米DIGIDAYの調査に協力したパブリッシャーの経営幹部のうち32%が、ブランデッドコンテンツは2018年に成長する可能性がもっとも大きいと回答した。回答者は、パブリッシャーにとってブランデッドコンテンツがもっとも重要な収益源だと答えた。
米DIGIDAYが米コロラド州ベールで3月に主催したモーグル・サミット(Moguls Summit)で、パブリッシャーの経営幹部33人を対象に2018年の収益の成長見込みについて調査を行った。パブリッシャーのeコマースの収益状況について調査した結果は、こちらから確認できる。また、今後のイベントについてはこちらを見てほしい。
ポイント:
- 米DIGIDAYの調査に協力したパブリッシャーの経営幹部のうち32%が、ブランデッドコンテンツは2018年に成長する可能性がもっとも大きいと回答した。
- 回答者は、パブリッシャーにとってブランデッドコンテンツがもっとも重要な収益源だと答えた。
2018年は、広告を超えた多様化の年
ディスプレイ広告と動画広告に対する支出は、2018年に増加する見込みだ。それでも、米DIGIDAYが調査したパブリッシャーの経営幹部は、ほかのチャネルが収益拡大の最大の機会をもたらすと確信している。潜在力がもっとも大きな収益チャネルとして、32%がブランデッドコンテンツを挙げ、23%がサブスクリプションを選んだのに対し、デジタル広告は6%にとどまり、動画広告との回答は14%だった。
Advertisement
だが、実際、ディスプレイ広告と動画広告のプログマティックな取引は増加している。一方、パブリッシャーがインベントリー(在庫)のプレミアム価格を常に確認しているわけではない。だからこそ、米国のパブリッシャーは、収益拡大のためにブランデッドコンテンツやサブスクリプションに目を向けている可能性もある。とはいえ、米国におけるプログラマティック広告支出に関するWARCの調査では、広告支出の40%しかパブリッシャーの手に渡らず、残りは中間業者に流れているという。プログラマティックの高い技術料を考慮して、パブリッシャーはもっと透明性の高い収益源を探しているのだ。
ネイティブ広告プラットフォーム企業のポーラー(Polar)によると、ブランデッドコンテンツへの支出は、2018年に70億ドル(約7700億円)に達し、2020年までに倍近くの137億ドル(約1.5兆円)になる見込みだという。つまり、ブランデッドコンテンツは、ディスプレイ広告や動画広告よりも成長がはるかに速い収益チャネルになるということだ。
米DIGIDAYの調査に協力したパブリッシャーの経営幹部は、サブスクリプションも2018年の大きな成長チャンスと見なしている。ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)のサブスクリプション事業での成功を後追いし、ブルームバーグ・メディア(Bloomberg Media)やビジネスインサイダー(Business Insider)、ワイアード(Wired)、バニティ・フェア(Vanity Fair)などのパブリッシャーは最近、独自のサービスを開始した。金融系パブリッシャーのザ・ストリート(TheStreet)は、ブランデッドコンテンツや動画広告からサブスクリプションへと方向転換している。
サブスクリプションへと転換しているパブリッシャーのすべてが成功するとは考えにくい。サブスクリプションは安定した収益を約束するが、リスクを伴う。モーグル・サミットのある参加者は、次のように述べる。「サイトにまだペイウォールを採用していない。一か八かやってみて、広告に支えられた事業の規模で損失の危険を冒すとなると、正当化しにくい」。
Digiday+のメンバーを対象にした5月のオンライン調査では、85%が、大半の企業はサブスクリプションサービスの開発に失敗すると考えていた。問題の一部は、人々がコンテンツに対して金を払いたがらない点にある。ドットダッシュ(Dotdash)のCEOニール・ヴォーゲル氏は、5月のDigiday+メンバー向けイベントで、別の問題を浮き彫りにした。サブスクリプションがうまくいくようにするには、パブリッシャーに熱心なオーディエンスが必要という問題だ。また、ネット上に似たようなコンテンツが氾濫していることを考えると、ドットダッシュのようなパブリッシャーは、似たような無料コンテンツが視聴可能なので、サブスクリプションサービスでは決して成功しない可能性がある。
パブリッシャーにとってブランデッドコンテンツがもっとも重要な収益源
米DIGIDAYが以前に行った調査によると、ディスプレイ広告に次いで、ブランデッドコンテンツはパブリッシャーにもっとも多く採用されている収益チャネルだ。パブリッシャーの88%は、ブランデッドコンテンツによる収益を計上したが、その大多数は、ブランデッドコンテンツが収益全体に占める割合が4分の1を下回っている。それでも、米DIGIDAYの調査対象である経営幹部のうち、32%はブランデッドコンテンツがもっとも重要な収益チャネルだと回答し、26%はディスプレイ広告、32%は動画広告を挙げた。
パブリッシャーはこれまで、ブランデッドコンテンツを制作するために労を厭わなかった。もっとも重要な収益源と見なす幹部がいる理由も、それで説明がつくかもしれない。米総合出版社メレディス(Meredith)は、デジタルメディアイベント「ニューフロンツ(NewFronts)」で、タイム社(Time Inc.)から最近買収したブランデッドコンテンツスタジオを宣伝した。Vice Media(以下、Vice)もブランデッドコンテンツスタジオを買収し、モーグル・サミットのある参加者は、自社が同様のことをしていないのを嘆いた。「Viceには、エージェンシーの買収への投資という、私がCEOを説得できなかったことをやる度胸があった。エージェンシー業務の事業を活性化するにはインフラが必要になる」。
ブランデッドコンテンツスタジオに対する批判がないわけではない。ヴォーゲル氏は、ブランデッドコンテンツをサービスの柱にしているパブリッシャーは「正気ではない」と主張。FacebookとGoogleにおける広告支出を完全には奪取できないことと、ディスプレイ広告と動画広告に対する支出の増加が相まって、そこに存続可能な事業の機会が残されていると指摘した。また、BuzzFeedによるプログラマティック広告の採用は、ブランデッドコンテンツの収益に主に支えられた事業をパブリッシャーが構築するのがいかに困難かを強調するばかりだ。
Mark Weiss(原文 / 訳:ガリレオ)