SNSにおけるフェイクニュースや過激思想の拡散が問題視されて久しい。3月25日、米議会でFacebook、Google、TwitterのCEOがこうした問題を抑止するための法律の制定に同意した。また、コンテンツの透明性を高めるためのポリシーの必要性についても同意しているという。各社の動向の要点をまとめてみよう。
SNSにおけるフェイクニュースや過激思想の拡散が問題視されて久しい。3月25日、米議会で「FacebookおよびGoogle、TwitterのCEOがプラットフォーム上におけるこういった問題を抑止するための法律の制定に同意した」ことが明らかになった。また、コンテンツの透明性を高めるためのポリシーの必要性についても、3社はすでに同意しているという。
これまで米国では、「オンラインで投稿されたコンテンツについてはプラットフォーマーの責任を問わない」という通信品位法230条(Section 230)の問題がたびたび取り沙汰され、改正の必要性が叫ばれてきた。まもなく提出予定の新法案の支持派は、これがフェイクニュースの温床となっている「サーベイランス広告(個人やグループを広範囲に追跡してプロファイリングし、行動履歴、関係、アイデンティティに基づいて広告をマイクロターゲティングする広告)」を抑止する法案になるだろうと期待を寄せている。
共和党の下院議員、フランク・パロン氏は「もはやビジネスモデル自体が問題であり、これまでのように自己規制だけでは不十分だ」と強調する。そんななか、下院エネルギー・商業委員会でこの問題についての聴聞が行われ、FacebookのCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏やGoogleのCEOサンダー・ピチャイ氏、TwitterのCEOジャック・ドーシー氏が招致された。ここでのCEOおよび議員の発言の要旨の一部は以下の通りだ。
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- フェイクニュースの拡散および、その拡散を前提とするビジネスモデルの改善を促すべく、通信品位法230条が改正されようとしている。
- これについてFacebookは、現行の慣習および既存の法案の内容を反映した形で230条が改正されるべきだと主張している。
- 招致された3人のCEOは、いずれもより高い透明性を担保するコンテンツ管理ポリシーの必要性について同意している。
- 共和党も民主党も、プラットフォーム上の問題について企業側の責任を追求しているが、そこには各党の立場が反映されている。民主党は、主に過激主義や新型コロナウイルスのワクチンに関するフェイクニュースに焦点を当てている。一方、共和党は検閲における偏りや児童労働搾取、性的人身売買、中毒性のあるオピオイドの取引などを問題視している。
- CEOは一様に厳しい追求を受けたが、とりわけ共和党議員のボビー・ラッシュ氏はTwitterが市民の権利に関する監査を怠ったとして、ドーシー氏を激しく非難した。
フェイクニュースを拡散する「サーベイランス」広告の禁止
「広告のターゲティングというビジネスモデル自体がフェイクニュースの温床となっている。ユーザーのエンゲージメントを追求するあまり、社会に悪影響を及ぼしている」と非難したのが、民主党下院議員のアンナ・エショー氏だ。エショー氏は、消費者保護小委員会の議長を務めるジャン・シャコウスキー氏と共同で法案の準備を進めているという。「私がシャコウスキー氏と法案の成立を目指しているのは、このサーベイランス広告のビジネスモデルを抑止するためだ」(法案の詳細については今回の聴聞では明かされていない)。
シャコウスキー氏は、通信品位法230条を改正することで、消費者保護法に抵触した企業がかならず責任を負うようにしたいと主張している(両名が同じ法案を指しているのかについては不明)。
エショー氏は民主党議員のトム・マリノフスキ氏とともに、3月24日に「危険なアルゴリズムから米国人を保護する法案」を再提出した。これも通信品位法230条関連で、ユーザーが5000万人以上の大手SNSプラットフォーマーを対象に、「過激」でオンラインだけにとどまらないコンテンツを拡散するようなアルゴリズムについて企業の責任を問うものだ。
Facebookは、第230条の改正により透明性を高めるべきと主張
Facebookは公聴会の前日、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)に第230条の改正への支持を表明する全面広告を掲載した。この姿勢は、数時間にもわたった公聴会でも揺らぐことはなかった。ザッカーバーグ氏は、「プラットフォーマーはさまざまな有害コンテンツについて、透明性レポートを発行すべきだ。たとえば児童労働搾取やテロ、知的財産権の侵害、ポルノといった有害コンテンツがどれくらい存在しているかを記載したレポートが必要だろう」と述べており、すでにFacebookでは四半期ごとにこうしたレポートを発行しているという。
また、ザッカーバーグ氏は違法コンテンツの取り締まりについても説明責任を負うべきであると主張している。「大手プラットフォーマーは、明らかに違法なコンテンツの抑止に有効なシステムを構築すべきだという230条の骨子は、理にかなったものだ」。
GoogleおよびTwitterも、コンテンツ管理における透明性の必要性について支持を表明
ピチャイ氏およびドーシー氏は、コンテンツ管理における透明性を高めることについて支持を表明している。「さまざまな法案で、透明性や説明責任について優れた提案がなされている」とピチャイ氏は述べ、具体的な説明はなかったものの、「Googleは、こうした法律上のアプローチに対して全面的に反対しているわけではない」としている。
ドーシー氏は「透明性関連のアイデア自体は賛同できる」と述べた一方で、ザッカーバーグ氏の「大手プラットフォーマーのみが対象」という主張については疑問視している。「大手とそれ以外を区別するのが難しい」というのがドーシー氏の考えだ。
透明性に関するレポートを求めている第230条改正案はすでにある
すくなくともひとつの改正案が、透明性レポートを要求している。2020年に入ってから超党派の議員が提出した「プラットフォームの説明責任および消費者の透明性に関する法案」は、プラットフォーマーに対し、許容しないコンテンツに関する詳細およびポリシーの適用方法についての情報を提供するよう求めている。コンテンツ管理ポリシーの実施について四半期ごとに透明性レポートを発行するよう求めているほか、苦情や抗議に対処するためのコールセンターの開設の必要性も盛り込まれている。
共和党議員のボビー・ラッシュ氏がドーシー氏を「不誠実」として糾弾
公聴会で3人のCEOはいずれも厳しい追求を受けたが、とりわけ緊迫した場面は、元牧師で公民権運動を行ってきたベテラン議員のラッシュ氏によるTwitterへの非難だ。公民権に関する独立監査を行ってこなかったことが特に糾弾された。2018年9月、ドーシー氏はTwitterが対立を助長するコンテンツや虚偽情報の温床になっていないか、状況の監査を行うことについて同意していた。
「私はいまだに監査の結果を待っている。監査はどうなったのか?」というラッシュ氏の詰問に、ドーシー氏は「監査は行っていない」と回答。「監査ではなく、公民権団体と定期的に協力するという別のアプローチをとっている」と述べたドーシー氏に対し、監査を行わなかったのは「極めて不誠実」であるとラッシュ氏は厳しく追求し、さらに次のように述べている。「ドーシー氏は委員会に対し、意図的に虚偽の回答を行った。これは激しく糾弾されるべきだ」。
KATE KAYE(翻訳:SI Japan、編集:分島 翔平)