スマートスピーカー 、ニュース企業にとっては新鮮で魅力的

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家庭用の音声アシスタント、いわゆるスマートスピーカーは、一般消費者側から見ても、メーカー側の収益を見てもまだ黎明期にあるといえるが、パブリッシャーは、Amazon EchoやGoogle Homeなどが急速に普及し、今後も年月とともに多くの人が活用していくと見ており、人員の増強やコンテンツの制作に力を入れている。

「これは、買ったはいいが地下室で放置状態のエアホッケー台とは異なる」と、アメリカのラジオネットワークのNPRで新規プラットフォームのパートナシップ関連部門のバイスプレジデントを務めるジョエル・スカーマン氏は語る。

これまでは、こうした製品に関わる人々の主な仕事といえば、音声アシスタント向けのコンテンツを用意することであった。以前のテレビやインターネットがそうであったように、メディア企業は既存のニュースや情報の最低限のフォーマット変更だけを行い、それを音声アシスタントに搭載してきた。だが現在パブリッシャーは、そのデバイス独自の音声を持たせることに興味を示しており、編集担当の人員も増やしはじめている。

各企業の取り組み

NPRは、音声アシスタントの担当者を6名配置し、編集を専任で担う役職を設けるべく準備中だ。ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)は、タイムズ紙の存在をスマートスピーカー上でも確かなものにするため、音声編集の求人を行なっている。その求人の内容によると、その役職に就く人物は、特別なプロジェクトの一部を担当し、試作機上でのテストや、こうしたプラットフォームで最初の音声体験を公開する役割を担うという。

アルジャジーラ(Al Jazeera)も編集部門にシニアプロデューサーを配置したばかりで、どのニュースをデバイスに入力させるかの判断と、こうしたデバイス向けに特化したコンテンツの制作に取り組んでいる。ワシントン・ポスト(The Washington Post)のニュース編集室には、2018年初頭にオーディエンス開発部門から派生した6名体制の音声チームがあり、ホームアシスタントやポッドキャスト向けの音声によるストーリーテリングに注力している。

ブルームバーグメディア(Bloomberg Media)では、AppleHomepod、Amazon EchoやGoogle Home向けに、数名がマーケットミニット(Market Minute)などのコンテンツに取り組んでいるが、チーフプロダクトオフィサーのジュリア・ベイザー氏によると、そこには「かなりの」人数が関わっているという。

パブリッシャーは、すでにこうしたデバイス向けに、文章コンテンツを自動的に音声に変換したり、または既存のポッドキャストなどの音声を再利用して配信している。現在、パブリッシャーはこうしたデバイスに専任で取り組む人々とともに、独自のコンテンツ制作をはじめている。これらの多くは通常のポッドキャストよりも尺が短いが、毎日の頻度で更新されている。ワシントン・ポストには自身の「デイリー202(Daily 202)」や「レトロポッド(Retropod)」をスマートスピーカー向けに短く編集したものがあり、それと同様にNPRも自身のポッドキャスト番組「プラネットマネー(Planet Money)」をスピンオフさせた「インジケーター(The Indicator)」を毎日配信している。

直面している課題

これらのパブリッシャーにとって、これで問題の多くが解決したというわけではない。プラットフォームへのコンテンツ投入にリソースを割く前から予算面で焦げ付いている場合は特に、オーディエンスも収益も結びつかずただ失望するだけ、ということも起こっている。

パブリッシャーの記事は、表面上はこうしたデバイスに関するユーザーの基本的な質問に答えるもの、という見方もできるが、パブリッシャーが売り物以外の何かをこのデバイス向けに配信できるようになるのはいつになるだろうか。現在、パブリッシャーは従来のポッドキャストと同様に番組のスポンサーシップを販売したり、番組内に広告を挟むことができているが、得られている収益は微々たるものだ。メーカーは、ユーザーが嫌がらずに広告を挟み込むためにはどうすれば良いのか。そしてこの広告モデルはどうなっていくのだろうか。今後、画面を搭載したデバイスが出てきた場合には、広告機会はどのように変わっていくのだろうか。ユーザーがコンテンツを発見しやすく、このデバイスの魅力を最大限に活用できるようになる時がくるとすれば、それはいつ、どのように実現できるだろうか。

「マネタイズに関してはまだまだ解決できていないことだらけだ。(コンテンツの)見つけやすさは、いまも大きな課題だ」と、ワシントンポストの音声関連部門のディレクターを務めるジェシカ・スタール氏は語る。「スマートスピーカーにできることはたくさんあるが、何ができるのかを人に伝えるのは難しい」。

デバイスメーカーも増え、動画再生用にディスプレイを備えたモデルも出てきているなか、デバイスメーカーはユーザーデータの共有に対して用心深くなっている。パブリッシャーは、ひとつの特定のデバイスにどの程度の投資を行えばいいかの判断が難しくなっているが、そこに賭けている。

ニュース企業の希望

eマーケター(eMarketer)によると、スマートスピーカーは携帯電話以降のテクノロジーでは最速のスピードで普及しており、2016年から2020年に、アメリカでのスマートスピーカーの利用者数の年間成長率は47.9%にまで伸びると予想されている。NPRとエジソンリサーチ(Edison Research)によるザ・スマート・オーディオ・レポート(The Smart Audio Report)によると、アメリカ人の18%がスマートスピーカーを所有しており、以前よりも頻繁に利用するようになった人の割合も51%だという。

同報告書によると、スマートスピーカー利用者にとって大事なのはニュースであり、利用者の73%が、ニュースや時事問題がスマートスピーカーでもっとも興味のある活用方法だという。

「周囲の声が大きすぎて無視できるような状況ではない。だが、デバイスメーカーのデータ共有が不十分なため、まだ大きな信頼を寄せるには至っていない」と、アルジャジーラでビジネス開発部門のシニアバイスプレジデントを務めるマイケル・ウィーバー氏は語る。「我々の命題はディストリビューションの増強であり、新しいデバイスを手にした人がまずやるのは、ニュースを聞くことだ。ニュースのパブリッシャーはその点をよく考える必要がある。これはIoTへの入り口だ。5年後には、家の建物に話しかけているだろう」。

Lucia Moses(原文 / 訳:Conyac