「ガスステーションTV」に魅了された、デジタル媒体社たち : コンテンツ第一で信頼を獲得

ガスステーションTV(Gas Station TV、以下GSTV)は、米国のガソリンスタンドで給油中の客向けにCMを流すサービスを提供してきた。そしてその形態はFacebookのフィードへと近づきつつある。

同社はこれまでCNNやESPNといった大手テレビネットワーク各社と強い結びつきを持っていたが、この方針を転換し、デジタルプラットフォーム上で人気のパブリッシャーコンテンツの提供に力を入れているのだ。

「驚くほどの反響が」

GSTVは12月第3週、デジタルメディア企業ファーストメディア(First Media)のブロッサム(Blossom)およびソー・ヤミー(So Yummy)と提携を結んだ。今年のはじめに同社は、ビジネス動画ネットのチェダー(Cheddar)、そしてチャイブTV(Chive TV)と提携しており、ほかにもワッツトレンディング(What’s Trending)、CNET、スタジアム(Stadium)、MLB、リスト(The List)がGSTVに参入している。こうした提携はGSTVのコンテンツ戦略に基づいたものだ。同社はケーブルネットワークからのコンテンツだけに頼るだけでなく、ガソリンスタンドのカスタマーを楽しませるようなコンテンツを提供し、広告収益の獲得を目指している。それと同時に、デジタルパブリッシャー各社はGSTVの配信が効果的であり、そしてデトロイトに拠点を置く同社のチームとの仕事が他社よりはるかに楽しいと口をそろえる。

「反響の大きさに驚いている。毎日我が社のコンテンツが写った写真が送られてくる。買えるならGSTVが1台ほしいくらいだ。それにGSTVとの仕事は、Facebookと比べてはるかに楽しいし、簡単だ」と、チェダーのCEO、ジョン・スタインバーグ氏は、米DIGIDAYに対してメールで回答している。

ワッツトレンディング(What’s Trending)のCEO、シラ・ラザー氏も「GSTVは実に素晴らしいパートナーだ。私をGSTVで見たという投稿をソーシャルメディアでも見かけるし、会ったときに直接言われることだってある。GSTVの存在やリーチは驚くほど大きいし、リテンションも素晴らしい。ガソリンスタンドでの給油中にオーディエンスがどこかに行ってしまうこともない」と語る。

1/3の米国民にリーチ

こうしたデジタルパブリッシャー各社は現時点ではGSTV専用コンテンツを作っておらず、20秒の動画を毎週または2週間おきに提供している。GSTVのコンテンツチームはこれを全米1万8000以上のガソリンスタンドで配信する。パブリッシャー各社は、ガソリンスタンドはモバイル配信と相性が良いとしている。

ファーストメディアの最高売上責任者(CRO)、チャールズ・ガブリエル氏は次のように語る。「一般的に、街中で見かけてもらえればソーシャルメディアでフォローされるチャンスは増えるだろう。周りを見れば誰もがモバイルデバイスでフィードを見ている時代だ。だが、街のなかでそうした人たちの注意をひきつけられる場所は少ない」。

チャイブ・メディア・グループ(Chive Media Group)の創設者でありCEOのレオ・レシグ氏も、ガソリンスタンドにおけるGSTVの大規模展開の効果について同意見だ。チャイブTVは、11月にGSTVに参入しており、これはアウトドアでの露出を増やそうという同社の戦略に基づくものだ。最近、チャイブからアトモスフィア(Atmosphere)という独立企業が誕生した。同社はレストランやバー、クルーズ船、空港などで配信を行っている。

レシグ氏は「どのデジタルメディアパブリッシャーも、ここ数年は自社でもソーシャルメディアを使う場合でも、オーディエンスのスケーリングの難しさに苦しんできた。そんななかGSTVは米国内で、18歳以上の国民の3分の1にリーチできるのだ」と語る。

「価値の取引」での提携

現時点で、GSTVとパブリッシャーの契約は、どちらかが相手に金銭を支払うものではない。レシグ氏はこれを「価値の取引」だという。GSTVはパブリッシャーから無料でコンテンツを獲得し、それに広告を入れることができる。そして、パブリッシャーは無料でコンテンツを配信できるのだ。だが、ファーストメディアのガブリエル氏は収益分配についてGSTVと話し合っており、同社の販売チームは来年初頭のブランドコンテンツ導入を準備しているという。

「ほとんどのガソリンスタンドには小売店が付随しており、そこから数キロも行けば当社が提携しているウォルマート(Walmart)のような大手の小売店がある。当社のコンテンツはいずれも消費者に対して、商品の使用方法を示すものとなっているのだ」と、ガブリエル氏は説明する。

GSTVのCEO、シーン・マキャフリー氏が重視しているのは、広告とカスタマーデータを持つパブリッシャーを結びつけることだ。同氏は屋外メディア広告企業のクリア・チャンネル・アウトドア(Clear Channel Outdoor)に16年務めたあと、2017年9月にGSTVに入社した。2017年4月には、GSTVとベリフォン(Verifone)は出資比率が50対50の合弁を発表した。

マキャフリー氏は新たに社員を雇用し、アクシオム(Acxiom)やプレイスド(Placed)、ディスティレリー(Dstillery)、IRi、ニールセン(Nielsen)、LiveRamp(ライブランプ)などの企業と提携してGSTVにおけるデータ収集と分析に注力。ガソリンスタンドに置かれた液晶での宣伝がはじまったことで、ガソリンスタンドの客は自宅から出て、給油して帰る以外の存在として注目されるようになった。GSTVはさらにデータでそれを立証しつつある。

コンテンツ第一主義

マキャフリー氏は、GSTVは家庭向け広告と同じような方法で、ガソリンスタンドでの広告販売を行っていると指摘する。広告主は行動データとオーディエンスデータをまとめて匿名で受けとる。GSTVは月間ユニークビューワー数を7500万人以上と発表しており、CPMベースでの料金を設定し、特定市場に向けた広告が可能としている。

パブリッシャーは現時点でGSTVから支払いを受けてはいないが、マキャフリー氏の新規コンテンツプロバイダーに重点を置くリーダーシップには称賛が集まっている。

レシグ氏は次のように語る。「画面に広告が表示され、その場にオーディエンスがいるとする。だが、どのようにすれば、そのオーディエンスは注意を向けてくれるだろうか? また、どのようにすれば、NASCAR(ナスカー)のように広告だらけにせず、オーディエンスの前に広告を提示できるのだろうか? そのためにはコンテンツを第一に考えたアプローチが必要だという考えが広まりつつある」。

Kerry Flynn(原文 / 訳:SI Japan)