ポッドキャスト広告のバイヤーはまだ、クライアントによる顕著な予算削減を目の当たりにはしていない。ッドキャスト広告のバイヤー4人がDIGIDAYに語ったところでは、顧客の予算は削減されておらず、ブランドのポッドキャスト広告への支出はむしろ増加し続けているという。
ポッドキャスト広告のバイヤーはまだ、クライアントによる顕著な予算削減を目の当たりにはしていない。だが、「輝かしい新媒体」としてのポッドキャストの時代は終わり、落ち着きが見えてきたのかもしれない。
金利上昇やインフレ、経済をめぐる全体的な不透明感を受けて広告主が予算を精査しているため、広告支出はこれまで全体的に鈍化している。しかしながら、ポッドキャスト広告への支出は、まだそうした調整局面に入っていない。ポッドキャスト広告のバイヤー4人がDIGIDAYに語ったところでは、顧客の予算は削減されておらず、ブランドのポッドキャスト広告への支出はむしろ増加し続けているという。
2024年までに5300億円規模の業界になると予測される
(中立的な立場というわけでもないが)ポッドキャストのホスティングとマネタイズを行う独立系プラットフォームであるエーキャスト(Acast)が1月31日に発表した新たなリポートによると、調査対象である500のマーケターおよび広告主のうち65%は、ポッドキャストマーケティングへの支出を前年比で増やす見込みだ。以前にポットキャスト広告を購入したことがあるマーケターの場合は、83%がポッドキャスト広告への支出を前年比で増やす見通しだという。
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「ポッドキャスト広告は成長を続けており、2024年までに40億ドル(約5300億円)規模の業界になると予測されているので、広告主が関心を抱いているのは明白だ」と、エーキャストで広告イノベーション担当グローバル責任者を務めるエリ・ディミトロラコス氏はメールで述べている。
アドバイヤーがポッドキャスト広告について依然として楽観的なのは事実だ。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック中にポッドキャストをめぐって渦巻いた熱気が静まったことで、ポッドキャストが輝かしい新たな場ではなく、ブランドが支出可能な多くのチャネルのひとつに過ぎないと考えられているようだ。
「輝きは幾分薄れてきた」とUMで統合投資担当シニアバイスプレジデントを務めるモリー・シュルツ氏はいう。「それはそれでいいが、『これはほかとは違う、新しいものだ』という印象が薄れてしまう。ただし、クライアントは必ずしも新しいものを必要としていない」。
ポッドキャストへの支出は依然増加中
「ポッドキャストへの広告料は前年比で増加している」と、ホライゾン・メディア(Horizon Media)のバイスプレジデントでアドバンスト・デジタルオーディオ担当マネージングディレクターを務めるマリア・ターリン氏は語る。ターリン氏は、ポッドキャスト分野で既存顧客と新規顧客の両方によるポッドキャスト広告への支出の増加を目にし続けているが、それを示す正確な数字は挙げなかった。
オーシャンメディア(Ocean Media)でポッドキャストおよびデジタルオーディオ戦略担当ディレクターを務めるクリステン・コセオ氏は、顧客がリニアTVのようなチャネルから手を引いてポッドキャストに予算を再配分しつつあると述べた。「今のところ、ポッドキャストはパフォーマンスの観点から見て全顧客にとって最高だ。(ポッドキャストやストリーミングオーディオで)成功したことがないという顧客はまだ1社もないと思う」。
コセオ氏は、「オーシャンメディアは2021~2022年のあいだに、オーディオ広告への支出を4倍に増やした」と語ったうえで、「昨年のような前年比の成長は見込めない」と話す。それについて、「クライアントは現在『まだ過度に慎重』であり、ほかのチャネルで見られる軟弱さがポッドキャスト空間にも波及する可能性が高い」と理由を述べつつ、「それでも、ポッドキャストへの支出額は昨年をさらに上回るだろう」と続けた。
CMIメディアグループ(CMI Media Group)の顧客の場合、昨年、ほかのチャネルでは支出を削減しているが、ポッドキャスト広告への支出は「10倍になった」と同社のイノベーション担当シニアバイスプレジデントであるマーク・パパス氏はいう。
広告主は現時点で新たな予算を組むことには慎重なままだが、ターリン氏によると、顧客はまず試験的に低予算をポッドキャストにあて、その後に「その予算を3倍」にし、四半期または年間のメディアプランにポッドキャストを追加しているという。ペロトン (Peloton)とスリープナンバー(Sleep Number)の2社は、ポッドキャストへの予算をホライゾン・メディアに最近回した既存顧客だ。「慎重にスタートした顧客が、その後(成果に)満足しているため、当社の予算については方針を堅持している」と同氏は語る。
ターリン氏によれば、昨年の1月から2月はブランドの認知度アップの仕事をしていたのに対し、今年は最初からポッドキャストへの年間予算を組んでいる成果重視のクライアントが増えているという。
それなのになぜ縮小するのか?
だが、レイオフや番組の中止、コスト削減など、ポッドキャスト制作分野で起きている縮小と、一方で広告主の楽観的な見方は、どのように折り合いを付けられるだろうか?
ディミトロラコス氏は、「これは制作会社が数百万ドルの大規模な最低保証契約から離れつつあるからだ」と確信している。とはいえ、パンデミック中に結ばれたそうした大規模契約が次第に減少するなかで、知名度の低い(場合によってはオーディエンスも少ない)人材を起用した番組での広告は、広告主にとって「より魅力的な」料金になっている、とコセオ氏は指摘した。
米DIGIDAYがインタビューしたバイヤーは、新番組や既存番組への投資が減少しているかもしれないと最近報じられているが、利用可能な広告インベントリー(在庫)は十分にあると語った。パパス氏によると、スポティファイ(Spotify)では年初時点で、ポッドキャスト番組の数が昨年の440万から550万に増加しているという。
コセオ氏の見るところでは、オーシャンメディアの顧客の場合、予約された番組数は減少しておらず、予算がさらに多くの番組に分散されているわけではないという。
ポッドキャスト広告用のターゲティングツールや測定ツールの開発により、広告購入プロセスが向上しただけであり、とくにダイナミック広告挿入が増えている、とシュルツ氏は述べた。
事実、上位のポッドキャストにおけるアップフロントコミットメントの予約をめぐり、今は激しい競争が繰り広げられている、とターリン氏は語る。「(ターリン氏のチームが直面している最大の課題は)すぐに大急ぎで予約してから、第2四半期から第4四半期までの戦略策定を行うことだ。最良の広告枠を最も有効なアップフロント料金で手に入れるために今予約したいため、そうしたことをすべて今すぐ行おうとしている」。
[原文:Podcast ad buyers have yet to see a slowdown]
Sara Guaglione(翻訳:矢倉美登里/ガリレオ、編集:島田涼平)