パブリッシャーやアドテクベンダーによると、パブリッシャーの多くが、EU一般データ保護規則(GDPR)に準拠して、コンセント・マネージメント・プラットフォーム(CMP)を採用することに対してプレッシャーを感じている。
パブリッシャーやアドテクベンダーによると、パブリッシャーの多くが、EU一般データ保護規則(GDPR)に準拠して、コンセント・マネージメント・プラットフォーム(CMP)を採用することに対してプレッシャーを感じている。
CMPはユーザーの同意情報を保持し、それをパブリッシャーのプログラマティックパートナーに渡す。テックベンダーのアドザーク(Adzerk)によると、イギリスでは31%のパブリッシャーがCMPを持っており、2018年7月から8月にかけて12%増加したという。一方アメリカでは2018年8月時点で27%、7月から13%増えた(アドザークのいう「パブリッシャー」とは、プログラマティック広告を掲載しているサイトを意味している)。
いくつかのフランスのベンダーも同様の調査結果を報告している。サプライサイドプラットフォーム(SSP)のスマート(Smart)によると、現在、アドコールの40%強がコンセントストリングを通じて来ているが、これはパブリッシャーがCMPを採用して初めて得られるものだ(その報告書には比較表はなかった)。
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同意ありは価値が高い
マーケターが広告のターゲティング目的でデータを収集するうえでは、消費者の同意を得るということがGDPRに準拠するひとつの手段だ。2018年8月現在、多くのパブリッシャーが正当な利益(legitimate interest)などの別の道を選択しているが、これは広告収入を維持するうえでより安全だと見られている手法だ。大規模なパブリッシャーが自前のCMPを構築したり、またはベンダーからの無料版を使っている一方で、そのほかのパブリッシャーは、それを実装することによるパーソナライズ広告の利益減を心配している。

Source: Adzerk
だが、パブリッシャーやアドテクベンダーによると、アドバイヤーがGDPRに準拠していることを示す手段として、消費者の同意を得ることを重要視するにつれて、パブリッシャー側もCMP採用のプレッシャーが強まっているという。スマート(Smart)でチーフ・ストラテジー・オフィサーを務めるロメイン・ジョブ氏によると、同意情報付きのインベントリーは、そうでないものと比べて価値が高いという認識があり、バイヤーたちも高い値をつけるというのだ。
「同意情報があるものは、ないものに比べてコンセントストリングの価値がおよそ95%も高まる」と、ジョブ氏は語る。
高まるCMPの採用率
主要なパブリッシング企業のとある幹部によると、昨今、ベンダーがIAB(インタラクティブ広告協議会)の認証済みのフレームワークの一部でない場合は、いかなるバイヤーの要求をも満たすことが困難になっているという。「これまでに、GoogleのDBM(ダブルクリック・ビッドマネージャー)またはIAB上のリストには載っていないベンダーのドメインを使ったキャンペーンを行なったことがあるが、クリエィティブは機能しなかった。つまり、現在はそれ(CMPを有していること)が間違いなく、利益をあげるために必要な条件になっている」と、同幹部は語る。
ベンダーもそれに同意する。「CMPの採用率のスピードは、この先のポストGDPRの時代にも、GDPRに準拠した同意を得ることが極めて重要だとパブリッシャーは認識していることを示している」と、CMPベンダーのクワントキャスト(Quantcast)でGDPRプロダクトを率いるゾマー・シンプソン氏は語る。「広告主も同様に、ターゲティングしているオーディエンスが同意したかどうかを知っている必要があり、そのようなオーディエンスは概して価値が高いということにも気づくだろう。双方の面で先を見据えている企業はすでに動きを見せており、重要性に気づいている企業も増えている」。
GoogleもCMPの採用を急いでいる。GoogleのGDPR準拠のアプローチは、「正当な利益」に希望的観測を寄せる広告業界のそのほかの企業と比べて、より厳しいものとなっている。GoogleはGDPRに準拠しているベンダーのホワイトリストを作成した。GoogleがIABの透明性・同意のフレームワークと統合したあかつきには、ビッドリクエストの際に同意を得たベンダーを活用したキャンペーンを行うだろう。ビッドリクエストでは、CMPなき同意はあり得なくなる。CMPを持たないパブリッシャーは、パーソナライズ広告の運用ができないという理由で、競争に敗れてしまう可能性があると、スマートのコーポレート開発部門を率いるエイドリアン・シル氏は語る。
「見なし同意」も例外なし
パブリッシャーのなかには、CMPがGDPRに準拠するためのアプローチとして、時間とともに「正当な利益」に取って代わると信じているものもいるが、そこにはもうひとつ理由がある。パブリッシャーは、多くのウェブサイトで使われている「見なし同意」と呼ばれる手法を採用している可能性がある。これは、「同意しません」のボタン以外の範囲で行われたいかなる動作やクリックをも「見なし同意」とする、というものだ。だが、それでも、パブリッシャーは見なし同意をトラッキングするためにCMPが必要となる。
「これはユーザーに同意ボタンのクリックを強要せず、その代わりに『このメッセージの右側にある小さな【いいえ】のボタン以外の場所をクリックした場合にはデータを収集する』という旨が書かれた、いわば抜け穴であり、今後絶大な力を握ることになるだろう。誰もがこれを使うようになれば、『正当な利益』は存在し得ない」と、あるパブリッシャーの幹部は語る。