングとアトリビューション追跡の唯一の方法だった。その計画について、Appleはいつものようにいっさい口を閉ざしてきた。そのAppleが9月に入り、アプリ開発者がIDFAをどう使うべきかに関するApp Store Connectの記述を改訂した(iOSデバイスでターゲティング広告を提供するにはこの方法しかない)。そのなかでAppleは、アプリ開発者はIDFAをどのように使用するのかを明示し、広告ターゲティングとアトリビューションのみが目的であることを約束しなければならないとした。またアプリ開発者は、すべてのサードパーティパートナーが同じ約束をすると保証しなければならない。
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同9月、AppleはiOSアプリエコシステムのAPI、SKAdNetworkについて、キャンペーン後のアトリビューション追跡に有用なツールとして位置づけることを明らかにした。一部のアドテクベンダーはAppleの意図について、SKAdNetworkをIDFAの代わりにすることで、IDFAが終わってもモバイルアプリのアトリビューションはダメになるわけではないと、広告主を落ち着かせようとしていると考えている。
「(Appleは)ゆっくりとどめを刺しはじめている」と、ロンドン・メディア・エクスチェンジ(London Media Exchange)のCEOのダン・ウィルソン氏は話す。「これ(APIの更新)は、Appleがアトリビューションを取り締まりコントロールするようになるのだから、Appleのうまい一手だ。(アプリ内のアトリビューションが)Appleの独占的な環境にとどまることになる」。
悪用されるIDFA
AppleがIDFAをやめて独自の仕組みに置き換える計画だとすると、iOSのエコシステムで収益最適化ツールを使っているところすべてに影響するだろう。
「パブリッシャーやアプリ開発者などマネタイズしているところは、Appleのエコシステムの魅力が減少する」と、あるアドテク幹部は匿名を条件に語った。「(アプリ内広告によるマネタイズに頼っている)開発者が離れはじめたらどうなるのだろう。アプリ開発者のエコシステムにより活気があるAndroidに消費者は移るのだろうか」と、この幹部は続けた。
IDFAはいまのところiOSアプリ内で広告をターゲティングする唯一の方法であり、設定をユーザーがコントロールできる。しかし、アドテクの幹部たちによると、IDFAは何年も前から悪用されている。IDFAはiOSユーザーを(個人ではなく集団として)追跡するための方法であり、位置情報やデバイスグラフの多くのベンダーがこれを使って、ユーザーと広告の接触を評価している。しかし、アドテク業界筋たちによると、怪しいベンダーがそのデータにアクセスし、プロフィールを作成してデータをマネタイズする目的で、たとえばユーザーの位置情報を追跡できる状態が、何年も前から普通になっている。
紛らわしいスタンス
アドエクスチェンジであるトリプルリフト(TripleLift)の共同創業者で最高戦略責任者のアリ・ルーイン氏は、「業界にはAppleがIDFAの利用を制限すると懸念する人が多い」と語る。「不思議なのは、ウェブのCookieよりもプライバシーで劣るともいえるアプリ内ターゲティングのIDFAがいまだに維持されていることだ」。
というのも、Cookieは永続的なものではなく、失われやすく簡単に消去できるが、IDFAのユーザーデータはそうはいかない。「ひと口に言えば、Appleのスタンスが紛らわしいのだ。アプリ内について許可しているものを、なぜモバイルウェブで制限しているのだろうか」と、ルーイン氏は続けた。
DIGIDAYはAppleに連絡を取ったが、記事公開時点までに返事はなかった。
Jessica Davies (原文 / 訳:ガリレオ)