Google・Facebookの複占、大手媒体連合なら対抗できる? : デジタル広告の課題に関する思考実験

BuzzFeed、グループ・ナイン・メディア(Group Nine Media)、リファイナリー29(Refinary29)といった、トップデジタルメディア同士の合併は、近い将来には実現しないだろう。こうした合併が実現しても、GoogleとFacebookに関連する、業界の課題の解決策にはならないからだ。

ニューヨーク・タイムズ(The New York Times:以下、NYT)のインタビューで、BuzzFeedのCEOジョナ・ペレッティ氏は、BuzzFeedをはじめ、グループ・ナイン・グループ、リファイナリー29、Vox Media、Vice Mediaといった、組織形態の似通ったデジタルパブリッシャー同士の合併というアイデアを口にした。そのような統合が実現すれば、GoogleとFacebookとのあいだで分配される広告料の「取り分を増やせるだろう」と、ペレッティ氏はインタビューで述べている。

上述のパブリッシャーの創業者2人も、合併や業務提携の可能性について話し合ったことがあると認める。しかし、それは酒の席で昔から話題に出ている、単なる「思いつき」であって、近い将来に実現の見込みのある具体的な案ではないという。2人はいずれもこうした合併に懐疑的で、もし起きるとしても、外部のメガバンクやファンドから数十億ドル規模の潤沢な資金が流れ込み、両メディアを買収して事業を統合する場合に限られるだろうと述べた。2人はさらに、このような大型買収についても、成立のためには、各メディアへの投資家の多くが、大幅な評価減額を受け入れなければならないだろうとした(Vice Media単独の評価額でさえ、57億ドル[約6440億円]に達する)。

成長の鈍化とプレッシャー

経営統合がうまくいくことはまれだ。複数の企業がもつ、重複するインフラや大きく異なる社内カルチャーの統合、そして避けられない経営陣の骨肉の争いが、GoogleとFacebookのデュオポリーに打ち勝つ手段になるとは、とうてい思えない。

デジタルパブリッシャーの現状は、銃撃戦にバターナイフひとつで参戦するようなものだ。ここ2年で、合併の噂を耳にすることが増えているが、それは大手デジタルパブリッシャーが広告成長の鈍化と売上目標の未達という問題に対処を迫られているためだと、取材した2人のデジタルメディア企業幹部はいう。先述のNYTの記事によれば、BuzzFeedの2017年の売上は、目標の3億5000万ドル(約395億円)を約9000万ドル(約101億円)下回った。なお、今年の売上は3億ドル(約339億円)を超える見込みだ。Vice Mediaについても、今年の売上は目標を約1億ドル(約113億円)下回る見込みで、同社は10~15%の人員削減を計画していると、ウォール・ストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)が報じている

あるデジタルパブリッシャー創業者は、米DIGIDAYの取材に対し、こうした企業が前年比100%の成長を達成できた時代は終わったと話す。さらに悪いことに、成長の鈍化とプレッシャーは、未曾有の好景気を迎え、広告費のデジタルメディアへのシフトが決定的になるタイミングで起きている。インタラクティブ広告協議会(IAB)とPwC USの調査によれば、米国のデジタル広告売上は2018年前半で495億ドル(約5兆5940億円)に達し、前年比23%増の過去最高を記録した。

次は「非オーガニック成長」

デジタルメディアの財政苦境は、投資家がデジタルメディアのバブル時代の投資から手を引くことで、さらに悪化する可能性がある。「売上だけでなく、全体的な成長戦略として、リアルな価値をどう生み出すのか。デジタルメディアにそんな質問を掘り下げて尋ねるほど、彼らの答えはテレビのものに似てくる」と、リファイナリー29に投資する、ある企業幹部はいう。

合併による収益増加の可能性はある。ベンチャーキャピタルの支援を受け入れている、こうした主要デジタルパブリッシャーはどこも、自前のテックチームやプロダクトチーム、コンテンツ管理システム、さまざまな操業部署を備えている。合併後の新企業では、重複する部署は統廃合され、そのまま残るのは、コンテンツと広告売上の部署だけになるだろう。「それ以外はすべて共通のインフラになる。雑誌出版業界では、はるか昔から行われてきたことだ」と、関係者はいう。

テレビや出版など他のメディア業種では、合併は珍しくない。ケーブルテレビの登場により、24時間チャンネルや番組ブランドが乱立し、それらは合併によって生まれたディスカバリー(Discovery Inc.)やバイアコム(Viacom)といった巨大企業が運営している。あるデジタルメディア創業者は、オーガニック成長が鈍化したいま、論理的に考えて、次のステップは合併・買収による「非オーガニック成長」を模索することだと主張する。

広告主の選択次第だが

しかし、合併・買収を経験した従来業種とデジタルメディアには、ひとつ重要な違いがある。圧倒的な力をもつ配信業者の存在だ。BuzzFeedやグループ・ナイン・メディアは、配信に関してGoogleとFacebookに依存している。一方で、ほぼ無限のコンテンツソースをもつオープンプラットフォームであるGoogleとFacebookは、大手デジタルパブリッシャーをとくに必要としていない。eマーケター(eMarketer)の予測によれば、米国の広告市場におけるGoogleとFacebookの圧倒的シェアは、2018年は微減となるものの、それでもデジタル広告費の約57%を占める見込みだ。GoogleとFacebookは、コムキャスト(Comcast)やオプティマム(Optimum)といったケーブル配信業者とは比べものにならないほど強大な存在だ。

「FacebookとGoogleに対抗し、スケール化と広告費配分の増加のために合併を模索するのは見当違いだ。(パブリッシャーが)複占に対抗できるだけの規模を実現することなど不可能だ」と、コンサルティング会社ドゥーイング・ワーク・アズ(Doing Work As)の共同創業者であるクリス・アーウィン氏は指摘する。「終焉を遅らせるだけで、新たなキャッシュフローは生まれない。彼らがすべきことは、FacebookやGoogleにできないことを基軸に、ビジネスモデルを練り直すことだ」。

大手デジタルパブリッシャー幹部でさえ、個人的見解として、合併後の新会社がGoogleとFacebookからより多くの広告費を勝ち取れるかは疑わしいと話す。プラットフォームとパブリッシャーの関係が劇的に変わるとしたら、広告主が広告費を前者から後者にシフトさせると決めたときだけだ。しかし、昨今のFacebookのスキャンダルの後でさえ、広告主がそんな選択をするとは考えにくい。

「広告主は変わるべきだ」と、あるパブリッシャー幹部はいう。「プラットフォームが行動を変えるとしたら、それは広告主がプラットフォームを見限ったときだけなのだから」。

Sahil Patel(原文 / 訳:ガリレオ)