5月25日にはGDPRが施行される。その2週間前を切った時点でも、GoogleはIAB ヨーローッパのフレームワークにベンダーとしての登録をしなかった。これは、データを集めて利用するためにユーザーからの承諾を得る助けになるもので、こうしたGoogleのアプローチに、パブリッシャーらは困惑している。
一般データ保護規則(GDPR)に対するGoogleのアプローチは、パブリッシャーたちにストレスを与えている。
5月25日にはGDPRが施行される。その2週間前を切った時点でも、Googleは欧州インタラクティブ広告協会(IAB Europe)、そしてIABテック研究所(IAB Tech Lab)のフレームワークにベンダーとしての登録をしなかった。このフレームワークは、パブリッシャーや彼らが使うアドテクベンダーがユーザーのデータを集めて利用するためのユーザーからの承諾を得る助けになるものだ。
パブリッシャー業界、そしてアドテク業界のエグゼクティブたちは、このGoogleのアプローチを、GDPRへの対応方法に対してパブリッシャーではなくGoogle主導にしようという狙いだと解釈している。すでに、Googleのアドテクを使っているパブリッシャーたちは、Googleをデータコントロールの「共同管理者」にさせることを必須条件としている。ユーザーのデータを集めて利用するためには、Googleの許可が必要なのだ。また、Googleによるユーザーからの同意を管理するプラットフォームを使っているパブリッシャーたちに対しては、サイト上で起用できるベンダーの数に制限をかけている。
Advertisement
意図不明なGoogleの行動
欧州インタラクティブ広告協会のフレームワークにも問題はある。しかし、パブリッシャー、アドテクベンダーからのインプットをもとに開発された独立したスタンダードとして支持されているものだ。GDPRに準拠することを容易にするだけでなく、アドテクベンダーによるオーディエンスデータ利用に関して、同意の取得・管理をスタンダード化することで、管理と透明性をパブリッシャーたちに与えることも目的だ。
欧州インタラクティブ広告協会のフレームワークに対してGoogleが参加を進めなかったことは、「GDPR施行から2週間を切ったいま、頭を悩ませている大きな問題だ」と語ったのはパーチ(Purch)の最高技術責任者であり、IABテック研究所のGDPR技術ワーキンググループのメンバーであるジョン・ポッター氏だ。彼によるとユーザーの同意をめぐるGoogleのアプローチは、欧州インタラクティブ広告協会のフレームワークと齟齬がある、とのことだ。
何が理由でGoogleが登録を遅らせているのかは明確ではない。プロセス自体は時間がかかるものではないと、アドテク企業スマート(Smart)の最高プロダクト責任者であるロメイン・ジョブ氏は指摘する。スマートはベンダーとして登録されている。
「使わざるを得ない」
Googleの広報担当者によると、欧州インタラクティブ広告協会と直接取り組んでおり、フレームワークをサポートする予定とのことだが、25日までに登録をするかどうかについては明言しなかった。
Googleがベンダーとして登録されていないため、パブリッシャーたちはこのフレームワークを使ってGoogleのためにユーザーの同意を取る、ということができないことを意味している。欧州インタラクティブ広告協会のフレームワークから独立したシステムを導入してGoogleと協働するための同意取得に取り組まないといけないわけだ。もしくは、Google独自の同意取得フレームワークだけを使うという選択肢もある。Googleが欧州インタラクティブ広告協会のフレームワークに参加しない限りは在庫は売らないと抵抗することもできるが、Googleのマーケットにおける強さを考えるとこの可能性は低い。
トピックス(Topix)のCEOであるクリス・トールズ氏は、「Googleはもっとも大きい広告ネットワークだ。使わないわけにはいかない」という。
恭順するパブリッシャー
カフェメディア(CafeMedia)は、欧州インタラクティブ広告協会ではなくGoogleの同意取得フレームワークを利用することに決めた。これは欧州インタラクティブ広告協会のフレームワークを5月25日の〆切までに導入するとなると作業量が大きくなることを鑑みての判断だ。戦略部門エグゼクティブ・バイスプレジデントのポール・バニスター氏は、「Googleのフレームワークは素早いセットアップが格段に容易なように思える。そして時間もたくさんは残されていないことを考えると、スタートとしては(Googleの方が)良いと思う」と語った。
Googleのフレームワークを使った方が容易だというのは、多くの人々にとってデフォルトになるかもしれないと、バニスター氏は指摘する。パブリッシャーがユーザーからの同意を得られなくてもGoogleが販売する『非パーソナライズド広告』を運営することで、収益を上げることはできる。これはパブリッシャーにとってはセーフティネットとして機能するため、パブリッシャーがGoogleを選ぶオッズはさらに高くなるとのことだ。
GDPRについてより詳細を知りたい方は、無料PDF「GDPR入門ガイド」をダウンロードしてください。
Tim Peterson(原文 / 訳:塚本 紺)