アドテク業界が困惑: Google 新プライバシー保護策の中身

Googleが11月14日に行った発表によれば、2020年2月、Google Ad Manager経由でバイヤーに送られる入札リクエストからコンテクスチュアルコンテンツのカテゴリーが削除されるという。一部のオンライン広告主は、この発表に困惑している。

Googleはこの変更について、「ユーザーのプライバシーを守るための追加的な措置」と説明しているが、広告主は変更後も、都市レベルの位置情報、ウェブサイトのURL、アプリの名前やIDといったデータにアクセスできる。一見すると、ニュースサイトと天気サイトのどちらにいるかといった情報より、これらの方がより「プライベート」な識別子に感じられる。

ある広告バイヤーは、ブログで行われたこの発表について「かなりあいまいだ」と感想を述べ、Googleの担当者に説明を求めたところ、その担当者も誰かに問い合わせていたと報告している。欧州連合(EU)一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:以下、GDPR)に準拠していることを当局に認めさせるための小さな譲歩と捉えている広告バイヤーもいる。しかし、Googleによるプライバシー関連の動きの多くがそうだったように、今回の変更は、たとえ意図的でなくても、いわゆる「ウォールドガーデン」の壁を少し高くする可能性がある。結局、Google自身はコンテクスチュアルデータにアクセスできるのだ。

デジタル体験プラットフォーム、クラウンピーク(Crownpeak)のマーケティング担当バイスプレジデント、イアン・ロー氏は「プレッシャーが高まるなか、Googleは収益モデルを維持しながら、プライバシー保護の方向へと動くための方法をどんどん提示しようとしている」と分析する。

Googleのやる気が本当の意味で試されるのは2月かもしれない。人気ブラウザChromeでサードパーティCookieをどのように扱うかを発表することになっているためだ。この決断はオンライン広告のエコシステム全体に影響を与える。Chromeは全プラットフォームで世界のブラウザ市場の65%を占めている。AppleのSafariとMozillaのFirefoxでも最近、サードパーティによる追跡を制限するための変更が行われ、パブリッシャーアドテクベンダー、エージェンシーに混乱をもたらしている。それでも、ウェブプライバシーを気にするメインストリームの消費者が増加しているため、Googleもそちらの方向に進まなければならないという競争圧力にさらされている。

適切なユーザープロフィール

Googleはデータ保護当局と話し合いを持ったあと、コンテクスチュアルカテゴリーのデータへのアクセスを制限することに決めたと説明している。Googleは現在、アドエクスチェンジ内での個人情報の取り扱いを巡り、アイルランドのデータ保護コミッショナーの調査を受けているところだ。英国のデータ保護当局である情報コミッショナーオフィス(Information Commissioner’s Office:以下、ICO)も、Googleに限らず、オープンエクスチェンジのリアルタイム入札プロトコルはGDPRに準拠していないと述べている。ICOは6月、業界が行動を改めるための猶予は6カ月だと明言している。

Googleの2月のアップデートは、消費者と直接的な関係を持たないアドテク企業が、コンテンツのカテゴリーを使ってユーザープロフィールを構築するため、広告オークションを「盗み聞き」する行為を阻止することになるだろう。現行のシステムでは、ユーザーがESPN.comのようなサイトを訪問したら、「スポーツ」というコンテクスチュアルカテゴリーを含む入札ストリーム内の情報がGoogleのエクスチェンジから入札希望者に送られる。デマンドサイドプラットフォーム(以下、DSP)やデータ管理プラットフォーム(DMP)などのアドテク企業もその情報を見ることができ、理論的には、ユーザーに気付かれないよう、ユーザーの行動プロフィールをつくることができる。このような慣行が存在するかは不明だが、可能性がある限り、GDPRに違反するリスクはある。Googleの広告ポリシーでは、入札データからユーザープロフィールを構築することも禁止されている。

Googleはさらに、パブリッシャーと広告主を対象としたEUユーザーの同意ポリシーの監査、認定バイヤープログラムの監査についても適用範囲を拡大し、リアルタイム入札とデータコンプライアンスを重視すると述べている。

規制当局の圧力

ICOがアドテク業界に与えた6カ月の猶予は12月で終わる。一方、米国では2020年1月1日、カリフォルニア州消費者プライバシー法(California Consumer Privacy Act :CCPA)が施行される。アドテク企業レゾネンス(Rezonence)のマーケティング責任者ロス・ノアチ氏は、ふたつの期限にもっと近づけば、オンライン広告市場全体がプライバシー関連の変化についてもっと騒ぎ始めると予想している。

「(ICOは)業界に対し、具体的な行動で変化の意思を示すよう求めている」と、ノアチ氏はいう。Googleが行ったような発表は、少なくともある程度、変化に向けて動いていることを示し、規制当局を納得させる意図があると、同氏は考えている。

Googleの広告ポリシーではすでに、広告主が個人をターゲティングするため、あるいは「慎重に扱うべき」カテゴリーに基づいたプロフィールを構築するため、Googleのサービスを利用することは禁止されている。これらはGDPRに準拠しているかどうかを評価する際、データ保護当局が細かく調べる点だ。ICOは2019年に入ってから、個人の民族的起源や健康状態、性生活に関わる「特別なカテゴリー」のデータを共有する際は、ユーザーの明確な同意を得る必要があると警告を発している。

テクノロジー企業ビーズワックス(Beeswax)のCEOアリ・パパロ氏は、たとえ既存のポリシーですでに言及されていても、コンテクスチュアルデータの共有を制限するという今回の動きは、「慎重に扱うべきカテゴリー」に関する潜在的な問題を回避するための措置だと解釈できると述べている。

「何を慎重に扱うべきかという定義は、主観に左右される恐れがある」。たとえば、「大麻の使用」は慎重に扱うべきだと見なされないかもしれないが、「医療目的の大麻の使用」は慎重扱うべきだと見なされる可能性がある。

ICOの広報担当者は電子メールで発表した声明のなかで、ICOは6月、リアルタイム入札に関する報告書を公表し、「慎重に扱うべき個人情報の利用、関係組織によるセキュリティコントロールなど」懸念事項を大まかに説明したと述べている。

「Googleの発表は重要な意思表示だ。Googleの運営モデルや業界全体にどのような影響が出るのか楽しみにしている」と、ICOの広報担当者はいう。

業界全体への影響はまだわからない。アドテク企業の幹部たちによれば、バイヤーやDSPの多くはGoogleのコンテクスチュアルカテゴリーの情報にあまり依存しておらず、オラクル(Oracle)傘下のグレープショット(Grapeshot)、コムスコア(Comscore)、ピア39(Peer39)など、コンテクスチュアルターゲティングプロバイダーのサービスを利用しているという。

砕け散るCookie

広告主、アドテクベンダー、パブリッシャーはChromeでサードパーティCookieがどのように扱われるかについて、Googleの決断を待っているところだ。Googleのビジネスモデルが広告中心であることを考えれば、GoogleがSafariやFirefoxほど大きな変更を加えることはないと、業界観測筋は予測している

Googleは11月の11~12日にサンフランシスコで開催されたChrome開発者サミット(Chrome Dev Summit)で、サードパーティCookieの管理の可視化を進めると改めて強調し、名称未定の新しいタブページで管理トグルの実験を行うと述べた。

Chromeのプライバシー、追跡防止機能を担当するGoogleのソフトウェアエンジニア、マイケル・クレバー氏が、追跡のないウェブの実現に向けたGoogleの計画を概説。Cookieから「適切な大きさのAPI」に移行し、ウェブ上で個人を自由に追跡できないようにすると示唆した。クレバー氏はさらに、今後もウェブ上でインタレスト(関心)ベースの広告を配信できるよう、Chromeがどのようにコホートの連合学習(わかりやすく解説した記事はこちら)を使用していくかを説明した。

「本当に必要な情報よりはるかに多くの情報が手に入るあまりに大きな追跡メカニズムに依存することなく、サードパーティにとって不可欠な用途(分析、人ではないトラフィックの検出など)を支援するには、十分に強力なウェブが必要だ」と、クレバー氏はいう。

クレバー氏はCookieの未来を予想する気はないと話していたが、「追跡のない世界を実現するには、あなたの助けが必要です」と書かれたスライドの前に立ち、「サードパーティCookieなどの追跡メカニズムがない世界を私たちが想像できるよう、力を貸してほしい」と開発者たちに呼び掛けた。

Lara O’Reilly(原文 / 訳:ガリレオ)