ワシントン・ポスト(The Washington Post)やチェダー(Cheddar)、BuzzFeedはこの1年間、Twitch向けの特別番組の制作に投資してきた。彼らによると、Twitchは、オーディエンス数を増やす手段としてだけでなく、かなり活発にコメントしているコミュニティから学ぶのにも役立つという。
Twitch(ツイッチ)で動画配信するパブリッシャーが増えてきた。しかも、信じられないような話だが、Twitchで収益も生んでいる。
Amazon傘下のライブ動画プラットフォームであるTwitchが、営業チームを拡大するなかで、ワシントン・ポスト(The Washington Post)やチェダー(Cheddar)、BuzzFeedはこの1年間、Twitch向けの特別番組の制作に投資してきた。パブリッシャーによると、Twitchは、オーディエンス数を増やす手段としてだけでなく、かなり活発にコメントしているコミュニティから学ぶのにも役立つという。パブリッシャーは、インストリーム広告やサブスクリプションを含む、Twitchの直接的なマネタイズオプションからも利益を得られる。
「我々はまだ、かなり実験モードだ。我々にとっては、オーディエンスにもたらすことができるニュースがあり、それを提供することが大事だ。一部のプラットフォームと違って、我々が魅力的だと思ったのは、Twitchには明確なマネタイズの手段がある点だ」と、ワシントン・ポストの動画担当副部長であるフィービー・コネリー氏は語る。
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これらのパブリッシャーはそれぞれ、ライブ配信中や再生時に流せるインストリーム広告を通じてTwitchから直接収益を上げている。BuzzFeedは、一部のコンテンツもサブスクライバーに限定し、サブスクリプションは月額4.99ドル(約536円)となっている。Twitchは、BuzzFeedのゲームブランド「マルチプレイヤー(Multiplayer)」のより大きな収益源になりつつあると、同社のスーパーバイジングビデオプロデューサーを務めるブランデン・スミス氏はいう。同社は、ブランデッドコンテンツの提携を増やす計画だという。マルチプレイヤーは商品も販売しており、商品はTwitchページで入手できる。
チェダーとBuzzFeedの取り組み
チェダーとBuzzFeedは、Twitchでゲームに精力を注いでいる。チェダーは平日に毎日、「チェダー・eスポーツ(Cheddar Esports)」という1時間の番組を配信している。また、BuzzFeedは2018年にはじめて、ストリーミングイベント向けにFacebookライブ動画の代わりとしてTwitchに目を向けたが、それ以来、Twitchを通じてマルチプレイヤーの拡大に重点を置いている。
マルチプレイヤーは通常、週に3回配信し、各放送は1~3時間続くとスミス氏は語る。マルチプレイヤー担当チームには、アイデアを思いついてプロデュースし、プラットフォームにまたがって編集するプロデューサーが3人いる。
「自然に視聴したり、関わったり、検索したりしているコンテンツをオーディエンスに提供することを目指している。Twitchが、確立されたゲームコミュニティを築いてきたことを明確に理解していたので、昨年秋にゲームブランドのマルチプレイヤーを立ち上げたとき、マルチプレイヤー担当チームがYouTubeとTwitchの両方でファンと関わるのが理にかなっていた」と、スミス氏は述べた。
ユーザーとの直接対話が魅力
マルチプレイヤーは基本的に、「スケアド・バディーズ(Scared Buddies)」や「100ベビー・チャレンジ(100 Baby Challenge)」と呼ばれる週1回のシリーズ2本とともに、ゲームプレイを配信する。視聴率はさまざまだ。マルチプレイヤーのエンゲージメントがもっとも高いストリームは、「ザ・シムズ4(The Sims 4)」のゲームプレイで、ライブ配信のユニークビューは3万5000回を超え、3800人以上の視聴者が3時間のストリーム全体を視聴し、4300人以上が同時に視聴しているという。
各ストリームのために、BuzzFeedのチームは、カメラの前やコメントで直接、視聴者に対応している。
「Twitchでは、オーディエンスと直接やりとりでき、瞬時のフィードバックやエンゲージメントが可能で、撮影中にそれをその場で組み込める」とスミス氏は語る。
政治コンテンツでもコメント優先
マルチプレイヤーと同様に、ワシントン・ポストも――ゲームよりも政治ニュースを扱うチャンネルであっても──ストリームでコメントを優先している。
2018年7月には、「プレイング・ゲームズ・ウィズ・ポリティシャンズ(Playing Games with Politicians)」と「ライブ・ウィズ・リビー・ケーシー(Live with Libby Casey)」という2本の番組をスタートした。第1シリーズは4エピソードしかないが、ワシントン・ポストは、ロバート・ミュラー特別検察官による2016年の大統領選へのロシア介入疑惑をめぐる捜査の説明といった、トークショーやイベントの配信を続けてきた。
「柱となる放送を行い、複数のアンカーがいて、複数の撮影地点があったとしても、Twitchには不十分だ。Twitchはコミュニティが軸になっている。我々も、そこで読者から素晴らしい質問を数多く得ており、ミュラー特別検察官による捜査や議会が次に行おうとしていることを説明している」と、コネリー氏は語った。
非常に協力的なTwitchチーム
Twitchのチームは、パートナーに対しても非常に協力的だと、パブリッシャーは述べている。BuzzFeedのスミス氏のチームは毎週、配信前と配信中にTwitchと話しているという。チェダーのCEOであるジョン・スタインバーグ氏は、Twitchは「プラットフォームとチームの熱心な支持者」で、トップページでたびたび、「チェダー・eスポーツ」を取り上げており、それが「多くの同時視聴者」につながっていると語る。
ワシントン・ポストは、TwitchとTikTok(ティック・トック)に投資を増やすなかで、最良の戦略をまだ評価しているところだ。動画チームはTwitchとTikTokについて検討を深めているが、大きな違いは生じ得ないと、コネリー氏は述べた。
「TikTokはきわめて短い動画を扱い、Twitchはきわめて長い動画を扱う。我々がTwitchに興味を持っているのは、優れたビデオを作って、ワシントン・ポスト経由で配信するだけでなく、人々がオンラインでビデオを見ている場所に注意を払っていることを確認することに関心があるからだ」と、コネリー氏は述べた。
Kerry Flynn(原文 / 訳:ガリレオ)