[ DIGIDAY+ 限定記事 ]動画インフルエンサーのイベント「ビドコン(VidCon)」には、カリフォルニア州アナハイムまで米国を横断してでも、デジタル動画のスターに会いたいという人々が集まる。そこまで肩入れしているだけあって、参加者たちはYouTubeをはじめとするプラットフォームの変化を痛感しているようだ。
[ DIGIDAY+ 限定記事 ]いわば、コミコン(Comic-con)のオンライン動画版と呼べる、年次イベント「ビドコン(VidCon)」には、カリフォルニア州アナハイムまで米国を横断してでも、ジョーイ・グラセファやエバ・グトウスキーのようなデジタル動画のスターに会いたいという人々が集まる。そこまで肩入れしているだけあって、参加者たちはYouTubeをはじめとするプラットフォームの変化を痛感しているようだ。ビドコンに参加していた10代、20代の十数人以上に話を聞いたところ、YouTubeの熱心なファンたちは、視聴を中断する広告が今年、増えていることに気づいていた。
2本連続のミッドロール広告
YouTubeが、デスクトップ向けサイトの動画でミッドロール広告を2本連続で流すテストを2018年に実施したあと、そうしたテレビのようなアドポッドをさらに拡大したことに対し、ビドコンに参加したYouTubeファンたちは、動画の途中で表示されるようになった広告の数に不満を漏らし、この新しい連続広告は特に苛立たしいと声を大きくした。ビドコン参加者はとりわけ活発なYouTube視聴者でもあることから、YouTubeでミッドロール広告の量が増えることにはおおむね寛容で、そうした広告収益がクリエイターの動画や無料中心のYouTubeというプラットフォームの資金になっていることは認識していた。参加していたアマンダ(14歳)は、「ただ、動画に戻るまでの時間が長くなってきている」と語った。
とはいえ、ミッドロール広告が増えるなか、1本の動画に含められるミッドロール広告数の暴走を防ぐものが、YouTubeには見当たらない。これでは、YouTubeと個々のクリエイターが動画の合間に広告を入れすぎて、カジュアルなオーディエンスを遠ざけてしまうおそれがある。カジュアルな層は、従来のテレビに寄りすぎた視聴を中断する広告体験をそこまで受け入れてくれないだろう。
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YouTubeがアドポッドを採用したのは、視聴が中断される数を減らしながらクリエイターが各動画から得る収益を増やそうということのようだ。動画1本に4本のミッドロール広告を4回に分けて挿入するかわりに、4本の広告を広告2本のアドポッド2つにまとめると、中断の数は半分になる。また、YouTubeの広報担当者によると、視聴者が休憩するタイミングで2本の広告が配信されて、スキップされずに2本とも視聴された場合、視聴セッションにおける広告による中断が40%減少するという。クリエイターによると、ミッドロール広告を個別に流すかアドポッドにするかは、クリエイターは管理していない。アドポッドによる挿入は、YouTubeの広告挿入システムに任せられており、動画に設定されているミッドロール広告の数に基づき判断されるという。
投稿数を減らし、時間を増加
とはいえ、最後まで待つしかない広告の中断が増え、中断時間も延びれば、特に熱心なYouTube視聴者でも受け入れるのは難しくなるだろう。ビドコンに参加していたハンナ(20歳)は、「何か準備しているものがあれば、広告の再生中にそれをやるだけ」と語っていた。
YouTubeのミッドロール広告は、クリエイター側で広告掲載の採用が拡大しているのに合わせて増大している。またクリエイターは現在、YouTubeの推奨アルゴリズムに取り入るため、投稿する動画の数を減らし時間を延ばしている。YouTubeのチャンネル登録者が29万2000人いるマリ・タカハシは、「多くのコンテンツが長くなっているのは、アルゴリズムに有効なものについてYouTubeと話をした結果だ」と語った。
YouTubeのアルゴリズムでは2012年以降、視聴時間が優先されているが、クリエイター側は当初、視聴時間をチャンネル単位で考えていた。しかし、YouTubeのフィードでより幅広いチャンネルから動画が推奨されていることに気づき、個々の動画単位で視聴時間を増やすことに注力するようになった。そうすると同時に、動画1本あたりの収益額も増やせるようになる。動画の時間が10分以上になるとミッドロール広告を入れられる。ミッドロール広告を1本入れられるようになった動画には、複数のミッドロール広告をクリエイター側で設定でき、動画に設定できるミッドロール広告の数に明確な制限はない。YouTubeの広報担当者は声明で、「ユーザーに関連した有益な広告にすることを目指している。ユーザーが目にする広告の量は、広告の好み、オークションの動向、広告主の要求など、いくつもの要因に基づいて変わる」と説明している。
ミッドロール広告増加の影響
YouTubeのチャンネル登録者130万人のクリエイター、デンゼル・ディオン氏は、「動画の長さが9分30秒なので、(ミッドロール)広告を入れられるように延ばさせて、となることはある」と語ってくれた。ミッドロール広告はプレロール広告よりも広告あたりの収益が大きいのだという。ミッドロール広告がYouTubeで増えている感じがするのも、もっともなことだ。
この記事のために話を聞いたクリエイターたちは、大半が、動画に含めるミッドロール広告の数を配慮するようになってきている。ディオン氏は、最後まで視聴されると考える15分動画なら、5分、10分、15分のところにミッドロール広告を入れるという。「(ミッドロール広告が)3本を超えることはないようにしている」と、ディオン氏は語る。また、母親とのYouTubeチャンネルに130万人の登録者がいるジェイミー・バトレス氏は、25分の動画に6分間隔で最大4本のミッドロール広告を入れたことがあると語ってくれた。
動画に挿入される広告の数が増えすぎると、視聴者が、ひいてはYouTubeの推奨アルゴリズムが離れてしまうおそれがあることを、多くのクリエイターが自覚している。YouTubeネットワークのクレバー(Clevver)の元ホスト兼プロデューサーで、先日、同じく元クレバーのリリー・マーストン氏とシェアード・メディア(Shared Media)というYouTubeネットワークを共同で創設したジョスリン・デイビス氏は、「微妙な境界線をいかなければならない。10分や20分の動画に広告を10本なんてことは、私はやらない。クリックしてよそに行くように頼んでいるようなものだ」と語った。
それでも、YouTubeは動画に含められるミッドロール広告の数に制限がないので、YouTubeチャンネルがこれを悪用する可能性はある。クリエイターたちによると、広告収益を分配するYouTubeのプログラムにチャンネルが参加していること以外に、YouTubeがミッドロール広告に定めている制限は、10分間という長さの要件だけのようだ。「10分の動画に広告を15本入れているユーチューバーを見たことがある」と、ディオン氏は語った。
Tim Peterson (原文 / 訳:ガリレオ)