現在、デジタルイベントが過剰なほど開催されている。パブリッシャーたちは、そこから価値を絞り出す方法を見つけ出すため、イベントを利用してファーストパーティデータを収集し、ビジネスの他の部分の収益化につなげられる方法を検討している。そして、最終的にはサードパーティCookieへの依存を減らそうとしている。
現在、デジタルイベントが過剰なほど開催されている。パブリッシャーたちは、そこから価値を絞り出す方法を見つけ出すため、イベントを利用してファーストパーティデータを収集し、ビジネスの他の部分の収益化につなげられる方法を検討している。そして、最終的にはサードパーティCookieへの依存を減らそうとしている。
デジタルイベントはほとんどが無料で、(業界の専門家が言うには)売上を生み出す能力は対面型イベントの3分の1の効果しかない。それはそれとして、デジタルイベントには、サードパーティCookieが消滅した場合に、登録を促進したり、IDマッチングを通じて広告の価値を高めるためにファーストパーティデータを集めるツールとしての価値がある。
イベントプラットフォーム「ON24」でマーケティング担当バイスプレジデントを務めるテッサ・バーロン氏は、「いまはパブリッシャーと会話をはじめるときだ。デジタルファーストの世界で、広告エンゲージメントでも、最終的にはサブスクライバーを獲得するためでも、どうすればオーディエンスが我々に興味を伝える機会を提供し、我々が彼らのジャーニーを最適化できるだろうか」と語る。「パブリッシャーは突然、サードパーティに頼らなくても、収集可能で、それに沿って戦略を構築できるデータを備えたデジタル情報の宝庫だと気づいた」。
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「ユーザーが得るものとの価値交換」
実世界でのイベントからデジタルイベントへの移行は繋ぎのツールになるはずだったが、あまりに多くのパブリッシャーが、かつて対面でやっていたことをオンライン世界でやるように置き換えようとした。こうしたケースでは、彼らのモデルのサイロ化された部分に合わせたライブイベントを開催するほうが簡単だった。デジタルイベントで実世界でのイベントと同じ額の売上を生み出す手段がないまま、パブリッシャーは、オーディエンスを中心にした戦略アプローチにおけるひとつのタッチポイントとして使い、ほかの領域での集客の助けにするのに最適だと考えはじめている。
Googleが今後18カ月間にGoogle ChromeでのサードパーティCookieの利用を止めてしまう前に、パブリッシャーが大急ぎで対策をしようとしてきたなかで、ポッドキャストやニュースレター、登録ウォールのように、デジタルイベントは、パブリッシャーにとって自社が認証したユーザープールを構築するためのもうひとつのレイヤーとなる。
ライブランプ(LiveRamp)でパブリッシング戦略責任者を務めるサイモン・バージェス氏は、「そこがイベントのいいところだ。その本質として、イベントは発生し、実施し、録音されたバージョンにサインアップでき、リアルな直通路であり、ユーザーが得るものとの価値交換だ」という。
申し込みフォームに情報――名前やメールアドレス、住んでいる都市、勤務先など――を自主的に入力することも、そのデータがどれほど有用なものになりうるかという観点では優れている。自主的に提供されたものではないデータはめちゃくちゃだ。バーロン氏は、自主的に提供されずに集められたデータの50%は不正確だと言い、たとえば勤務先の本拠地の場所など、その人物の生活を曲解していることがある。データプライバシー規制法の成立やCookieに対する過小評価にも関わらず、サードパーティデータ業界には依然として190億ドル(約2兆円)の規模がある。ユーザーとのやりとりやアンケート調査は、パブリッシャーがインテントデータや特別な関心、属性データを集められる方法だ。
オーディエンス戦略の策定が重要に
「デジタルイベント疲れ」の問題についての結論はまだ出ていない。だが、需要はまだありそうだ。ON24では2019年、現地時間の水曜または木曜の午前11時にウェビナーを開催し、同社における1カ月間のマーケティングの起点となっていたと、バーロン氏は語る。現在、イベント当日には75%がサインアップしており、オーディエンスを集めるのに通常2~3週間かけているという。ON24では、2019年は40%だった登録者のコンバージョン率が2020年5月には60%に上昇したことを確認している。
「いまのようなパンデミックの最中に、メディアオーナーがデジタルイベントに焦点を合わせ、そこからデータ収集をはじめることは、驚くことでも異常なことでもない。データを集めずにイベントを企画・運営するのはおかしいだろう」と、ニュースUK(News UK)の元幹部で独立系のパブリッシャーコンサルタントであるアレッサンドロ・デ・ザンチェ氏は話す。
「問題は、そうしたイベントが、代替手段を見つけざるを得ないからという理由だけでなく、必要だから企画・運営されているのか、より幅広いデータやオーディエンス戦略についてメディアオーナーが事前に考えられるかだ」と、ザンチェ氏は付け加えた。
Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)