ポストFacebook時代、ニュースサイトたちの不確実な未来:マイクが直面する苦悩

2015年6月、メディア企業マイク(Mic)は1700万ドル(約18億円)の出資を受けて喜びに満ちていた。このミレニアル世代をターゲットにしたニュースサイトは、ミズーリ州のファーガソンで起きた警官による銃殺事件とそこに底流する人種差別問題、そしてゲーム業界にはびこる女性差別の問題といった堅いトピックを追いかけた。マイクの成長のために尽力してきた50人の従業員たちのために、ニューヨークのチェルシー地区にある高級ナイトクラブ「マーキー(Marquee)」でグレイグース(Grey Goose)スポンサーのパーティを開いた。赤い革のソファーやLEDのスクリーンが並ぶこのパーティは、共同ファウンダー兼CEOであるクリス・アルトチェク氏の自宅で、かつて催されたパーティと比べると大きなステップアップだった。マイクが創立されたのは2011年だ。「自分たちが何かカッコよくて素晴らしいことをしているような気分だった」と、元従業員のひとりは語る。

これはデジタルメディア業界で良くある光景だ。デジタルのスタートアップが、Facebookのアルゴリズムに乗っかる形で、ミレニアル世代向けのニュースを提案し、出資を受ける。しかし、Facebookがアルゴリズムを変更して、彼らの基盤を破壊することで、彼らのビジネスも崩壊するという具合だ。業界人にとってマイクは、Facebookの戦略変更の犠牲となった会社のひとつに映っている。リトル・シングス(LittleThings)Attnのあとに続いた形だ。Facebookに過度に依存しており、2017年4月の段階では1億9200万であったビュー数も、今年3月には1100万にまで落ち込んだ(クラウドタングル[CrowTangle]調べ)。

メディアエージェンシー、ウェーブメイカー(Wavemaker)の体験・コンテンツ・スポンサー部門責任者であるノア・マーリン氏によると、ソーシャルメディアにおける状況が変化するなかでマイクが、小規模なプレイヤーとしての基盤を見つけられるかどうか、そして、ほかのミレニアル世代向けのニュースサイトと差別化を図れるかどうかが問題だ。

「彼らのやり方で続けていけるのかどうか、想像するのは難しい。彼らがいるニッチでも、頭一つ飛び出すのは困難だ。『より深い洞察でもってミレニアル世代に毎日のニュースを届ける』と宣言しているメディアは、ほかにもたくさん存在する。BuzzFeedはリアルな、質の高いジャーナリズムを量産する方向へと転向した。NowThis(ナウディス)にとっても、これ(ミレニアル世代へのニュース配信)は彼らのニッチだった。そんななか、マイクは差別化が難しくなる」と、マーリン氏は言う。

マイクのアルトチェク氏はまったく異なる未来図を描いているようだ。彼によると、これまで合計6000万ドル(約65億円)の出資を集め、直近の四半期は、これまででもっとも良い四半期であり、2019年には収支が合うレベルに達するとのことだ。これはディスプレイ広告から、ゼネラル・エレクトリック(GE)やウォルマート(Walmart)といった会社向けの長期ブランデッドコンテンツ契約へとシフトしたことが要因と述べる。タイトルでオーディエンスにクリックさせるスタイルがマイクの初期のスタイルだったが、最近ではワシントン・ポスト(The Washington Post)からコリー・ハイク氏やケリー・ラウワーマン氏といったベテランのジャーナリストを採用し、質の高いジャーナリズムを届けることにフォーカスを置いている。Facebookのアルゴリズム変更に備え、利益を出す態勢へと移行するために昨夏、マイクは25人を解雇している。

「自分たちの個性を捉えて、それをオーディエンスに対してもっとも成功をおさめる形に変えることにフォーカスしはじめた。我々にとっては悲惨な状況とは思っていない。というのもオーディエンスは、こういった種類のジャーナリズムを求めているからだ」と、アルトチェク氏は米DIGIDAYのポッドキャストで語った。

サイトのトラフィックは急激に减少

しかし、タイトルでオーディエンスを「釣る」スタイルから離れるのが遅かったと論じる声は、社内外で聴こえてくる。彼らはマイクがやろうとしている高品質のジャーナリズムに伴う高コストを賄うことは不可能だろうと考えるのだ。具体的な数字を直接、もしくは間接的に知っている情報源は、米DIGIDAYに語ってくれた。それによると、今年初頭の時点では、2018年後半には資本が切れてしまうペースだという。社内のトップも揺れている。会社の社長であるジョナサン・カーソン氏は1年間勤務をしてきたが、会社を去ることが決まっている。後任はまだ決まっていない。

アルトチェク氏からは本稿へのコメントはもらえなかったが、広報担当者は次のように述べている。「キャッシュの観点からはマイクは非常に強い状況にあり、2019年には収支が合うペースだ。我々のビジネスは非常に堅硬な基盤のうえになりたっており、それとは異なる言説はすべて誤っている」。

変化を繰り返すメディア業界で生き残るために転向を行っているのはマイクだけではない。しかし、ほかのパブリッシャーたちは、すでにニュースレターやターゲットFacebook投稿といった手法を通じて、サイトへのトラフィックを増加させる対策を取ってきた。マイクのサイトへのトラフィックは過去1年で急激に减少している。コムスコア(comScore)によると、ユニーク訪問数は1年前の1700万から500万へと下がっているという。

その他のセグメントで何らかの数字増が見られているのであれば、サイトトラフィックの减少も相殺されて結果的には問題がないという状況もあり得る。しかし、マイクのソーシャル上のフォロワーの多くは、Facebookから来ていることは変わっていない。1月の段階で5100万人だったFacebook上のフォロワー数もなんと、3月には1600万人にまで减少した。しかも、そこからのビュー数をほかで補完できてもいない。YouTubeのビュー数はこの期間に2倍に増えているが、チューブラーラボ(Tubular Labs)のデータによるとこれも100万をまだ越えていないレベルに過ぎない。

180509_mic

マイクやその他デジタルパブリッシャーの月間ユニーク数値(単位:1000)。Source: comScore

 

マイクはこれまで、Apple NewsやFacebookのインスタント記事、そしてライブビデオ、さらにはBuzzFeedの真似のようなタイプのコンテンツに至るまでプラットフォーム主導の対策に積極的に取り組んできた。しかし、こういった対策のどれも、パブリッシャーへの継続した収益源にはならなかった。マイクはHuluのためのドキュメンタリー・シリーズを制作中で、ほかのビデオパートナーシップも存在しており、発表を待っている状態だという。しかし、シンジケーションの外で配信されるビデオの収益は、通常は低い。

飽和状態のニュース市場

マイクのビジネスモデルは、彼らのエディトリアルのスタイルとマッチした、ブランデッドコンテンツを作ることだ。しかし、サイトのオーディエンスやFacebookにおけるリーチが减少していることで、このビジネスモデルにも懐疑的にならざるを得ない。ブランデッドコンテンツは、多くの労働を必要とし、利益を上げるのも難しい。マイク自身が抱えるトラフィックが少なくなればなるほど、広告主が求めるリーチ量を達成するため、Facebookへお金を支払うことになる。それによって利益マージンも減る。

コムスコアの数字にはソーシャル上の配信が反映されておらず、ニールセン(Nielsen)によって測定された数値では、実際は月間5000万のユニーク訪問が平均して記録されているとマイクは主張する(その数値でも昨夏に主張していた7600万からは減っていることになる)。

しかし、広告バイヤーがサイトの評価に使うのは依然としてコムスコアの数値だ。サイトに直接訪問するユーザーは、ページの訪問数も滞在時間も平均して長くなる。

「コムスコアの正確性について文句を言うことはできるけれど、相対的には役に立つ数値だ。サイト自身にトラフィックを持つことは、より重要になってきている。重要度が下がっているということはない」と、マーリン氏は語った。

Lucia Moses(原文 / 訳:塚本 紺)