「まるで軍拡競争のよう」:トラッキング防止がはびこる未来に備えるパブリッシャーたち

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パブリッシャーたちはチャンスを捉えることができないようだ。Appleによる広告トラッキング防止アップデートが絶え間なく続き、GoogleがChrome用に独自の広告トラッキング防止機能を開発しているとの報道があり、パブリッシャーの多くが疲弊している。

このような動きは、特にパブリッシャーの広告運用チームにとって心配の種になっている。しかし、長期的にはパブリッシャーにとって良い結果をもたらす可能性があることを予測する者が増え、徐々に、その姿勢が変わりはじめている。

Safariの影響は限定的

当然のことながら、短期的な懸念はいくつかある。Apple ITP 2.2アップデートは、アトリビューションマーケティングに直接影響を与える可能性がもっとも高いが、人々が外部サイトにアクセスする際、彼らの閲覧行動を監視する企業の能力を削いでしまうため、パブリッシャーのなかには間接的に影響を受けることと懸念しているところもある。コンバージョンを促進するサイトに関して知識が乏しいエージェンシーの場合、特定のパブリッシャーの予算を削減する、またはメディアプランから彼らを除外する可能性が高くなる。

多くのダイレクトレスポンスキャンペーンを実施しているパブリッシャーたちにとって、高いコンバージョン率推進に対するエージェンシーからのプレッシャーは、いまにはじまったことではない。しかし、Apple ITP 2.2によって、それが激化するかもしれないのだ。「パブリッシャーたちは、コンバージョン率が十分なレベルに達していないと、叩かれることがよくある」と、匿名を条件に語ってくれたあるパブリッシャーの幹部はいう。「しかし、これらのITP規制がすべて前面に出てくると、エージェンシーやクライアントは全体像を把握できないため、メディア予算をどこに割り当てるべきかを知ることが非常に困難になる。パブリッシャーたちは破綻するかもしれない」。

しかし、ITP 2.2は、2017年にはじまった長い一連のAppleのアンチトラッキングアップデートにおける最新の更新にすぎない。当初、パブリッシャーたちは大きな打撃を受けたが、以後、彼らのファーストパーティデータをより効果的に収益化する新しい方法を見つけるなどして、損失を相殺する別の方法を見つけ出している。たとえば、マガジングループ、イミディエイト・メディア(Immediate Media)のようなパブリッシャーは、ターゲティング可能なオーディエンスインベントリの規模拡大にひと役買う次世代DMPを導入し、サードパーティのクッキーへの依存を減らした。

また、別のパブリッシャー筋によると、AppleのブラウザSafariの市場シェアがはるかに小さいため、彼らは最小限の損失として処理している。ニューマーケットシェア(NewMarketShare)によると、Safariの世界的なデスクトップセッションの2019年4月のシェアは4%、モバイルブラウザセッションでは26%を占めたという。Appleユーザーは多くの企業にとって、とても獲得したいターゲット市場であるが、ITP 2.2アップデートよりずっと前から損失はすでに生じている。同じ情報筋によると、ITPバージョンを同様に有しているFirefoxのデスクトップセッションの4月シェアは10%、モバイルでは1.5%ということだ。

Chrome導入された場合

しかし、Googleがそれに続くかもしれないという懸念は、特にパブリッシャーたちにとっては、それよりはるかに恐ろしいものだ。GoogleによるChrome用のITPバージョン検討についての報道が過去数カ月間で出回っている。やはり、ChromeはSafariに比べてはるかに高い広告市場シェアをもっている。ニューマーケットシェアによると、4月、Chromeは世界的なデスクトップセッションの66%、モバイルインプレッションの63%を占めているという。

Googleはこの件に関してなにか考えを持っているのでは? という問いに対して、同社は公には肯定も否定もしていない。しかし、パブリッシャーとアドテク業界の両方で、それらの開発が彼らにとって意味することに関して、憶測があふれている。サードパーティのクッキーに対する既存の圧力と規制当局によるデータプライバシー重視への現状も考慮すると、Googleから同様のITPが導入されるのは時間の問題だと、多くの人間が信じている。

GoogleがChrome内でのサードパーティによるデータ収集に制限をかけることを許可する場合、長期間にわたる非常に段階的なロールアウトになる可能性がある。一部の広告運用のエグゼクティブが恐れる「激震」となるかもしれない。というのも、Googleが自らの広告収入能力を損なうようなことをすることはありえないからだ。

「SafariとiOSに関しては、ITPはすでに長期に渡って、多くのダメージを生み出している。その事実から逃げ出すことはできない。だが、ChromeでITPが導入される場合、短期間で同程度の収益低下が想像される。つまり、我々にとって明らかな収益への打撃となる。しかし、ChromeとSafari、そしてサードパーティクッキーの抑え込みを組み合わせるのであれば、とにかく市場はその変化に適応しなければならなくなるだろう」と、大手パブリッシャーのあるエグゼクティブは述べている。

これは避けられない進化

それが市場にとって避けられない進化であることを認めている者も多い。市場はよりプライバシーを重視するようになっており、プログラマティック広告のなかでのサードパーティクッキーに対する現在の依存をやめたいと望んでいる。

「それはまるで軍拡競争のようだ。AppleのITP 2.2がリリースされ、すぐに2.3が続く。その時点で、Googleとアドテクコミュニティは、クッキーの使用を擁護できなくなるときまでの回避策に役立つ何かを提示するだろう」と、大手パブリッシャーのあるエグゼクティブはいう。

しかし、これからの変化を嘆くのではなく、Chromeがこのルートを採用する可能性を、パブリッシャーが独自の識別子ソリューションを前に進めるために必要な推進力になると捉えている者も多い。パブリッシャーのエグゼクティブたちによると、アドテクベンダーまたはエグゼクティブ主導によるさまざまなIDコンソーシアムがあり、この分野におけるAppleとGoogleのもくろみが、これらの領域で活発化するはずだという。

「IDは誰もが目指すところだ。しかし、これが機能する唯一の方法は、すべてのエコシステムが集結するかどうかにかかっている。IDコンソーシアムでシェアを稼ぎたければ、いまが絶好のタイミングだ」と、大手パブリッシャーのあるエグゼクティブは述べた。

Jessica Davies(原文/ 訳:Conyac)