ザ・トレードデスク(The Trade Desk)は2月15日、プレミアムパブリッシャーハブ「オープンパス(OpenPath)」を立ち上げた。これは、「広告主がプレミアムデジタル広告インベントリーに直接アクセスできる」ハブで、広告主の無駄を最小化する一方、各パブリッシャーの収益を最大化するのを手助けするという。
ザ・トレードデスク(The Trade Desk)は何年も前から、SPO(サプライパス最適化)に取り組んできた。だが、2月15日のプレミアムパブリッシャーハブ「オープンパス(OpenPath)」立ち上げにより、今はGoogleの広告スタックに狙いを定めている。
オープンパスは、「広告主がプレミアムデジタル広告インベントリー(在庫)に直接アクセスできる」ハブで、広告主の無駄を最小化する一方で、各パブリッシャーの収益を最大化するのを手助けすると説明されている。
オープンパスにより、広告主は各参加パブリッシャーの広告インベントリーに直接アクセスできるようになる。これは、ザ・トレードデスクのSPOの最新の動きだ。立ち上げ時点で参加するパートナーのパブリッシャーは、カフェメディア(CafeMedia)、コンデナスト(Condé Nast)、ガネット(Gannett)、ハースト(Hearst)、マクラッチー(McClatchy)、ネクスター・デジタル(Nexstar Digital)、ロイター(Reuters)、トリビューン・パブリッシング(Tribune Publishing)、ワシントン・ポスト(The Washington Post)などだ。
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SPOは、デジタル広告主とパブリッシャーの両方に対して一様に、プログラマティックサプライチェーンの非効率性をなくすと約束している。そのひとつが「ウォールドガーデンの不透明性と特権」であり、ザ・トレードデスクのCEO、ジェフ・グリーン氏は、この最新の発表で重要な違いがひとつあることに触れた。
「オープンパスは、広告主とパブリッシャーの双方にとって価値を最大化する透明な価格競争を保証するオープンな市場を推進することに、業界のリーダーたちが協力している優れた例だ」とグリーン氏は声明で語った。「それを念頭に置き、オープンパスの立ち上げにあたってザ・トレードデスクは、プラットフォームでのGoogleのオープンビッディング(Open Bidding)を停止する」。
直接つながることの意味
ヘッダー入札の台頭阻止に向けたGoogleの取り組みであるオープンビッディングの停止に加えて、ザ・トレードデスクは、サプライサイドのプログラマティックもすべてオープンビッディングから移行することも求めている。
オープンビッディングに対するよくある批判は、Googleが、広告インプレッション全体を把握できる立場を利用して、DSP(デマンドサイドプラットフォーム)がインプレッションに入札することを望むかどうかを判断し、求めていなければ、オープンなヘッダー入札オークションに回すことができるというものだった。こうした疑惑について、Googleは否定している。
広告主が、オンライン広告支出の効率向上の方法を評価するのを支援するコンサルティングサービス、ジャウンス・メディア(Jounce Media)のCEO、クリス・ケーン氏は、Googleのオープンビッディングを通る広告インプレッションをオプトアウトすることは、DSPにとって大いに意味をなすと語った。
「DSPがビッドストリームの重複排除を検討しているなら、オープンビッディングの削減は、考えるまでもないことだ。経済的に非効率で、戦略的に魅力がない。それに、より直接的なサプライパスと比べてほぼ完全に冗長だ」とケーン氏は付け加えた。
ザ・トレードデスクの動きの意味
米DIGIDAYが接触したほかの情報筋は、ザ・トレードデスクの最新の動きを、DSPがプレミアムインベントリーに最初にアクセスできるようにしたいと述べていることについて、事実上市場で、Googleに対して対抗する意思を表明したものと捉えている。
コンサルタント企業マッドテック・アドバイザーズ(MadTech Advisors)のCEO、ボブ・ウォルザック氏は、次のように述べた。「この方法は、各参加パブリッシャーの広告インプレッションへの優先アクセスを求めており、ヘッダー入札オークションに関わりたくないのだと解釈した」。
「オープンビッディングから手を引く限り、間違いなく、ザ・トレードデスクはGoogleに挑み、『Googleはオープンビッディングで自社を優遇している』と言っている。このシナリオにおいては、ザ・トレードデスクは、『我々は需要をもたらしていることにより、優位性を求めている』と言っているのだ」。
ウォルザック氏はさらに、パートナーのパブリッシャーと直接取引することで、ザ・トレードデスクは事実上、こうしたオークションに参加しないと言っているのだと述べた。
「エージェンシーが満足しないもの」
取引交渉の機密性を理由に匿名を希望したほかのセルサイドの情報筋は、DSPとパブリッシャーの直接取引が、持ち株グループとSSP(サプライサイドプラットフォーム)間で結ばれた取引契約といかに対照的であるかに言及した。
そうした情報筋のひとりは、オープンパスは「エージェンシーが満足しないもの」になると述べた。
この情報筋は、さらにこう付け加えた。「エージェンシーは、SPOをめぐって自社独自の価値提案を構築してきたので、DSPがその間に入ることを望まない」。
同様に、別の情報筋は、こう言い添えた。「エージェンシーとSSP間の戦略的提携により、DSPレイヤーからエクスチェンジレイヤーにコントロールが移行している(中略)今起きているのは完全な揺れ動きだ」。
[原文:The Trade Desk takes aim at Google’s Open Bidding with OpenPath launch]
RONAN SHIELDS(翻訳:矢倉美登里/ガリレオ、編集:長田真)