少しずつ「オープン化」進む、 Snapchat のディスカバー

「スニーカーショッピング(Sneaker Shopping)」は、コンプレックスネットワークス(Complex Networks)のもっとも人気が高い動画シリーズのひとつだ。このシリーズでは、司会のジョー・ラ・ピューマ氏が、人気コメディ俳優ケビン・ハート氏やアメフト選手マーショーン・リンチ氏ら有名人とショッピングに出かける。これまでに100以上のエピソードが撮影され、さまざまなプラットフォーム(主にYouTubeとコンプレックスネットワークスの独自サイト)で、3億2000万回以上の視聴回数を獲得している。

「スニーカーショッピング」は今年7月、配信プラットフォームにSnapchat(スナップチャット)の「ディスカバー(Discover)」を追加する。コンプレックスネットワークスは、ブラジル代表のサッカー界のスーパースター、ネイマール氏が登場するエピソードを皮切りに、4分間の縦長版番組を毎週公開しはじめる。コンプレックスネットワークスの既存番組がSnapchatで配信されるのは、6月にはじまったインタビューシリーズ「ホットワンズ(Hot Ones)」に次いで、これで2度目となる。

開かれるSnapchat

「ホットワンズ」の初公開は、スナップ(Snap)がパブリッシャーの非独占動画番組をSnapchatのディスカバーに投入しはじめた転換点でもある。それ以来、BuzzFeedの「ワースイット(Worth It)」やテイストメイド(Tastemade)の「ストラグルミール(Struggle Meals)」「タイニーキッチン(Tiny Kitchen)」、「ウィークエンドリフレッシュ(Weekend Refresh)」のような番組と、ワイアード(Wired)の「オートコンプリートインタビュー(Autocomplete Interview)」やGQの「アクチャリーミー(Actually Me)」のようなコンデナスト・エンターテインメント(Condé Nast Entertainment)の番組が、Snapchatのディスカバーに登場しはじめた。これらの番組はいずれも、YouTubeやFacebookのWatch(ウォッチ)など、ほかのプラットフォームですでに公開済みのものだ。

これまで、Snapchatのディスカバーの動画番組はたいてい、何らかの独自性や独占性があった。ディスカバープラットフォーム専用に制作された完全な新機軸番組であるか、「トゥナイトショー(The Tonight Show)」や「スポーツセンター(SportsCenter)」のような既存のTV番組のSnapchat専用バージョンであるかのどちらかだった。

「(スナップは)これまで、新番組やディスカバー専用番組にもっぱら焦点を合わせていた。だが、現在彼らは、ほかで公開済みであっても、Snapchatのオーディエンスを構築できる番組の受け入れに、もっとオープンになっている」と語るのは、ブラット(Brat)の共同創設者であるロブ・フィッシュマン氏だ。ブラットは今年、YouTubeに加えてSnapchatのディスカバーで10代向けシリーズ「ボスチアー(Boss Cheer)」の新シーズンを同時配信する。

スナップはオンレコでのコメントを避けた。スナップの関係筋は、Snapchatに非独占動画番組を受け入れやすくなっていると認めながらも、ディスカバーにどの既存番組を受け入れるかについては、今後も慎重に選んでいくと述べた。

パブリッシャーとの取り決め

情報筋のパブリッシャーによると、スナップはこうした既存番組に対してライセンス料を支払っていないという。Snapchatのディスカバーをめぐってパブリッシャーと結んでいる契約の多くと似た取り決めになっており、番組向けに販売された広告からの売り上げの分配が含まれているらしい。

情報筋のパブリッシャーは取り決めに満足している。こういった同時配信番組のディスカバー版は、たとえ未公開映像が含まれていても、新しいエピソードではないこともあるので、なおさら満足している。たとえば、ネイマール氏が登場する「スニーカーショッピング」のエピソードは、1年前にYouTubeで公開され、1200万回以上視聴されている。同様に、BuzzFeedは、最新シーズンの「ワースイット」を編集し直し、ディスカバー向けには、さまざまな価格帯の料理を試食する3人の司会を中心に据えている。こうした動きは、複数のストリーミングサイトやソーシャルプラットフォームで広く番組を配信する戦略の一環だと、BuzzFeedの広報担当者は語る。

ほかの例では、パブリッシャーが、ほかのプラットフォームでライブ配信中の新エピソードを同じ日にSnapchatのディスカバーで公開する計画を立てている。競争が激しいチアリーディングの世界を描いた、ブラットの10代向けコメディシリーズ「ボスチアー」は、YouTubeとSnapchatの両方で年内に新シーズンがスタートすると、フィッシュマン氏は話す。

「我々にとって好ましい同時配信だ。オーディエンスがいるところに番組を投入することに、主に力を注いでいる」。

知的財産を新たな収益源に

パブリッシャーにとって、Snapchatのディスカバーでの番組同時配信は、もっとも貴重な知的財産(エンターテインメント業界の用語では「IP」)の新たな収益源をつくるチャンスとなる。映画スタジオやTVスタジオ、ネットワークが何十年も前から行ってきたように、ヒット番組の新たな収益源を絶えず探すという発想だ。それが、新しいプラットフォームや地域への配信の形を取る場合もあれば、人気がある登場人物や番組内の一瞬を採用して商品化する場合もあるだろう。

たとえば、コンプレックスネットワークスの「ホットワンズ」が、ケーブルチャンネルのMSGやフューズ(Fuse)でも放送されているのは、デジタルパブリッシャーと、そういったネットワークとの広範な配信契約の一環だ。フィリピンのような新興市場に重点を置いたサブスクリプションストリーミングサービスのアイフリックス(iflix)も、コンプレックスネットワークスと契約を結び、「ホットワンズ」など同社の6番組のローカライズ版を制作している。「ホットワンズ」で食べられるスパイシー・チキン・ウィングには、独自の辛口ソースもある。

「我々にとって、SnapchatはIP拡大の別の一端だ」と、コンプレックスネットワークスのグローバルコンテンツ配信担当シニアバイスプレジデントであるマイルズ・オコネル氏は語る。「だが、『ホットワンズ』と『スニーカーショッピング』がどちらも、Snapchatプラットフォーム向きで、カットできる絶え間ない動きがエピソード全体にあることが役立っている」。

無類のユーザー体験

一方、スナップはユーザーと売り上げを増加させる必要がある。同社は今年、もっと多くのパブリッシャーや有名人、ソーシャルメディアのスターを魅了して、同社のプラットフォームをもっと利用させることを課題としている。具体的には、商取引のテストやスポンサー付きの記事の掲載、ディスカバー内のブランデッドコンテンツ規制の緩和を行う機会を提供したり、動画番組でもっと多くのデジタルパブリッシャーと協力したりしている。

メディアコンサルティング会社クリエイティービーメディア(Creatv Media)の創設者であるピーター・チャシー氏は、次のように述べている。「Snapchatは、ユーザー層にとって魅力的だと確信するコンテンツを掲載するだけだ。それがここでの目標なのは間違いない。それに、うまくやれば、特にSnapchat向けに如才なく独創的に再制作された番組は、本質的には、オリジナルなSnapchatの独占番組となる。YouTubeやFacebookのWatchなどと比べて、Snapchatでは、ユーザーの独特な期待に応え、無類のユーザー体験を提供するコンテンツだからだ」。

Sahil Patel(原文 / 訳:ガリレオ)