Facebookジャーナリズム・プロジェクト、開始1年の評価:賛否両論のパブリッシャーたち

Facebookは1年前に「Facebookジャーナリズム・プロジェクト(Facebook Journalism Project)」を立ち上げた。元NBCニュースのアンカーで、Facebookのニュースパートナーシップの責任者に新たに就任したキャンベル・ブラウン氏が率いるこのプロジェクトは、有名ニュースパブリッシャーとの関係を円滑化する取り組みとして注目を集めた。Facebookは当時、フェイクニュースの拡散、フィルターバブルへの加担、Facebookにおけるパブリッシャーのマネタイズへの取り組みの不足などを非難されていた。

そのようなプロジェクトに内在する課題は、パブリッシャーは一枚岩ではないということだ。パブリッシャーのビジネスモデルはさまざまで、Facebookに求めるものがそれぞれ違う。しかしブラウン氏は年に2回、パブリッシャー数十社を呼んで、ローンチ前の製品を披露してパブリッシャーからフィードバックをもらい、また、それまで名前しか知らなかった製品幹部たちと親睦を深めてもらう場を設けた。食事は素晴らしいものだったし(もちろんオーガニックフード)、また、ブラウン氏のアパートメントで開いたパブリッシャーのためのカクテルパーティには、ほかならぬFacebookのパートナーシップ担当VPの、ダン・ローズ氏が出席し、厳しい追及に対応した。一部の参加者からすると、Facebookが話し合いを増やしていること自体が素晴らしいことだった。

しかし、会話は増えたが、効果はそこまでではない。有意義な形になっておらず、一番の狙いは批判的なパブリッシャーを懐柔するPR活動ではないかという厳しい声もある。素晴らしい昼食会でも、力を持っているのは依然としてFacebookなのだ。

媒体社とFacebook、両者の意見

ローカルデジタルパブリッシャーのスピリテッド・メディア(Spirited Media)の創業者でCEOのジム・ ブレイディ氏によると、この1年、Facebookとは1対1の会議やグループ会議をなんども実施し、以前よりもはるかに反応がよくなっている。「しかし、本当にローカルジャーナリズムのためになるような製品の変化は、多かったとは言えない」と同氏はいう。「やはり、ローカルジャーナリズムの問題を解決するのは、Facebookではなく我々なのだ」。

一方、政治経済のパブリッシャー、アクシオス(AXIOS)の場合、Facebook利用はマネタイズではなくオーディエンスへのリーチが中心であることから、このプロジェクトはFacebook製品の透明性の向上の点で「自分の期待通り」だと、オーディエンスとプラットフォームのSVPを務めるケンドラ・タッカー氏はいう。タッカー氏は、招待者のみのパブリッシャー会議に2回出席した。

「Facebookが作る製品に対するコントロールと発言権が高まったか? それはわからない。ただ、少なくとも議論の一部に声を届けている」とタッカー氏は語った。

Facebookはプロジェクトの発表のなかで、3つの点で進めていくと語っていた。1つ目は、ニュース機関との共同製品開発。読み込みが速い記事フォーマットであるインスタント記事(Instant Articles)の改善や、サブスクリプション製品のローンチなどを挙げていた。2つ目は、ジャーナリスト向けのトレーニングとツールの提供で、ソーシャルアナリティクスツールの「クラウドタングル(CrowdTangle)」はこれにあたる。3つ目は、デマニュースの抑制といった、読者がフィクションと事実を区別できる情報を提供する取り組み。ブラウン氏は2017年のインタビューで、パブリッシャーの擁護者を自認していた。プロジェクトによって現在、Facebook社内もFacebookとニュース業界の協力も大きく変わり、重要な進展を遂げているとブラウン氏は語っていた。

「Facebookジャーナリズム・プロジェクト(以下、FJP)によって、社内の取り組みもニュース業界との協力も一変した」と、ブラウン氏は声明で述べている。「我々はこの1年でパートナーたちから多くのことを学び、マネタイズやサブスクリプション対応の改善、パブリッシャーのブランド認知やニュースリテラシーの向上、データインサイトなどのトレーニングプログラムやツールへの投資などの領域で、ともに著しい進歩を遂げた。同時に、Facebookはフェイクニュース、クリックベイト、および扇動表現の対策に大きく踏み出した。FJPはこれからの1年、こうしたよい点を引き続き高め、良質なジャーナリズムがFacebookで繁栄できるようにすることをめざす。さらにやるべきことはわかっており、そこに尽力している」。

わずかながら進む関係改善

Facebookに耳を貸してもらえていなかったところを中心に、多くのパブリッシャーが、以前より話を聞いてもらえるようになったと思うと話している。

「見事なサービスを提供し、我々とオーディエンスをつなぎ、また素晴らしい形のメディアを生み出してくれている。パブリッシャーはかなり扱いが難しい集団だ。(パブリッシャーと)オーディエンスとのコミュニケーションやマネタイズを実現した功績を(Facebook幹部たちは)十分に認められていないのではないか。業界全体からの非難をただじっと受け入れている」と語ったのは、ビジネスインサイダー(Business Insider)の最高コンテンツ責任者のニコラス・カールソン氏だ。BuzzFeed編集長のベン・スミス氏は、ブラウン氏は「実力者」だとしたうえで、「Facebookのエコシステムが質の高い、公開されたジャーナリズムを必要としていることをFacebookははっきりと理解している」と語った(一方、BuzzFeedのCEOのジョナ・ペレッティ氏はそこまで融和的ではなく、FacebookやGoogleはパブリッシャーに分配する収益を増やすべきだと公言している)。

ローカルパブリッシャーとの関係改善は、この取り組みの重要な部分だった。Facebookはクラウドタングルをパブリッシャーに無料で提供したが、高額なベンダー費用を払う余裕がないローカルパブリッシャーには、特に助かることだった。ローカルニュースのパートナーシップの数が、3件に増えた。大したことではないかもしれないが、以前はたった1件だったのだ。また、ローカルニュースのネットワークであるパッチ(Patch)のCEO、ウォーレン・セント・ジョン氏によると、パブリッシャーへの分析スタッフのサポートが充実してきている。

疑わしいテコ入れの有効性

しかし、パブリッシャーの支援以外の点に関心が高いFacebook内の上役たちに、ブラウン氏の方針がどこまで共有されているのかと、ひそかに怪しむ声がパブリッシャーのあいだにはある。パブリッシャーは大半が、Facebookからのデータもトラフィックもお金も増加を望んでいるが、いずれも大きな改善は見られていない(これはひとつには、プロジェクトの1年目は、米国や世界を回って会合でパブリッシャーの声を聞き、優先順位を明確にするというのが大きかったからであり、2018年は、Facebookにおけるパブリッシャーのロゴの露出など、テストしたことの改善や展開がプロジェクトの中心になるとFacebookは説明している)。

とくに目覚ましいプロジェクトの成果のひとつはサブスクリプションだ。Facebookは2017年秋、パブリッシャー10社とサブスクリプションのテストを実施。登録者に関する全データへのアクセスをパブリッシャーに提供し、売上をすべて取らせるなど色をつけた。ただ、Facebookがパブリッシャーに、多数の大手パブリッシャーが避けているインスタント記事の利用と、月に無料記事10本のメーター制を求めたため、 ニューヨーク・タイムズ(The New York Times:以下、NYT)をはじめとして拒否するところがかなりあった。また、このテストは、Appleが協力を拒んだためAndroidデバイス限定となり、効果が限定的だ。

サブスクリプションのテスト以外には、パブリッシャーからのフィードバックを受けて、インスタント記事の強化が実施された。Facebookは、広告料と広告の頻度を引き上げて、パブリッシャーが稼ぎを増やせるようにした。パブリッシャーが通常のモバイル記事と比べたインスタント記事の効果をテストできるツールを導入した。また、パブリッシャーがインスタント記事をほかのプラットフォームで簡単に公開する方法を開発した。

しかし、多くのパブリッシャーからすると、これは大きく的を外した変更になっている。Facebookが現在、今後を動画に託し、ニュースフィードにおいてテキストを犠牲にして動画を推進するなか、インスタント記事は数が減少しているのだ。NYT、ハースト・マガジン(Hearst Magazines)、ブルームバーグ・メディア(Bloomberg Media)などの有名パブリッシャーが、インスタント記事から撤退したり、利用を中止したりしており、強化策もパブリッシャーを思いとどまらせるには至っていない。こうしたテコ入れの有効性は疑わしい。

新しい機能も「張り子の虎」

Facebookはパブリッシャーの動画に広告を導入したが、その5カ月、参加しているところは、大した設けにはなっていないとしていた

2017年のもうひとつの注力ポイントだった誤情報の拡大の抑制も、障害にぶつかっている。Facebookは「偽アカウントや騙そうとしているアカウント」を大量に停止し、また、クリックベイトと誤情報の拡大を抑制するためランキングを変更したことを明らかにしている。

しかし、ガーディアン(Guardian)の報道によると、フェイクニュース拡大の阻止に取り組むようにFacebookから協力を求められたジャーナリストたちは、Facebookが用意したファクトチェックのツールはおおかた役に立たないと話している。たとえば、Facebookは2016年12月、「議論のある記事」というタグを導入し、捏造されたニュース記事をユーザーが警告できるようにした。しかし、期待していたほど機能しておらず、むしろ害のほうが大きいかもしれないということを認めて、約1年でこのタグを引き下げた。現在は、関連記事を表示し、記事に文脈を補足するようにしている。Facebookによると、タグよりもこちらの方がフェイクニュースのシェアの減少につながっている。

期待できる協力は限られている

データの共有もまだ途上だ。パブリッシャーと協力してデータツールを開発しようと、パブリッシャーのインサイトとツールのチームを新たに結成したとFacebookはしているが、新しいツールはまだ発表されていない。

ビジネスモデルがパブリッシャーとは根本的に食い違っているプラットフォーム大手に期待できる協力は限られていると、パブリッシャーたちは実感している。

「FacebookもGoogleも問題を解決してはくれないということを、パブリッシャーは理解する必要がある」とパッチのCEO、セント・ジョン氏は語る。「FacebookとGoogleがローカルジャーナリズムを救うために自分たちのビジネスモデルを変えることはない。両社はパブリッシャーに大量のトラフィック送り込んでいる。両社の広告ビジネスとターゲティング能力は、そもそもパブリッシャーにとって脅威となるものだ。パブリッシャーはそのトラフィックに依存し、GoogleとFacebookは、デジタル広告費の大部分を手中にしようとしている」。

Lucia Moses (原文 / 訳:ガリレオ)