YouTube で成功しつつある、米出版大手のハースト:番組制作にさらなるリソースを投入

DIGIDAY無料メルマガに登録しませんか?

平日朝9時にマーケティング業界の最新情報をお届けします。利用規約を確認


これも時代の趨勢か。米出版大手のハースト(Hearst)が、YouTubeを中心とする動画戦略を構築しつつある。

YouTubeは過去2年間、オーディエンスと収益の両面で、ハーストの動画専任チームであるハーストオリジナルズ(Hearst Originals)の動画収益の成長を後押ししてきた。ハーストは2019年2月、ディファイメディア(Defy Media)が運営するYouTubeネットワーク「クレバー(Clevver)」と同社のロサンゼルススタジオを買収した。ハーストのフードメディア「デリッシュ(Delish)」は今後、エピソード性に比重を置いたYouTubeチャンネル向け番組を、このロサンゼルススタジオで制作していくことになる。ハーストのシニアバイスプレジデント兼最高売上責任者を務めるトッド・ハスケル氏は、「いま我々が置かれているYouTube時代に合わせた」番組を拡充することで、この成長をさらに加速させていきたいと述べる。

YouTube中心の動画戦略

ハーストは、YouTubeの番組と収益の向上を促進する幹部2名をすでに獲得している。同社は6月、長らくバイアコム(Viacom)の幹部を務めたズーリ・ライス氏をハーストオリジナルズのシニアバイスプレジデント兼動画開発・コンテンツ戦略部門の代表として迎え入れたと発表した。合わせて、ディファイメディア元幹部のトッド・ジョイス氏が動画販売部門のバイスプレジデントとしてハーストオリジナルズに合流したことも発表された。ジョイス氏のポジションは新設されたものであり、ハーストの動画広告事業が「本格化」した結果にほかならないと、ハスケル氏はいう。

「我々がYouTubeに残した大きな足跡が、YouTubeを最優先とするブランド各社からのさらなる投資へとつながる扉を開いてくれた。一部のケースでは、YouTubeにプライオリティを置いてきた新規クライアントからの投資へとつながる扉もだ」と、ハスケル氏は述べる。また同氏によると、ハーストはいまなお、自社が所有・運営するサイトを含む、YouTube以外のプラットフォームでも動画事業を大々的に行なっており、ハーストオリジナルズはFacebookやインスタグラム(Instagram)、Snapchat(スナップチャット)向け動画の制作を継続して行なっているという。

ハーストは、広告に加えて、他社に販売できる番組の制作からも動画収益を得ている。ハーストオリジナルズは昨年、CWテレビジョンネットワーク(The CW Television Network)のドキュメンタリーシリーズ「レディ、セット、ペット(Ready, Set, Pet)」を制作した。ハスケル氏によれば、セカンドシーズンの放送も決定しているという。

動画売上も伸びている

ハーストの動画事業の成長に合わせて(同社は現在、ニューヨークとロサンゼルスに制作スタジオを構えている)、動画売上も伸びている。ハスケル氏によれば、ベースこそ教えてはくれなかったが、この1年で同社の動画売上は300%増加しているという。この動画事業を促進すべく、ハーストはYouTube向けシリーズ番組の制作にフォーカス。シリーズ番組の場合、視聴者は今後どのような内容のエピソードが配信されるのかを把握しやすい。したがって、そのチャンネルを登録して、いつも見てくれる視聴者が増えやすいのだ。それに対して単発ものの動画の場合は、リピーター、さらには安定した広告インベントリー(在庫)の獲得が難しい。

2017年3月以降、YouTubeはブランドセーフティをめぐる諸問題に悩まされてきた。にもかかわらず、パブリッシャー各社は、YouTubeの月間オーディエンス(20億人)と広告プログラム(YouTubeインベントリーに対して、広告を直販することもできる)をますます活用するようになっている。ハーストも例外ではない。

ハスケル氏によれば、3つのYouTubeチャンネルを運営するクレバーは、エンターテインメント/ポップカルチャー関連のニュースを掘り下げる短編動画を短時間で制作することを得意としており、1日に5本以上のオリジナル動画をYouTubeに投稿しているという。ハーストは現在、エル(Elle)やコスモポリタン(Cosmopolitan)をはじめとする同社のほかのパブリケーションとクレバーの「異種交配」に取り組んでいると、ハスケル氏は語る。これらパブリケーションの動画チームをクレバーのチームと交流させ、彼らから主なエンタメ系ニュースの取り上げ方を学ばせているのだ。

ロスという地理的強み

短編動画を制作するスキルの獲得に加え、ハーストはサンタモニカにある2万平方フィート(約1860平方メートル)の制作スタジオも手に入れた。このスタジオは、同社がニューヨークに所有する2万5000平方フィート(約2300平方メートル)のスタジオを補う役目を果たしている。クレバーのスタジオは「ハーストの動画への取り組みにとって、西海岸のアンカー」的存在になっていると、ハスケル氏はいう。

この西海岸のアンカーは、YouTubeチャンネルの成長に合わせて、動画の制作本数を増やしているデリッシュにとっても、ホームとしての役割を果たすことになる。メディア調査会社チューブラーラボ(Tubular Labs)のデータでは、デリッシュのYouTubeチャンネルは、2019年5月に410万回の視聴を獲得している。それに対して、同メディアが同月にFacebookで獲得した視聴は5億9700万回だった。

デリッシュは現在、リアリティTV風の番組を制作しはじめていると、ハスケル氏は語る。制作チームがロサンゼルスにあるおかげで、さまざまなタレントに出演を依頼できるという。

制作コンテンツの中身

デリッシュは今年の夏、リアリティTV風の番組を2本、YouTubeで配信する。どちらの番組も3話からなり、各エピソードの尺は、YouTube動画にベストとされる9~12分になる予定だ。「デート・マイ・プレート(Date My Plate)」は、恋愛バラエティに料理のスパイスを加えた番組。2人のアマチュアシェフがブラインドデートの相手に料理を用意し、どちらか一方を選んでもらう。「フェイク・イット・ティル・ユー・ベイク・イット(Fake It Til You Bake It)」には、パティシエのクリス・ハーベイ氏が出演する。この番組では、同氏のアシストのもと、パン職人の志望者たちが審査員に向けてペストリーづくりに挑戦する。

これらのほかにも、パイロット版の番組がさらに3本、今年後半に制作されることになっている。ハスケル氏よれば、ハーストオリジナルズは現在、50本のオリジナルシリーズを制作しているという。これらパイロット版のフルエピソードがつくられることになれば、それらもこの50本に加わることになる。

Tim Peterson (原文 / 訳:ガリレオ)