コロナショック、ついに「メディア支出」にも影響が及ぶ:「広告不況につながりかねない」

グローバルな広告主たちが、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大によるメディア支出の大混乱を収めるべく奔走している。

プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)、ユニリーバ(Unilever)、Apple、マイクロソフト(Microsoft)、ダノン(Danone)、アンハイザー・ブッシュ・インベブ(AB InBev)、バーバリー(Burberry)、アストンマーティン(Aston Martin)など最大手の広告主が、この年の売上高予測を引き下げた。新型コロナウイルスは感染拡大の見通しが1日ごとに変化し、多くの企業が不確実性の循環にはまっている。こうなると決まっていたことが頓挫しがちで、広告費は引き上げやすい経費だ。ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)は、新型コロナウイルスの影響により現四半期の広告売上が「10%台半ば」の減少になる見通しだと予告している(※原文記事の公開は3月4日)。

広告不況につながりかねない

欧州インタラクティブ広告協議会(以下、IAB Europe)のチーフエコノミスト、ダニエル・クナップ氏は、「アウトブレイクによる大きな影響が出ている地域の数は少なく、グローバルな広告市場に対する新型コロナウイルスの影響はまだまだわからない」と語った。「しかし、広告の経済史を見れば、幸先がよい状況ではない」。

経済協力開発機構(OECD)は3月2日、新型コロナウイルスの影響が拡大した場合、2020年は世界経済の成長率は、前年の2.9%からほぼ半分の1.5%に落ち込むおそれがあると表明。

この予測は広告には「悪いニュース」だと、クナップ氏はいう。広告の成長はこの2年間、国内総生産(GDP)の後塵を拝してきた。世界経済の成長率が2%を下回ることになれば、広告市場は横ばいになるのだという。「広告不況につながりかねない経済成長の停滞になる可能性もある」と同氏は語った。

打撃は「需要」と「供給」の両方に

新型コロナウイルスによる経済的打撃は、経済の需要と供給の両方に及ぶという特徴がありそうだ。需要面では、移動が少なくなり、消費者はおそらく支出をためらうようになる。供給面では、製造業のサプライチェーンが混乱する。この両側面に対処できる選択肢はあまりなく、世界中の政策立案者が苦境に陥っているのだ。

メディア予算を見直しているのは、これまでのところ、中国の製造業者と物流ネットワークに依存している企業が中心だ。消費財(CPG)や自動車のメーカーが、新型コロナウイルスで工場や輸送路の閉鎖に直面している。最終製品を供給できなければ、製品の需要喚起の正当化は難しくなる。

アンハイザー・ブッシュ・インベブのCEO、カルロス・ブリトー氏は2月末の業績発表時に、「市場における消費者の購入動向に見られる変化に応じて、チームがリソースを使えるように、感染拡大から後、支出面でさまざまな取り組みを実施している」と、米DIGIDAYに語った。続けて一例として、中国ではすでに屋外メディアから、自宅に閉じ込められた買い物客のトラフィックが急増しているオンラインメディアに資金を移したと説明した。

メディアプランニングの見通し

こうした広告予算の見直しに備える動きが、すでにメディアオーナー側にもある。

「不測の事態に対応したプランの実施を求めてきているのは、中国からの製造部品の調達に苦戦しているクライアント」だと、英国を拠点とするメディアエージェンシーのシニアプランナーが匿名を条件に米DIGIDAYに語った。

このプランナーは、回復の初期兆候がある中国を注視している。移動が減り、製造が混乱し、小売販売が縮小し、さまざまな興行が中止されている状況下でほかのマーケターたちにメディア戦略をどのように適用するべきか、ヒントを探しているのだ。

「こうしたプランは基本的に、アウトブレイクが拡大するなか、現在生きている前払い契約の数を減らそうとするクライアントには、後の一定の取り引きを約束してもらうことが中心になる」と、プランナーは語った。

デジタルメディアは意外に軽症

こうした見直しによって真っ先に変更されるのは、デジタルの予算であることが多い。マーケターはたいてい、メディアオーナーから引き上げた資金を、すべて戻して収益にすることを求められる。

しかし、見直しは予算削減とは限らない。たとえば、北欧市場のあるメディア企業は、アウトブレイクの情報を提供したい政府のさまざまな衛生当局を中心に、サイトの広告の受注が減るどころか増えていると、あるデジタルディレクターが匿名を条件に明らかにした。

決まっている広告投資の削減は、デジタルメディアよりも(数カ月前から予約されることが多い)テレビのほうが難しい傾向にある。そのような事前契約を撤回するのは、金銭的なペナルティを受け入れるとしても簡単ではない。広告主は、撤回ではなく、キャンペーンを延期して、あとで年内に広告を実施することが多い。その場合、メデイアオーナー側は広告投資が維持され、広告主側は罰金を回避できる。

グループ・エム(GroupM)のビジネスインテリジェンス担当グローバルプレジデントのブライアン・ウィーザー氏は、「もちろん、削減を回避できれば、料金設定が有利になり、消費者の関心をめぐる競争が抑えられる可能性が高く、マーケティング担当者の仕事にはプラスになる」と語った。

経済復興のスピード次第

いまは、アウトブレイクの影響が明らかになってきているところであり、広告主側は様子見しかない状態にあるようだ。

「テレビ予算の引き揚げを求めてきているクライアントはまだいないが、仮に求められたら、我々はやめるように説得する」と、グローバルなメディアエージェンシーのシニアテレビバイヤーが非公式に米DIGIDAYに教えてくれた。「そうした確約を反故にしようとすると、メディアオーナー側からさまざまな金銭的ペナルティを求められることになる」のだという。

仮にアウトブレイクが3カ月を超えて続くようなことになると、不測の事態への対応プランをめぐる現状は逆転するかもしれない。2009年の広告不況の際に大打撃を受けたのは、ブランドマーケティング予算とそれに伴うテレビ予算だった。検索やその他のパフォーマンスチャネルは比較的、傷が浅かった。

「新型コロナウイルスについて企業がわからないでいるのは、経済活動がどの程度持ち直すかだ。これは予測が難しい」と、ウィーザー氏はいう。新型コロナウイルスの市場への影響が1年~1年半のサイクルを超えて長引くのか、それとも主要市場における消費習慣への影響がもっと短期間の限定的なものになるのかで、広告市場が受ける影響は大きく違ってくる」と、同氏は語った。

Seb Joseph(原文 / 訳:ガリレオ)