WPP傘下のグループエム(GroupM)から、世界の広告収入に関する最新の予測が発表された。この予測が正しければ、メディア業界にとって、2022年は相当明るい年となるだろう。
WPP傘下のグループエム(GroupM)から、世界の広告収入に関する最新の予測が発表された。この予測が正しければ、メディア業界にとって、2022年は相当明るい年となるだろう。
グループエムでビジネスインテリジェンス部門のグローバルプレジデントを務めるブライアン・ウィーザー氏は、長年にわたり、メディア業界の景況を占ってきた。同氏は先ごろ、世界の広告収入に関する2021年の成長予測を、6月に出した19.2%から22.5%に上方修正した。また、2022年の数字についても、6月時点の8.8%から9.7%に引き上げた。いずれも米国の政治広告を除いた数字となっている。
さらに中期的な見通しとして、同氏が追跡しているテレビ、デジタルプラットフォーム、OOH、オーディオ、映画、活字(新聞および雑誌)の総広告費が、現在の7660億ドル(約87兆円)から大幅に増えて、2025年には1兆ドル(約114兆円)を超えると予測している。「コロナ禍は、我々の業界にいくつかの変化を招いた」とウィーザー氏は指摘する。「そのなかでも、成長の促進剤は注目に値する」。
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ウィーザー氏がより強気な予測を出した背景には、ベンチャーキャピタルから低金利の資金を調達したD2Cや中小の企業が、新たな広告主として台頭してきた状況がある。ウィーザー氏によると、「数十億ドル(数千億円)の資金を調達し、数億ドル(数百億円)規模の広告費を投じているケースもある」という。
デジタルが成長を牽引
グループエムが出した今回の報告書を見る限り、世界の広告収入の総額に占めるデジタルの割合は、2020年の60.5%から64.4%に増加している。このうち80%から90%をFacebook、Google、Amazonのデジタル三強が占めるという(中国は含まず)。
「広告費総額に占める広告販売大手25社のシェアは、2016年は46%だったが、2020年には66%に増加した」とウィーザー氏は話す。そして、その牽引役を果たしたのも上述の三強だ。
なお、ウィーザー氏の米国に関する予測は特に強気で、2021年の広告収入の成長率を、6月時点の17.3%から22.7%に引き上げている。2022年の成長率も14.6%と堅調な見通しだ。
2021年の成長を牽引した最大の要因はデジタルだ。6月に発表されたデジタルの成長率は29%だったが、今回の報告書で39%に修正された。結果として、米国の広告収入総額に占めるデジタルの比率は、2020年の54%から60%に増加する見込みだ。
テレビ、オーディオ、OOHの成長予測
なお、ウィーザー氏は米国における2021年のテレビ広告収入の成長率を、4.1%と予測しているが、2022年は6.2%とさらに堅調な伸びを予想している。米議会の中間選挙や州知事選などを控える来年は、政治広告の当たり年になりそうなことがその一因だ。
オーディオ広告の成長予測も、2021年は18.2%、2022年は9.3%で、健全な成長が見込まれている。OOHも同様で、2021年は15.8%、2022年は21.8%の成長が期待されている。ただし、同氏によると、オーディオとOOHに関しては、それ以降は1桁台の成長に落ち着くもようだ。
[原文:‘Catalyst for growth’: GroupM’s Brian Wieser bumps up his 2021 and 2022 global and U.S. ad forecasts]
MICHAEL BÜRGI(翻訳:英じゅんこ、編集:村上莞)