約20年前の創業以来、シャッターストック(Shutterstock)はストック画像のプラットフォームからグラフィック、イラスト、ビデオクリック、楽曲も扱うプラットフォームへと進化してきた。最近は人工知能(AI)でつくられたコンテンツを受け入れ、従来のカメラで撮影していない画像も試している。
約20年前の創業以来、シャッターストック(Shutterstock)はストック画像のプラットフォームからグラフィック、イラスト、ビデオクリック、楽曲も扱うプラットフォームへと進化してきた。最近は人工知能(AI)でつくられたコンテンツを受け入れ、人がつくった写真だけでなく、従来のカメラで撮影していない画像も試している。
同社はジェネレーティブAIを用いた実験を開始している。ジェネレーティブAIとは、テキストベースの「プロンプト」を入力することで、コンピューターにユニークなデジタル画像を生成させることができるイノベーションだ。10月後半には、人気画像生成AIダリ(DALL-E)の研究を行うオープンAI(OpenAI)と共同で、AIがつくったストック画像を販売する計画を発表している。そして、11月には、マーケターやデザイナーがAIをどのように活用できるかを研究し、画像のラベル付け、手作業の削減、AIに画像を取り込まれた人への支払い方法を模索するため、LGと契約を結んだと発表した。
ジェネレーティブAIの活用がブランドなどで議論され始めている
シャッターストックの最高製品責任者メーガン・ショーエン氏は「AIが生成する画像は、人による制作が難しいコンテンツのギャップを埋める手段になる」と考えている。同社が顧客と寄稿者3,000人を対象に行った調査によれば、「35%の顧客がテキストから画像を生成する実験を行った」と回答しており、編集と画像のスケッチにそれぞれ18%がAIを使用したと述べている。
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「顧客と寄稿者いずれも、ジェネレーティブAIとは何かを知っている人が3分の2を上回っていた」とショーエン氏は報告し、「ここで勝負しなければならないという認識が明確になった」と付け加えた。
ジェネレーティブAIは何年も前から存在するが、2022年夏、ダリでテキストボックスに入力した言葉から画像を生成した人が100万人に達したことで勢い付いた。マーケターのツールキットの定番にはまだなっていないが、ジェネレーティブAIがブランドやエージェンシーにどのように役立つかを探り、議論を始めている者もいる。
高パフォーマンスの画像をAIで再現し、キャンペーンを最適化できる可能性
シャッターストックのCEO、ポール・ヘネシー氏によれば、従来のストック画像を超えたクリエイティブな発想でツールを活用する人もいるかもしれない。また、この技術を利用し、プロジェクトの拡張やスケールアップを実現したいと考える人もいるだろう。ヘネシー氏は犬の写真をベースにしたキャンペーンの例を挙げた。
「ゴールデンレトリバーの最高の画像が見つかったとしよう。しかし、広告主は犬に骨をくわえさせたいと思っている。ジェネレーティブコンテンツの出番かもしれない。このゴールデンレトリバーが骨を加えている写真がほしいといえばいい」
ブッキング・ドットコム(Booking.com)とプライスライン(Priceline)でマーケティング幹部を務めた経歴を持つヘネシー氏は、ジェネレーティブAIをマーケティングにどう活用するかという質問に対し、「このプラットフォームを使えば、どのような画像がターゲット顧客に響くかを確認したうえで、パフォーマンスが高い画像をAIで再現し、キャンペーンを最適化できる」と答えた。
マーケターがよく利用するテクノロジープラットフォームで、ジェネレーティブAIツールを発表したものはほかにもいくつかある。アドビ(Adobe)、キャンバ(Canva)、マイクロソフト(Microsoft)、ピクスアート(PicsArt)などだ。また、さまざまなスタートアップがAIを使ってブランドの動画、音声、さらにはアバターを生成し、スポンサー契約やカスタマーサービス、トレーニングツールに活用している。
マーケターにとって、ジェネレーティブAIはツールのひとつに
ミネアポリスに本社を置くエージェンシー、ソーシャル・ライツ(Social Lights)で最高クリエイティブおよび戦略責任者を務めるグレック・スワン氏は、「ジェネレーティブAIはまだ新しいため、シャッターストックのような企業はマーケターに対して、ブランドにとって安全で低リスクな体験を構築する手助けができる」と考えている。加えて、「マーケターはこの技術を恐れるのではなく、新しいタイプの写真、動画、音声、テキストをつくる助けになることを喜ぶべきだ」と述べている。さらに、使い方を覚えれば、「クリエイティブツールのひとつ」になるだろうという。
「ジェネレーティブAIがもたらすクリエイティブの機会は膨大だが、人間のクリエイターへの影響を理解するには、まだあまりに日が浅い」とスワン氏。「この技術がクリエイティブツールボックスの主流になれば、素材の帰属と報酬を確実に行うことがベストプラクティスとして浮上するかもしれない」
このように関心が高まる一方で、マーケターにとって長期的にどのような用途があるのかまだ不明だという見方もある。エージェンシー、ランドリーサービス(Laundry Service)を率いるジョーダン・フォックス氏は、AIが生成する画像の可能性には興味があると述べたうえで、「大部分はブランドの基準を満たす品質に達していない」と補足する。ただし、まだ見つかっていないほかの用途があるかもしれないとフォックス氏は考えている。
「このようなツールがもたらすと考えられている未来は、ほとんどの場合、その通りにはならない。未来予想はいつも少し左を向いている」とフォックス氏は語った。
[原文:Why Shutterstock is betting on generative AI for the future of stock images]
Marty Swant(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:島田涼平)