サードパーティCookieなき世界に備え、パブリッシャーは読者に関するすべての情報をつなぎ合わせ、多くのファーストパーティデータを集める方法を模索している。ニュースパブリッシャーのガネット(Gannett)も例外ではない。ただ同社の場合、その取り組みは広告収入だけでなく、有料購読者の増加も視野に入れたものだ。
サードパーティCookieなき世界に備え、パブリッシャーは読者に関するすべての情報をつなぎ合わせ、多くのファーストパーティデータを集める方法を模索している。
ニュースパブリッシャーのガネット(Gannett)も例外ではない。ただ同社の場合、その取り組みは広告収入だけでなく、サブスクリプションの会員増加も視野に入れたものだ。具体的には、広告主のターゲットオーディエンスに似せたセグメントの構築、カスタマーデータプラットフォーム(CDP)のアップグレードなどだ。加えて、同社の傘下でこれまで広告収入に頼ってきたUSAトゥデイ(USA Today)に関しては、サイト内における会員登録ポイントの増設を進めている。
現在、ニューヨーク・ポスト(New York Post)からボックス・メディア(Vox Media)まで、多くのパブリッシャーが、ファーストパーティデータのさまざまな用途を見いだそうとしている。ガネットも同様にこの大きな変化への適応を迫られているが、同社はほかにも達成しなければならないことがある。それは、CEOのマイク・リード氏が掲げた、現在100万人のデジタル有料購読者を2025年までに1000万人に増やすという目標だ。
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USAトゥデイの最高執行責任者として、米国内の販売を担当するマイケル・カンツ氏は「我々は、消費者の視点から見た成功と成長を追い続けたいと考えている」と話す。「現在構築しているものはすべて、B2BとB2Cビジネスの取り組み、その両方を推進するためのものだ」。
ファーストパーティデータの収集と活用
ほかのパブリッシャー同様、USAトゥデイはサードパーティCookieなき世界への対応に、多方面から取り組んでいる。カンツ氏によれば、ガネットは昨今注目されているGoogleのソリューション、FLoC(Federated Learning of Cohorts:コホートの連合学習)のテストに参加しているほか、コンテクスチュアルターゲティングを展開できるよう、オーディエンスセグメントの構築を急いでいる。ニュースパスID(NewsPassID)やベライゾン・メディア(Verizon Media)のコネクトID(ConnectID)など、事実上Cookieに取って代わるサードパーティの識別子をいくつか検討、実験する計画もあるという。
なかでもガネットがいまもっとも注力しているが、ファーストパーティデータの収集と活用だ。現時点では、ガネットが所有するすべてのサイトにペイウォールや会員登録ポイントがあるわけではなく、すべてのデータソースが結び付けられているわけでもない。カンツ氏によれば、ローカルニュースサイト群のページビューに占める、認証済みユーザーの割合は、現在15%程度だという。
一方でガネットは、数年前にスタートした取り組みの成果もあり、広告主に対しすでに現在1000以上のオーディエンスセグメントを提供している。その大部分が、広告主が求めるサードパーティセグメントを模倣したものだ。さらに同社は、ニュースやファイナンス関連のコンテンツだけでなく、食やエンターテインメントなどのライフスタイルコンテンツも活用し、より多くのセグメントを構築しようとしている。
さまざまなデータソースを拡充中
またガネットは、同社が有する商品レビューサイト、レビュード(Reviewed)から、アフィリエイトコマースデータと興味・関心に関するデータも取得している。加えて2017年に強化を開始したイベント事業の別会社、USAトゥデイ・ネットワーク・ベンチャーズ(USA Today Network Ventures)のデータもある。カンツ氏によれば、1000万人分のプロフィールから成るデータベースが構築されているという。
それだけではない。データソースはさらに追加されている。ガネットは2020年第4四半期に、ある投票ツールを導入。読者から情報を収集し、サブスクリプションと広告ビジネスの両方を推進するために、これを活用している。たとえばガネットは、2021年に入ってから全サイトの読者を対象に、今後の旅行計画についてのアンケートを実施。どこに宿泊するか(ホテル、Airbnbなど)といった質問を投げ掛けた。
USAトゥデイは、この調査結果から、地域ごとの旅行に対する意識の違いを割り出すことに成功し、同社のマーケティング活動に役立てられている。たとえば、ある回答をした読者には、旅行関連のニュースレターの購読を勧め、別の回答をした読者にはホテルの広告を見せるといった具合だ。
ただ現在のところ、ガネットはすべてのデータソースを連携できていない。これを改善するため同社は、2021年中にCDPをアップグレードする予定だと、カンツ氏は述べている。ちなみに、既存のパートナーのままアップグレードするか、新しいパートナーに乗り換えるかは未定だという。
USAトゥデイの有料購読者獲得が鍵
これらすべての動きは、ガネットのビジネスを後押しするだろう。同社が有料購読者数1000万人を達成できるかどうかは、ガネット傘下で最大のパブリッシャーであり、これまでマネタイズを広告収入に頼ってきたUSAトゥデイの読者を、どれだけ多くの有料購読者に引き上げることができるかが鍵となる。
USAトゥデイ・ネットワーク(USA Today Network)は現在、ネットワーク全体で毎月1億5000万人以上にリーチしていると主張しており、USAトゥデイだけで9000万人を超えている。また、非営利のジャーナリズム研究組織、ポインター(Poynter)のリック・エドモンズ氏は4月末、ガネットがUSAトゥデイのWebサイトでペイウォールのようなもののテストを開始したと報じた。
エドモンズ氏は、2021年4月末に公開した分析記事のなかで、「デジタル版の有料化を段階的に進めることは、広告クライアントへのセールスポイントを保つ助けにもなる」と述べている。「現在のUSAトゥデイの規模を考えると、ベータ版を展開してテストを繰り返していく方法が、あらゆる点で理にかなっている。ガネットは、どのようなアプローチがもっとも多くの有料購読者を獲得できるか、読者は準備できているのか、それとも抵抗を示しているのかといったデータを集めようとしているのだろう」。
[原文:Gannett prepares for cookiepocalypse from many angles at once]
MAX WILLENS(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:村上莞)