読者の不安、さらに在宅勤務推奨の方針によって、新型コロナウイルス関連ニュースの消費が激増しており、パースリー(Parsely)のデータによると、ページビューが前年より30%増加しているという。 だが、読者の関心を活用する […]
読者の不安、さらに在宅勤務推奨の方針によって、新型コロナウイルス関連ニュースの消費が激増しており、パースリー(Parsely)のデータによると、ページビューが前年より30%増加しているという。
だが、読者の関心を活用することに関して、パブリッシャーは難しい選択に直面している。読者は新型コロナウイルスの報道を非常に心配して見ているが、広告主がウイルスに関連するキーワードをブロックリストに入れているため、広告のマネタイズが難しくなっている。さらに、新型コロナウイルスの影響範囲が広がるにつれ、パブリッシャーは、ウイルス関連のニュースをペイウォールの外側に移動させるよう求める圧力にも直面することになり、収益成長の重要な領域が阻害されつつある。
このやっかいな問題への対応はさまざまだ。
Advertisement
ペイウォールの外に配置
パブリッシャーのなかには、ペイウォール向けに新型コロナウイルスを例外扱いしているところがある。トリビューン・パブリッシング(Tribune Publishing)では、編集者の裁量によりウイルス関連記事をホワイトリストに載せたうえで、読者が月間に読める記事数に制限を設けている。この戦略に精通した情報筋の話では、月間の限度数まで記事を読んでしまった読者でも、ホワイトリストに載せられた記事は読めるという。
できる限り多くの新しい読者にコンテンツを広める機会としてこの状況を扱うパブリッシャーもいる。ウォールストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)は2020年2月、新型コロナウイルス関連の無料コンテンツを集めた独立セクションを立ち上げた。ここでは、ニュース更新のフィードやサイトのQ&Aセクション、毎日の動画をすべて無料で、無制限に利用できる。新型コロナウイルス関連コンテンツが可能な限り最大のリーチを確実に得られるようにするために、ウォールストリート・ジャーナルは、コンテンツを友人や家族と共有し記事の露出を最大化するよう読者に勧めるメッセージをウイルス関連記事に埋め込んでいる。
コンテンツと引き換えに読者からより多くの情報を引き出そうとするパブリッシャーもいる。たとえば、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)では、訪問者がそのサイトにあるコンテンツを読むにはまだ登録が必要だが、新型コロナウイルスに関する報道はペイウォールメーターのカウント対象には含まれていない。同社幹部とは連絡が取れず、その戦略について話すことはできなかった。
プロモーションとして利用
ビジネスに焦点を絞ったパブリッシャーのなかには、違う方法を採ったものがいる。たとえば、映画やテレビ番組に関する記事を扱うラップ(The Wrap)は、2018年に開始した有料のサブスクリプション製品「ラップ・プロ(Wrap Pro)」向けのコンテンツ制作専門ユニットに記者の多くを異動させた。3月13日には、ラップ・プロの購読者は、通常なら読める記事は2~3本のところ、8本の独占記事を読むことができた。
ラップの新型コロナウイルス関連記事がすべて購読者限定になっているわけではないが、ラップの最高経営責任者(CEO)シャロン・ワックスマン氏は、新型コロナウイルスが業界に及ぼす影響についてのラップのもっともインパクトが強い記事が購読契約を増やすのに役立つと期待している。ラップは3月第3週に、購読者が1週間、ラップ・プロに無料でアクセスできるプロモーションを開始した。
「我々が彼らの日常生活にとって不可欠な存在になることを願っている」と、ワックスマン氏は付け加えた。
購読者数も自ずと増加
これまでのところ、情報に対する読者の強いニーズは、ビジネスにとってプラスに働いてきた。アトランティック(The Atlantic)編集長のジェフリー・ゴールドバーグ氏によると、約2週間前にニュース編集室が新型コロナウイルスに最大限フォーカスする方針を決めてから、ウイルス関連記事はメーター制課金でカウントされず、アトランティックの1週間の購読者数増加が最高を記録したという。
ボストン・グローブ・メディア(Boston Globe Media)が所有する健康や科学関連のコンテンツ、スタット・ニュース(Stat News)は、新型コロナウイルスに関する公衆衛生の記事をすべてペイウォールの前に出した。その結果、2020年の最初の2カ月でトラフィックが225%上昇したと、最高売上責任者のアンガス・マコーリー氏は言うが、サイトのニュースレターとデジタル購読者の割合は、トラフィックが急増していた期間中も同じままで推移していた。
シアトル・タイムズ(Seattle Times)のサブスクリプション開始率は、3月前半を通して倍以上になった。シアトル・タイムズでは、ワシントン州でウイルス感染が広まりはじめて以来、ニュース編集室全体でこの話題をカバーしていると、シニアバイスプレジデントのカティ・アーワート氏は語る。
リテンション重視で低更新
この状況がどれほど続くかは明確ではないため、パブリッシャーのなかには、惹き付けた購読者を保持する方法について熟考しているところがある。ザ・ジャーナル(The Journal)のメンバーシップ担当ゼネラルマネージャー、カール・ウェルズ氏は、新型コロナウイルス報道がもたらす影響を受けて、通常よりも低い更新レートをメンバーに提供することを模索しているという。
「これは祝えるようなことではないという意識は持っている」とウェルズ氏。「だが、人々が必要とする何かを我々が提供できることは嬉しいと思う」。
Max Willens(原文 / 訳:ガリレオ)