7月20日、FIFA女子ワールドカップがオーストラリアとニュージーランドで開幕した。スポーツパブリッシャー勢は同大会を追うべく、新たなエディトリアルコンテンツ、ライブブログ、ニュースレター、ポッドキャスト、ソーシャルメデ […]
7月20日、FIFA女子ワールドカップがオーストラリアとニュージーランドで開幕した。スポーツパブリッシャー勢は同大会を追うべく、新たなエディトリアルコンテンツ、ライブブログ、ニュースレター、ポッドキャスト、ソーシャルメディアポスト、動画の準備に全力を挙げている。
そして、それらパブリッシャーの一部、たとえばデジタル動画にフォーカスするチームホイッスル(Team Whistle)や、ニュースレター企業のザ・ジスト(The Gist)は、2022年の男子FIFAワールドカップよりも多くの広告収入を得ている。
一方、スポーツビジネスパブリッシャーのフロントオフィススポーツ(Front Office Sports)など、一部のメディア企業の広告収入は男子大会のそれとほぼ同等であり、女子スポーツに対するマーケティング投資の長年の不平等を踏まえると、これも注目に値する。
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女子大会のほうが広告収入は多い
チームホイッスルのプレジデントであるジョー・カポローソ氏は、「今回の女子大会の広告収入は2022年の男子大会のそれよりも多く、男子大会の6桁台前半に対して、女子大会は7桁台前半の収入をもたらした」と話す。具体的な額は明示さなかったが同氏によれば、今回の大会は2023年度の全スポーツイベント中、チームホイッスルにとって最大の収益を生んでおり、現時点で2023年度の全広告収入の15%を占めているという。
チームホイッスルの女子ワールドカップ中継の広告主はこれまで、飲料、CPG(消費財)、ストリーミング、テクノロジー、保険、リテールの分野から、アドビ(Adobe)を含め5社のスポンサーが付いている。「オリジナルのカスタムコンテンツ、ブランドインテグレーション、ペイドメディア、ショートフォーム動画のテイクオーバーを融合して販売している」と、カポローソ氏は話す。
チームホイッスルは、『No Days Off』や『Home Team』といったYouTubeで公開している番組で今回の大会を取り上げ、さまざまな選手の裏話を紹介。また、大会を解説するとともに、新進スターにスポットライトを当てている。
一方、ザ・ジストの場合、「女子大会の広告収入は男子大会のそれの4倍以上だ」と、同社共同創業者のエレン・ハイスロップ氏は話す。具体的な数字は明示されなかったが、同氏によれば、今回の大会にフォーカスする同社ニュースレターの広告インベントリー(在庫)は完売に近いという。
ザ・ジストが販売しているのは3種のポップアップニュースレターのスポンサー契約で、全サブスクライバーに配信されるそれらには、予選ラウンド、決勝ラウンド、決勝戦のプレビューなどが掲載される。同社はさらに、米国とカナダの各代表チームにフォーカスする『Sports News』の限定版を両国それぞれのサブスクライバーに向けて発行する。同社のスポンサーには、ファンデュエル(FanDuel)、BMO、ドアダッシュ(DoorDash)、トップス(Topps)といったリピート勢に加えて、クラッカー・ジル(Cracker Jill)、ゼロ(Xero)、ジ・アスレティック(The Athletic)、アンダーアーマー・カナダ(Under Armour Canada)といった新規勢もいる。
潤沢なスポンサード
このほか、フロントオフィススポーツ(Front Office Sports、以下FOS)はブランデッドソーシャル動画シリーズ契約を、社名は非公開の広告主1社と結んでいる。なお、同シリーズでは米女子代表チームのひとりの選手にスポットライトを当てている。契約金は「6桁ほどの数字」だと、FOSのCEOで創業者のアダム・ホワイト氏は話すが、こちらも具体的な金額は明示しなかった。
また、ブリーチャー・レポート(Bleacher Report、以下B/R)の場合、今回の女子ワールドカップの広告収入は2019年の前回大会に比べて「2桁」の増加を記録しているという。なお、男子大会との比較結果については、明示されなかった。同社には、バイオ・スティール(Bio Steel)、アンハイザー・ブッシュ(Anheuser Busch)、フォルクスワーゲン(Volkswagen)、オールステート(All State)、AT&T、トゥルーリー(Truly)が広告主として付いている。今大会、同社の広告販売の中心はインスタグラムのストーリーズだと、B/Rフットボール(B/R Football)のブランドストラテジー部門シニアディレクターであるリー・ウォーカー氏は話す。
「ブリーチャー・レポートは、B/R、B/Rフットボール、ソーシャルアカウントのハイライトハー(HighlightHER)に加え、B/Rアプリでのライブ番組や映画『マッドマックス』シリーズに触発されたアニメーションで大会関連動画を配信していく」と、ウォーカー氏は話す。アニメ動画をソーシャル配信するこの手法は、同社が差異化を図り、2022年の男子大会で活用した戦略であり、「視聴数は1900万回に上った」と同氏は言い添える。
一方でテレムンド(Telemundo)は、「今回の女子ワールドカップの広告インベントリーを売り切った」と、同社のAVODおよびストリーミング・デジタル部門SVPを務めるホアキン・デュロ氏は話す。ただし、具体的な数字については話さなかった。今大会、同社プロダクトには、フォード・モーター・カンパニー(Ford Motor Company)、フォルクスワーゲン、エックスフィニティ(Xfinity)などがスポンサーとして付いているという。
多様な広告付きプラットフォームを活用
2022年11月、サブスクリプションベースのスポーツパブリケーションであるジ・アスレティックは、女子スポーツのカバレッジを倍増させる同社の試みにGoogleが資金提供する旨を発表した。Googleが同プロジェクトにいくら投資するのか、具体的な数字については明示されていない。
ジ・アスレティックはより多くの読者を引き寄せるべく、ポッドキャストやYouTubeなどのソーシャル動画などの広告付きプラットフォームでも、今回の女子大会を取り上げていく。さらには、従来のマーケティング手法以外にも手を伸ばし、米女子代表チームの3試合を観覧するウォッチパーティもボストン、ロサンゼルス、ポートランドのバーで開催する。
7月第4週には、ジ・アスレティックは今回の女子大会を取り上げる毎朝10分間のサッカーポッドキャスト『The Daily Football Briefing』を開始した。「我々にはほかに2つ、今大会を取り上げる毎日配信のロングフォームポッドキャストがある」と、同社のオーディオマネージングエディターであるイアン・マッキントッシュ氏は話す。
「女子ワールドカップには、一般に広告収入が伸びない時期にパブリッシャーの収益を後押しする力がある」と、フロントオフィススポーツのホワイト氏は話す。「今年、経済が停滞してマーケターが次々に手を引いたことで、一部のパブリッシャーが広告収入の拡大に苦慮している。この現状において、これはなおさら重要な事実だ」と、同氏は言い添える。
「アメリカンフットボールといったスポーツが始まる秋シーズンを見据え、夏のあいだに収益を認識する能力が高まるという意味で、これは実際パブリッシャー勢にとって朗報になるだろう。(中略)確実に浮力をくれるからだ」とホワイト氏は付け加えた。
Sara Guaglione(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)