バッスルは、インスタグラムストーリー(Instagram Stories)向けにエピソード形式の番組を独自に制作しているメディア企業のひとつだ。そして、そのストーリー向け番組のスポンサー契約を、テレビ局のようにブランドへ販売している。最近、このような展開を進めるメディア企業が増えているようだ。
インスタグラム(Instagram)がFacebookの動画視聴セクション、Watch(ウォッチ)のような機能を追加すれば、ミレニアル世代の女性向けウェブサイトのバッスル(Bustle)は、すぐに利用しはじめるだろう。バッスルは、インスタグラムストーリー(Instagram Stories)向けにエピソード形式の番組を独自に制作しているメディア企業のひとつで、ストーリー向け番組のスポンサー契約を、テレビ局のようにブランドへ販売している。
Facebookの子会社であるインスタグラムが、Snapchat(スナップチャット)のライブストーリー(Live Stories)をまねたストーリーを提供したのは、2016年8月のことだった。バッスルは、それから1週間と経たないうちにストーリー向けコンテンツをはじめて公開。それ以来、エピソード形式の番組を11種類制作している。また、姉妹サイトの「ロンパー(Romper)」や「エリートデイリー(Elite Daily)」も、9種類の番組を手がけている。これら20種類の番組を一度に公開すれば、バッスルのストーリーのフィードは一杯になってしまうだろう。そのため、同社はテレビ局のようにシーズン制を採用した。そしていま、バッスルはこの戦略を、ブランドへの番組の売り込みにも適用しようとしている。
バッスルでは、テレビ局やYouTubeと同じように、自社が売り込むストーリー向け番組の公開スケジュールを作成していると、最高売上責任者(CRO)のジェイソン・ワゲンハイム氏はいう。すでに同社は、これらの番組のスポンサー契約で「数百万ドルの売上」を上げているとワゲンハイム氏は説明した。
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もたらされる確実な成果
コスメショップ大手のアルタビューティー(Ulta Beauty)は、バッスルの番組「ビューティー・コール(Beauty CALL)」のスポンサー契約を結んでいる。同社がこの番組に関心をもったのは、バッスルのエディターが美容製品をテストするという内容であったためだ。また、バッスル初のストーリー向け番組である「ビューティー・コール」が一定のオーディエンスを獲得していることも、スポンサーになることを決めた理由だ。毎週公開されるこの番組が2017年に獲得したビューの数は2000万を超えていたと、アルタビューティーのメディアエージェンシーであるメディアハブ(Mediahub)で、バイスプレジデント兼アソシエートメディアディレクターを務めるサラ・ストローラー氏は述べている。
アルタビューティーがスポンサードした「ビューティー・コール」の3つのエピソードは、150万を超えるビューを獲得したと、同社のブランドマーケティング担当シニアバイスプレジデント、シェリー・ハウス氏はメールで回答した。そのうえで、「我々は今後も、インスタグラム向けのシリーズ番組とタイアップする方法をさらに模索するつもりだ」と述べている。
このように、定期的な視聴を促すエピソード形式の番組の方が、単発のストーリー向けコンテンツよりも確実な成果をブランドにもたらす可能性がある。「『ビューティー・コール』のようなシリーズ番組は、我々のユーザーがよく見るタイプのコンテンツだ。そのため、プロモーションのためにトラフィックを増やす必要がなくなる。すでにトラフィックがあるのだから」とストローラー氏は語った。
レストランのレビューサイトであるジ・インファチュエーション(The Infatuation)も、オーディエンスを獲得するために、ストーリー向けの新しい番組を制作している。2016年8月にはじめた「レストラン・レビュー・ライドアロング(Restaurant Review Ride-Alongs)」は、同社初のエピソード形式の番組で、単に料理を紹介するだけでなく、エディターの批評や市場の状況を伝えている。また、2018年3月からは、「チート・コード(Cheat Codes)」「エイティ・エイト・デイト(Eighty Ate Dates)」「トップ10フライデー(Top 10 Fridays)」といった番組をスタート。いまは、これらの番組のスポンサー契約を売り込む計画を立てている。ただし、ブランドを惹きつけるには、番組が視聴者の関心を集めていることを証明する必要がある。そのため、同社は毎週日曜日に番組スケジュールを発表し、翌週に公開する番組の内容を予告している。
リテンションを高めるため
だが、見たいときに見るという視聴スタイルになじんでいる人々に、定期的な視聴習慣をもたらすことは難しい。
「ユーザーはインスタグラムを決まった日時に利用しているわけではない。『おっと、今日は月曜日か。カーブド(Curbed)のインスタグラムのページに行って、何が載っているのか見なきゃ』と思うようにはならないだろう」と、Vox Mediaの不動産専用メディアであるカーブドで、ソーシャルメディアマネージャーを務めるマーガレット・リン氏は指摘する。
とはいえ、そのカーブドも「ハウス・コール(House Calls)」と呼ばれるエピソード形式の番組を制作し、毎週月曜日にインスタグラムのストーリーで公開している。この番組は、前週のエピソードを見た視聴者をキープするという点で、同社の通常のストーリー向けコンテンツよりうまくいっているとリン氏は話す。ただし、具体的な視聴者数は明らかにしていない。
ストーリーのフィードを管理するアルゴリズムを考えると、平均的なリテンション率を高めることがとりわけ重要になる可能性がある。ストーリーがユーザーのフィードに表示される順序は、そのストーリーの視聴完了率に影響されるからだ。リー氏は、インスタグラムのアルゴリズムがカーブドのストーリーのリーチに与える影響を観察し、ストーリーの種類の違いがどのような影響をもたらすのかについて、Voxの姉妹サイトであるイーター(Eater)と情報交換を行っている。その結果、「エピソード形式の番組では良好な成果が見られる」と彼女はいう。
「エピソード的」な構成
ファッション・カルチャー誌の「GQ」がストーリーでエピソード形式の番組を公開しはじめたのも、オーディエンスのリテンションが理由だ。20個の動画で構成されたストーリー向けコンテンツは視聴者数の「急激な落ち込みが見られる」と、GQのデジタルディレクター、ジョン・ワイルド氏はいう。そのため、GQは「フレックス101(Flex 101)」というファッションアドバイスを行うシリーズ番組を企画するにあたり、動画を数個ずつ4回に分け、1カ月かけて配信することにした。
「これは厳密にはエピソード形式ではない。インスタグラムストーリーのために『アトランタ(Atlanta)』を撮影しているわけではないのだ。だが、コンテンツ全体を何回かに分けて配信するという点で、エピソード的といえる。人々に戻ってきてもらうために、コンテンツを番組化したのだ」と、ワイルド氏は語った。
Tim Peterson(原文 / 訳:ガリレオ)