eスポーツ 視聴者は急増したが、広告主の反応は冷ややか:「大きなニッチ分野に過ぎない」

コロナウイルスによる自宅待機が続くなか、eスポーツのオーディエンス数は増えているかもしれないが、広告市場はスローダウンしている。そのため、オーディエンスがいても収益につなげることに苦労している。

Twitch(ツイッチ)は先月、視聴時間11億時間を叩き出した。これは彼らのプラットフォーム9年の歴史のなかでも最大となる。eスポーツの新規事業群も、現実世界でスポーツが行われていないなか、オーディエンスの数を増やしている。フォーミュラ・ワン(Formula One)のeスポーツデビューであるバーチャルグランプリ(Grand Prix)は320万人のオンラインオーディエンスを集めた。YouTube、Twitch、Facebook上で3月末に配信され、最大で35万9000同時ストリーム回数を記録した。

通常であれば、このようなオーディエンスの移動があれば、広告主たちもマタタビを追いかける猫のように動くものだ。しかし、コロナウイルスは広告主にとっても普段とは異なる課題を生み出している。

メディア予算は常に変化を見せており、広告主が費やす資金はeスポーツのような新規分野よりも検索のようなこれまでに何度も試されてきた分野に注がれる傾向にある。チポトレ(Chipotle)、スバル(Subaru)、チュッパチャップス(Chupa Chups)といった広告主たちはパンデミックにおいて現実のスポーツからeスポーツへのオーディエンスの移動をフォローしているものの、規模としては軽いアプローチとなっている。

「eスポーツはこれまで以上にメインストリーム化しているものの、我々のクライアントの多くにとってはまだ、大きなニッチ分野に過ぎない」と、ホライズン・メディア(Horizon Media)のスポーツ動画投資部門シニア・バイスプレジデントであるアダム・シュワルツ氏は語った。

低リスク高リターンの戦略

eスポーツのチームやリーグとの契約という点では、トーナメントの賞金提供、無料提供のプロダクト、ストリームへの資金提供といった低リスク高リターンの戦略を広告主たちは採っている。コンテンツ制作をサポートするアプローチであれば、eスポーツのスポンサーシップの中心で大きく目立つことはなくとも、オーディエンスからマーケティング行為としてシニカルに捉えられる可能性は低くなる。

eスポーツ関連エンターテイメント企業のファナティック(Fnatic)、最高オペレーティング責任者であるグレン・カルバート氏は「より高い数値目標を達成する、というよりはブランド価値認知をより高める助けとなること。いまマーケターたちを交わしている話は、そこにフォーカスが据えられている」という。会話の具体的な内容は広告主ごとに異なるものの、売り上げを中心としたプロモーションからより助けとなるトーンへというシフトが幅広い企業で見られていることは励みになると、カルバート氏は言う。

ファナティックのコマーシャル戦略もそれに合わせて転換された。通常であればコンテンツのリーチが広告主にとってどれほどメディア価値を生むことになるかがコマーシャル契約の基盤になっている。「いまは異なる会話が持たれている。コンテンツのトーンがファンにとって適切であるか、適切であるのであれば、エンターテイメント部分のコストが賄われている限りは、私たちは問題ない」。

eスポーツへの投資をためらう理由

しかし、ファナティックのような会社とこういった会話を持っているマーケターと同じだけ、現実のスポーツがいつ戻るかがわからない限りは、そのようなマーケティングをためらうマーケターがいる。

「我々と協働する広告主のほとんどが予算を横においておき、いつ現実のスポーツ観戦が戻ってくるのか、リーグたちの判断を待っている。その予算をどのように使うかは、それがはっきりするまで決めないわけだ」と、ホライゾン・メディアのスカウト・スポーツ・アンド・エンターテイメント部門のマネージングパートナー、かつエグゼクティブ・バイスプレジデントであるマイケル・ニューマン氏は言う。

eスポーツのリーチに関して、広告主たちはまだ疑問や質問を抱えている。それに回答するうえで、放送会社たちの役割は非常に重要だ。広告主たちがメディア支出を抑えようとしているなか、CPMが10から30ドルのあいだにあるeスポーツ放送を検討することは意義があり得る。

ターナー・スポーツ(Turner Sports)やESPNなど、いくつかの放送局はFIFAのようなゲームからコンテンツTV放映権を購入している。しかし、そこまでの取り組みを見せていない放送局が多い。さらに、コロナウイルスはメディアのスケジュールに穴を空けてきており、フォックス・スポーツ(Fox Sports)のような放送局が慌ててeスポーツでその穴を埋めることになっている。とはいえ、新しいスポンサーシップやパートナーシップを駆使してオーディエンスを収益につなげるのは時間がかかる。特に通常のメディアミックスの外側に出ざるを得ないブランドたちにとっては顕著だ。Twitchとパートナー関係を組んだターナーは、1月にeスポーツとは直接関係のないバラエティ番組でeスポーツコーナーをローンチした。彼らはカルチャーとライフスタイルコンテンツでeスポーツ関連の投資を行い、また注目が集まっているなかで広告主を直接eスポーツ自体に結びつけようとしている。

とりあえず姿を消さない広告主

「パンデミックがはじまってからの短期間において、(広告マーケットから)姿をとりあえず消さないことにした広告主たちは、これらのライブ体験に興味を持って注意を向けている」と、ターナースポーツ・デジタル(Turner Sports Digital)とワーナーメディア(WarnerMedia)のeスポーツ営業戦略の責任者であり、クライアント・パートナーシップ部門シニア・バイスプレジデントのセス・ラデッチー氏は言う。

「消費財、飲料品、デリバリーサービス、そして保険といったカテゴリーは、新しく、カッコよく、成長を見せているメディアチャンネルに引き寄せられている」。

スポーツ関連のネットワークはeスポーツに慌てて飛びついているものの、メディアバイヤーたちに対して新しいコンテンツを売り込んではない。フォックス・スポーツの場合、これまでの使われなかった在庫の対応とするか、もしくは将来の損失を軽減するために既存の広告主たちをそこに投入している。

Seb Joseph(原文 / 訳:塚本 紺)