[ DIGIDAY+ 限定記事 ]TikTokは規制当局および活動家たちから厳しい精査の対象とされている。しかし、他の広告プラットフォームの場合と同じように、広告主たちはTikTokの拡大する若年層ユーザー基盤にますます重点を置いているようだ。
[ DIGIDAY+ 限定記事 ]TikTok(ティックトック)は規制当局および活動家たちから厳しい精査の対象とされている。しかし、ほかの広告プラットフォームの場合と同じように、広告主たちはTikTokの拡大する若年層ユーザー基盤にますます重点を置いているようだ。
TikTokは無数のブランドセーフティ問題に直面している。懸念のひとつは、その若年層ユーザー基盤から生じている。2月のピッチデック(媒体資料)では、アメリカのユーザーの60%が16歳から24歳のあいだの年齢層に属することがわかった。2017年にバイトダンス(ByteDance)が買収し、2018年にTikTokと合併したミュージカリー(Musical.ly)に対し、連邦取引委員会が子供の個人情報を違法に収集したとして、史上最高額である570万ドル(約5億7000万円)の罰金を2月に科している。その後まもなく、イギリスの情報コミッショナー事務局(ICO)が子供のデータの利用者をめぐってTikTokに対する調査を開始したと今月、ガーディアン紙(The Guardian)が報じている。
また、インドの裁判所は4月、性犯罪者、ポルノコンテンツ、そしてサイバーいじめに子供たちを晒しているとしてTikTokを禁止したとCNNは報じた。TikTokはこれらの懸案事項は対処していると主張し、その後にこの判決は破棄された。TikTokはインドネシアでも一時的に禁止されていたとロイター通信(Reuters)が報じている。しかし、これらの問題は継続している。TikTokの子供を狙った性犯罪者問題について、具体的なスキャンダルやユーザー自身による同プラットフォームを規制する取り組みを含めて、6月にBuzzFeedが報告している。デジタルギフトを通じてクリエイターたちによって搾取されていると感じているTikTokの若年層ユーザーのことを先週、BBCは報じた。
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もうひとつの懸案事項は、TikTokの親会社が中国のテック企業であるバイトダンスであるという事実と、中国政府によるデータ監視および検閲に利用される可能性に由来していると、エール大学院生のニック・フリッシュ氏が5月にニューヨークタイムス紙(New York Times)に寄稿している。
広告出稿はまだ実験段階
これらすべての懸案事項にもかかわらず、マーケターたちは依然としてTikTokを検証しつづけている。レッドブル(Red Bull)やソニー(Sony)といった一部のブランドは、同アプリ上に独自のアカウントを作成している。グラブハブ(GrubHub)やポッシュマーク(Poshmark)のようなその他のブランドは、同アプリでテイクオーバー広告またはインフィード広告を購入している。
もうひとつの問題は、TikTokへ広告を出すことがまだ実験段階にあるということだ。7月第1週に米DIGIDAYが70人のメディアバイヤーに行った簡単な世論調査で、回答者の大多数が現在TikTokに広告費を支出していないことがわかった。
「本来そうであるべきだが、残念ながらイギリスにおける調査がTikTokを見直す要因になるとは思わない。それを引き合いに出すブランドは1社もない。広告主やマーケターたちは、FacebookとYouTube問題で沸いたあの1週間であまりに疲弊しており、TikTokの罰金は些細な出来事なのだろう」と、デジタルマーケティングコンサルタントのベロニカ・リプソン氏は述べた。
UGCが常にはらむ問題
スリーピング・ジャイアンツ(Sleeping Giants)の創設者であるマット・リビッツ氏は、バイヤーたちがプライバシー問題に対して関心を示さないことを嫌というほど知っている。リビッツ氏は、マーケターが質の高いコンテンツではなく、彼がいうところの社会悪につながる、訪問者数とエンゲージメントに焦点を当てていることを引き続き非難している。リビッツ氏によると、TikTokに持ち上がったこれらの問題は、同社がユーザーの作成したコンテンツに依存していることを考慮すると、驚くことではないという。
「ユーザーが作成したコンテンツがある場合は、そのコンテンツが適切に規制されていて、利用規約が効力を発揮しない限り、いつでも問題に直面することになる。いまのところ、どのプラットフォームでもそのような問題に直面している。我々ができる最善のことは、我々が信頼するメディアを支持することだ」と、リビッツ氏は語った。
エージェンシーはTikTokの問題を認識しているが、だからといってTikTokに広告を出すことをクライアントに禁じることはしない。
「提携先がすべての適用法、特に若者に関するものについて順守しているかどうか考慮するよう、クライアントには常に助言している」と、グループ・エム(GroupM)EMEAでブランドセーフティおよびデジタルリスクのシニアディレクターを務めるベッサン・クロケット氏は述べている。
対応に尽力するTikTok
今年カンヌへのTikTokの登場に先立って、チャンネル・ファクトリー(Channel Factory)のEMEAマネージングディレクター、マティアス・スペッツ氏は、ブランドセーフティに関するトピックがTikTokのパネルや非公開会議で持ち上がることを期待していると語った。実際、TikTok USのマーケティングディレクター、ステファン・ハインリッヒ氏を交えたメインステージトークでは、TikTokがブランドセーフティに関する懸念にどのように対処しているかに関して聴衆から質問があがっていた。
「プロアクティブ、かつ、適度に対応している。コミュニティが安全である限り、ブランドは安全だ」と、ハインリッヒ氏は述べた。
イギリスのICOによる調査について尋ねたところ、TikTok広報担当者は、「ユーザーコミュニティの安全性とプライバシーの保護に尽力している」とeメールで回答した。
FTCが罰金を科した直後、TikTokは設定とコントロールに関してすべてのユーザーおよび保護者向けにリソースを増強して、同社のセーフティセンター(Safety Center)を更新した。TikTokはまた、アプリおよびTwitterでこれらの啓蒙動画を宣伝している。
「よく知ろうとしている段階」
こうした懸案事項のすべては、TikTokの広告事業がまだ初期の段階にあるときに生じている。同社のアプリがアメリカに登場したのは2018年8月である。そして、同社は今年1月に広告のテストを開始した。ウェーブメーカー(Wavemaker)のコンテンツとエクスペリエンス責任者であるノア・マラン氏は、同社にいくらか進歩が見られると話す。
「広告主はまだTikTokについてよく知ろうとしている段階で、プラットフォームとしての認知度はまだそれほど高くない。TikTokはアメリカで罰金を科されてからいくつかの変更を行い、この問題に対処していることを示すだろう。そして、イギリスでの調査はそれらの手続きに先んじて実施されると思う」と、マラン氏は語った。