ニューヨークファッションウィーク(NYFW)に間に合うように、同イベントの公式イノベーションパートナーであるYahooは、ファッションデザイナーブランドのレベッカミンコフ(Rebecca Minkoff)と協力。その最新コレクションの衣服やアクセサリーをフィーチャーした15点のNFTアイテムを制作した。
Yahooは非代替性トークン(NFT)分野に参入しているが、NFTそのものではなく、ブランドパートナー向けのNFTギャラリーを制作することから始めている。
2021年9月の第2週に再開されたニューヨークファッションウィーク(NYFW)に間に合うように、同イベントの公式イノベーションパートナーであるYahooは、ファッションデザイナーブランドのレベッカミンコフ(Rebecca Minkoff)と協力し、その最新ファッションコレクションの衣服やアクセサリーをフィーチャーした15点のNFTアイテムを制作している。Yahooの消費者対応責任者のジョアンナ・ランバート氏によれば、このNFTには衣服を身に着けたモデルの写真が10枚と、多くのメタバースのアバターで今後使用できる5点の「デジタル衣服」、すなわちレベッカミンコフの衣服の仮想3Dレンダリングが含まれているという。
ただし今のところは、これらのNFTはまだコレクターアイテムである。
Advertisement
タイム(Time)やブリーチャーレポート(Bleacher Report)のようなNFTを検証してきたパブリッシャーや、独自にNFTを販売して消費者からの細かい収益ストリームを生み出してきたパブリッシャーとは異なるアプローチだ。
レベッカミンコフ NFTギャラリーの様子
重要なポイント:
- YahooがNFTの制作に踏み出すのは今回がはじめてではあるものの、ほかの多くのメディア企業がまだ悪戦苦闘していることを達成しつつある。それは、メディア購入にNFTを含めることで広告主を呼び込むことだ。
- レベッカミンコフとのパートナーシップは、パブリッシャーがNFTコンポーネントを含むキャンペーンを販売できたほとんどはじめてのケースである。
- パートナーシップの条件は明らかにされていない。
- ヤフー・ライアット・ラボ(Yahoo Ryot Lab)のコンテンツ責任者であるナイジェル・ティアメイ氏とそのチームは、仮想空間のギャラリーとNFTコレクションすべてを自分たちで構築したが、その際、2020年にローンチされたYahooのイマーシブXR(Immersive XR)プラットフォームを使用した。このプラットフォームは、これまで以上に高度な拡張現実(AR)や複合現実(MR)、そして仮想現実(VR)を用いた広告とブランドコンテンツが作成可能だ。また、ティアメイ氏のチームは、NFTを販売するプラットフォームとして、オープンシー(OpenSea)と提携した。
- このギャラリーは3Dモデル化されたニューヨーク市内に設置され、ユーザーはレベッカミンコフの仮想ストアにズームインして店内を見て回ることが可能だ。グッゲンハイム美術館のような様式の仮想ストアには10点のNFTがあり、ユーザーは店内を移動しながらデジタルアート作品を見ることができる。
- このギャラリーへは、画面にARディスプレイを備えたモバイルデバイスやデスクトップPCからアクセスが可能で、スクロールで移動できる。
- 自身の名を冠したファッションレーベルの共同創設者兼クリエイティブディレクターであるレベッカ・ミンコフ氏は、OnlyFansアカウントを立ち上げるようClubhouse(クラブハウス)で定期的に発信するなど、自身のブランドを売り込むために新しいプラットフォームやテクノロジーを表立って試してきた。
- このような活動によってミンコフ氏の会社はデジタルマーケティングイノベーションへ向かって進んでいく一方で、このNFTギャラリーの目的は、既存のNFTの顧客に訴求するだけでなく、自身のブランドのファンにこの新しいコンセプトを提示し、お気に入りのデザイナーと交流する新しい方法に魅力を感じてもらうことだった。
- このセールの収益はすべて、女性起業家を支援するフィーメイル・ファウンダー・コレクティブ(Female Founder Collective)に寄付されることになっている。
収益の可能性
NFTに馴染みのない顧客のために、レベッカミンコフのアクセサリーまたは衣服の価格(0.1 ETH、または約350ドル、約3万8500円)と同等のセット価格で販売されるNFT写真が7点ある。そのNFTのうち6点にはそれぞれ10のエディションがあり、先着順で購入可能だ。そしてコレクター向けのNFTが1点あり、これには150のエディションがある。
10点のNFT写真のうち3点がオークションにかけられるが、2021年9月10日(金)から9月13日(月)までの4日間の最高入札額に応じてその価格は上昇する。これらのNFTには一点物の画像が1枚含まれていて、その所有者には 次回のNYFWのチケット2枚とサイン入りのレベッカミンコフのバッグ、そしてミンコフ氏とのプライベートなビデオ通話の権利が提供される。ほかの2点のNFTにはそれぞれ5つのエディションがあり、その所有者にはそれぞれ次回のNYFWのチケット2枚が提供される。
このNFTが後日転売されたときのために、継続的な寄付でチャリティに貢献するロイヤルティの仕組みが構築されている。
この仮想ギャラリーのなかでは、ユーザーが各ファッションアイテムの「今すぐ購入」ボタンをクリックすれば、実際にそれを購入することも可能だ。
NYFWの体験を拡げる
NYFWは、パンデミック前と変わらない様子を見せてはいるが、同じ嗜好のファッショナブルな仲間との大規模な集まりに参加したくても、米国に渡航できない、またはしたくない参加希望者はまだまだ数多い。しかし幸いなことに、バーチャル空間のオーディエンスに最新のコレクションを紹介することに長けたデザイナーブランドは、さらにその戦略を推し進めて、自宅にいる観衆にもリーチすることが可能だ。
レベッカミンコフのNFTコレクションは、月間9億人のユーザーを抱えるYahooのページで宣伝/共有されて、NYFWに参加できる唯一の方法を膨大な数の観衆に提供することになった。
NFTに関するYahooの計画は、NYFWを超えてメタバースへと広がる
レベッカミンコフとのパートナーシップは、今後NFTにYahooが踏み込んでいくことを意味しているが、スポーツ、金融、ライフスタイル、ゲームファンのオーディエンスが、メタバースに関することすべてについてのサイトに抵抗なくアクセスできるようにすることも目的としている。これは同時に、このようなNFTをベースにしたあらゆるパートナーシップが、パブリッシャーや広告パートナーにとってどのようなものであるかを示す初期の事例でもある。
「アイデアは無限であり、このプラットフォームとアバターのあいだの相互運用性は、ブランドのクリエイティブな面での柔軟性を高め、主としてZ世代のようなメタバースでの中心的なユーザーとつながる方法になる」とランバート氏は述べている。
[原文:Cheat sheet: Yahoo is selling sponsors on NFTs, starting with Rebecca Minkoff]
KAYLEIGH BARBER and ALEXANDER LEE(翻訳:SI Japan、編集:長田真)